ここは花咲く『日本史BL検定対策講座』

陣リン

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第四話 これは、臆病な恋の話

これは、臆病な恋の話(9)

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 あっちへ行ってくれよというように、渡り廊下の向こうを顎で指す。
 視界の端で梗一郎がこちらを見ている姿が映ったので、慌てて俯いた。
 情けない姿を見られたくない──そう思ったのだ。

「悲しいな。それが就職の口を利いてやった従兄への言い種とは」

 わざとらしく顔をしかめる征樹が、蓮をからかっているのは一目瞭然だ。

「そりゃ感謝してるけど……。でも半年の有期雇用だし。後期はどうなるか分からないし」

「しょうがないだろ。お前、実績がないんだから」

「そうだけど……」

 モブ子ノートを抱えたままシュンと俯いてしまった蓮の頭を、征樹の手が懲りずにかき回した。

 傍で見ていると、渡り廊下の隅で有能な助教授がひよっこ講師で遊んでいるように見えたことだろう。

 しかし、近付くと分かるはずだ。
 征樹の視線が実に穏やかで優しく蓮に注がれていることに。

「来週、学会で発表できるんだろ。十分に実績を作れるさ」

「うっ……」

「何だっけ? お前がやってる何とか学の認知度をあげるんだって張り切ってたじゃないか」

「う、うん……」

「緊張して汗だくにならないためにも、ちゃんと準備しておくんだぞ」

「う、むぅ……」

 ここにきてようやく連の様子がおかしいことに気付いたのだろう。

 征樹が顔をしかめる。

「……たまらなく嫌な予感がするんだが。お前、発表の準備ができてないのか?」

 呻き声を漏らした蓮。モブ子らのノートを抱きしめて立ち尽くした。

「だ、誰かが厄介なアンケートの集計を押しつけたりするから……っ」

「えっ、あれをまたやってたのか」

 押しつけた張本人であるらしい征樹が表情を強張らせる。

「私も教授に押しつけられたんだ。あんなもの学生に手伝わせてさっさと終わらせてしまえばいいだろ」

「何てこと言うんだい。学生さんたちはそれぞれ忙しいんだよ。無理言って手伝ってもらったけど。そもそもあのアンケ、ややこしすぎるんだ」

 悪い悪いと征樹が微笑む。

「お前が真面目なのを忘れてたよ」
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