召喚されたアラサー元ヤンはのんびり異世界ライフを満喫……できません

七夜かなた

文字の大きさ
19 / 34
第三章 昨日の敵は今日も敵か味方か

しおりを挟む
「それで、二人のこれからの居住先だが、慣例通りならば、聖女殿は神殿に、守護騎士のカドワキ殿は騎士団の寮舎となる」
「二人、別々になるのか」

 もちろん男女で分かれているとは思っていたが、具体的に言われるとそれはそれでやはりそうなのかと思ってしまう。

「聖女ならばもちろん神殿に住まうべきだ。代々の聖女もそうであった」
「飛花ちゃん、一人で大丈夫?」
「大学から一人暮らしなので、それは大丈夫だと思います。心配してくれてありがとうございます」
「心配せずとも、聖女をぞんざいに扱うわけが無い。最高のもてなしを約束する」
「そうです。その点はご安心を」

 大神官と副神官、神殿での最高権力者二人がそう言うのだから、ここは彼らに任せていいだろう。

「むしろ大変なのはお前だぞ」

 先ほどの謝罪のお陰か、大神官が紫紋を案じる口ぶりで言った。

「俺、ですか?」
「騎士達はあらっぽいうえ、守護騎士に対し並々ならぬ関心を持っている。聖女召喚が決まり、我こそは守護騎士と意気込んでいた」

 そこまで聞いて、紫紋も大神官が何を言いたいのか気づいた。

「その座を俺が奪った。ということですか」
「騎士達に取っては、面白くなかろう」
「大神官、彼らもそこは弁えるでしょう。カドワキ殿も望んでそうなったわけではないのだから」

 大神官の言ったことを、国王が否定する。

「どうだかわからん。一応予備知識として知っておいて損はないだろ」
「ありがとうございます。俺のこと、心配してくれているんですね」
「し、心配とかでは…騎士団の奴らとかは、血の気の多い奴らだから、お前には、ちょうどいいかも知れないがな」
「ツンデレね」
「そうだな」

 大神官の様子を見て、飛花と二人でヒソヒソ話す。

「なんだ? 二人で何をコソコソしている」
「いえ、何でもありません」
「本当に、何でもないです」

 ツンデレを説明するのが難しく、二人でごまかした。

「心配は有り難いのですが、荒っぽいのは慣れてますから」
「まあ、私が心配することではないが」
「大神官の言葉は気にしないでください。騎士団には、私の弟もおります。彼にシモンさんのことを頼んでおきますので、安心してください」
 
 副神官が言う。

「もうひとり兄弟がいるのですか?」
「ええ、男ばかりの三人です。宰相のアーマドが長男で、騎士団にいるピエールが一番下、そして私がその間になります」
「クルーチェ家は名門で、文官を多く輩出している」

 国王が副神官の家について語る。

「我が弟ながら、腕は確かです。騎士としても優秀です」

 副神官の口ぶりから、弟のことを自慢に思っているのが窺える。仲は悪くないようだ。

「男兄弟か…俺には妹しかいないから、羨ましい」
「紫紋さん、妹さんがいるのですか?」
「ああ、と言っても父親の再婚相手との子供だから、半分だけしか血は繋がっていないし、生まれた時から別に育ってきて、数える程しか会っていない。歳も飛花ちゃんより下だから、話もあわないし」
「へえ、そうなんだ。私は弟が一人。お兄さんかお姉さんがほしいと思ってました。紫紋さん、私のお兄さんになってくれますか?」
「俺が? 俺でいいのか?」

 不意にそう言われ、紫紋は驚く。

「いやですか?」
「別に嫌では…」
「だったら、これからはお兄様って呼んでいいですか?」
「構わないが…飛花ちゃんみたいな可愛い子にそんな風に言われると、何だか照れくさいな」

 困難には動じない紫紋も、こういう展開は慣れていない。

「よろしく、お・に・い・さ・ま」
「よろしく、…妹よ?」
「もう、そこは飛花ちゃん、もしくは飛花って呼び捨てでいいですよ」
「ま、まあ、それはおいおいな」
「てれちゃって、可愛い」
「こら、大人をからかうな」

 そんな二人のやりとりを、国王と副神官がほのぼの見つめる。大神官は馬鹿らしいという顔をして、ため息を吐く。

「陛下、お食事の用意が整いました」

 そこへ、城に勤める使用人がやってきて、そう告げた。

「おおそうか。二人共お腹が空いていないか?」

 食事の話になると、途端に二人のお腹が盛大に鳴った。

「す、すみません」
「やだ」
「気にするな。ささやかながら、食事の用意をさせた。まずは食べて、それからそれぞれの場所に案内しよう」
「は、はい」
「では、聖女殿は大神官が神殿まで案内していただけますか? 私はシモンさんを、騎士団の寮舎まで案内します」

 副神官が案内を名乗り出た。

「ふむ、ピエールもいることだし、それがよかろう。二人もそれでよろしいかな」
 
 国王がその提案を聞いて頷き、紫紋達に確認する。

「俺は構わない」
「私も…でもあの、お兄様とはいつ会えますか?」

 離れ離れになるのが少し不安なのか、飛花が国王に質問する。

「会いたいなら、会うことは構わないが、神殿と騎士団の寮舎がある区域は、王宮を挟んで反対側にある。毎日というわけにはいかない」
「そうなんですか…」 

 ここの地理のことはまったくわからないが、離れているこのはわかった。 

「心配なさらなくても、会話の宝珠がありますか。それを使えばいつでも会えますよ」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...