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55.他の隊員と接触しないよう
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「他の隊員と接触しないよう、この部屋だけに留めるのであれば。ただ、ここに来るまでの足取りを消すことはできないでしょうから、すぐに見つかってしまうと思いますよ? 禁衛が来れば、引き渡さざるをえません」
チュウヒは妥協案を出す。いくらオナガが強かろうと、禁衛には勝てないだろう。
「禁衛なら問題ないわ。彼らはお父様とお母様に忠誠を誓った身。他の王族や華族からの命令は拒否できるから、お父様の娘である私に危害を加えることはないから。それに」
言いよどんだレイランは、そのまま言葉を飲み込んだ。カイツが慰めるように彼女を抱きしめ腕をさする。
後は華族や王族がやってきた場合だが、それはオナガが対処すればいい。
視線を向けるオナガとカイツに、チュウヒは困ったように眉を下げながら微笑して頷く。
「レイラン様が王に選ばれた暁には、ぜひとも副隊長を二人に増やして頂きたいところです」
「構わなくてよ?」
追われている状況でも強気に口角を上げるレイラン。彼女に負けぬよう、オナガたちも強張っていた心を緩めて表情を和らげた。
レイランとセッカを応接室に残し、執務室に戻ったオナガとチュウヒ、それにカイツは、女性二人に聞かれないよう声を潜めて今後の対応を話し合う。
「悪いな」
「気にするな。俺としては、連れてきてくれてよかった。知らんうちにセッカに何かあれば、それこそ悔やんでん悔やみきれん」
「私は巻き込まれたいとは思いませんが、カイツの判断が間違っていたとまでは言いません。連れてきた以上、仕方ないでしょう」
少々棘のある言い方である。カイツとオナガは揃って首を竦めた。
「問題はレイラン様以外の王族が王に選ばれた場合ですね。陛下と敵対していた者が王となった場合、そのままレイラン様の命が狙われかねません」
「陛下に手を出したような奴らが、次の王に選ばれるか?」
王殺しをするような非道な者が王に選ばれるなど、オナガには理解に苦しむ見解だ。
「可能性は否定できません。なにせ、神子様がどのようにして王を選ぶのか、我々は知らないのですから。カイツは何か聞いていますか?」
「レイラン様の両親である神子様と陛下は昔から恋仲だったとは聞いたけど、選定方法についてはさすがに」
考えあぐねている間にも時間は過ぎていく。
蕊山を出ているレイランとセッカは栄養の補給ができないため、オナガとカイツが分け与えることで凌ぐ。
蕊山に巡回に行った者たちからの報告を聞く限り、華族たちの間で騒ぎは起きていないという。
「王は崩御されていないのではないでしょうか?」
チュウヒが思わず疑問を口にする。
王が崩御したことが蕊頂から漏れていないのか、それともいつもこうなのか、苧乍には分からない。とにかく様子を見るしかない。
そんな中、オナガはセッカの異変に気付いた。
「セッカ? 髪の色が濃くなっちょらんか?」
「そうかしら?」
「部屋の中だからじゃないか?」
窓があるとはいえ外に比べれば暗い。光の加減で暗く見えたのだろうと、誰も気にしなかった。
けれど、翌日になると明らかに色が濃くなっている。
「平民に混じっても、少し薄い程度で目立たんな」
「華弁で暮らしているからかしら? もしかして、平民になれるのかしら? 平民になったら、一緒にいてくれる?」
「もちろんじゃ」
「嬉しいわ。ずっとオナガと一緒に居られるのね」
セッカはふわりと嬉しそうに笑う。こんな状況でも幸せそうなセッカとオナガを、男たちは微笑ましそうに見ていたが、レイランだけは鋭い目でセッカを見つめていた。
チュウヒは妥協案を出す。いくらオナガが強かろうと、禁衛には勝てないだろう。
「禁衛なら問題ないわ。彼らはお父様とお母様に忠誠を誓った身。他の王族や華族からの命令は拒否できるから、お父様の娘である私に危害を加えることはないから。それに」
言いよどんだレイランは、そのまま言葉を飲み込んだ。カイツが慰めるように彼女を抱きしめ腕をさする。
後は華族や王族がやってきた場合だが、それはオナガが対処すればいい。
視線を向けるオナガとカイツに、チュウヒは困ったように眉を下げながら微笑して頷く。
「レイラン様が王に選ばれた暁には、ぜひとも副隊長を二人に増やして頂きたいところです」
「構わなくてよ?」
追われている状況でも強気に口角を上げるレイラン。彼女に負けぬよう、オナガたちも強張っていた心を緩めて表情を和らげた。
レイランとセッカを応接室に残し、執務室に戻ったオナガとチュウヒ、それにカイツは、女性二人に聞かれないよう声を潜めて今後の対応を話し合う。
「悪いな」
「気にするな。俺としては、連れてきてくれてよかった。知らんうちにセッカに何かあれば、それこそ悔やんでん悔やみきれん」
「私は巻き込まれたいとは思いませんが、カイツの判断が間違っていたとまでは言いません。連れてきた以上、仕方ないでしょう」
少々棘のある言い方である。カイツとオナガは揃って首を竦めた。
「問題はレイラン様以外の王族が王に選ばれた場合ですね。陛下と敵対していた者が王となった場合、そのままレイラン様の命が狙われかねません」
「陛下に手を出したような奴らが、次の王に選ばれるか?」
王殺しをするような非道な者が王に選ばれるなど、オナガには理解に苦しむ見解だ。
「可能性は否定できません。なにせ、神子様がどのようにして王を選ぶのか、我々は知らないのですから。カイツは何か聞いていますか?」
「レイラン様の両親である神子様と陛下は昔から恋仲だったとは聞いたけど、選定方法についてはさすがに」
考えあぐねている間にも時間は過ぎていく。
蕊山を出ているレイランとセッカは栄養の補給ができないため、オナガとカイツが分け与えることで凌ぐ。
蕊山に巡回に行った者たちからの報告を聞く限り、華族たちの間で騒ぎは起きていないという。
「王は崩御されていないのではないでしょうか?」
チュウヒが思わず疑問を口にする。
王が崩御したことが蕊頂から漏れていないのか、それともいつもこうなのか、苧乍には分からない。とにかく様子を見るしかない。
そんな中、オナガはセッカの異変に気付いた。
「セッカ? 髪の色が濃くなっちょらんか?」
「そうかしら?」
「部屋の中だからじゃないか?」
窓があるとはいえ外に比べれば暗い。光の加減で暗く見えたのだろうと、誰も気にしなかった。
けれど、翌日になると明らかに色が濃くなっている。
「平民に混じっても、少し薄い程度で目立たんな」
「華弁で暮らしているからかしら? もしかして、平民になれるのかしら? 平民になったら、一緒にいてくれる?」
「もちろんじゃ」
「嬉しいわ。ずっとオナガと一緒に居られるのね」
セッカはふわりと嬉しそうに笑う。こんな状況でも幸せそうなセッカとオナガを、男たちは微笑ましそうに見ていたが、レイランだけは鋭い目でセッカを見つめていた。
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