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01・婚約、そして始まりの日。①
しおりを挟む「リーシャ、お前の婚約者が決まったぞ」
そう祖父に言われたのは、私が8歳の時のことだった。
私はそれまで、大国ナウラティス帝国で生まれ、育ってきていた。
勿論、両親も一緒だ。少なくとも、生まれた時は、間違いなく。
ただ、3年ほど前、私が5歳の時に母の実家で少々問題が起こり、色々あって、父が母の実家を継ぐこととなり、母の母国である隣国、エラルフィアラ王国へ夫婦で移住してしまっていた。
私と3つ下の弟だけが落ち着くまではとそれまで過ごしていた父の実家へと残されて。
防犯などの面において、その方が良いだろうと判断された為だった。
とは言え、そろそろ呼び寄せようだとか、そのような話が出始めていた矢先のことである。
私一人だけ呼び出され、告げられたのが先程の言葉で、
「なんでも、幼いながらに優秀で、なにより心根の優しい方なのだそうだ。きっとお前を大切にしてくださるだろう。ああ、絵姿がここに……」
満面の笑みで続けた祖父が差し出した絵姿にはなるほど、非常に可愛らしい顔立ちの、一目見るだけで穏やかそうだと思える少年。
私と同じか、少し年下のように見えた。
柔らかそうな金の髪と、澄んだ翠の瞳をしている。
「年歳はお前の1つ……ああ、いや、2つかな? 2つほど下だが、すぐに気にならなくなるだろう」
案の定な事実を付け足した祖父はにこにこと微笑んでいて、それで、この少年はいったい誰なのだろうかとこちらから尋ねる前に答えを示してくる、曰く、
「お前の両親のいる隣国、エラルフィアラ王国の王太子殿下だ。つまりお前は将来の王妃になるということだな」
と。
はっはっはっ、と、快活に笑う祖父の顔を、私はついまじまじと見てしまった。
そして改めて絵姿を見る。
そこに映る、鮮やかな金色の髪をした、可愛らしい少年を。
「この子が、私の……」
嫌だとは思わなかった。
それどころか、早く、会ってみたい。そう思ったほどだった。
私は知らなかったのだ。
その少年が、絵姿の通りに穏やかで優しく……ーー否、優しすぎて、むしろ、弱々しくさえあるということを。
ついでに何かあってもなくても、すぐに涙腺を緩ませてしまう性質であることを。
もっとも、それを知ったのは、それから程なくのことではあったのだけれど。
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