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02・婚約、そして始まりの日。②

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 エラルフィアラ王国の王太子、私より二つ下になるテウムニカ・ケルピセア・エラルフィス殿下との顔合わせは、私が殿下を知ってから僅か二ヶ月後に行われた。
 弟と共にエラルフィアラにいる両親の元へと移動したのが一ヶ月後。
 そこから更に一ヶ月後に行われたということだ。
 今まで育ってきた場所ではないとは言え隣国、マナーだと教養だとか、そう言ったことに大きな差異はなく、そもそもこれまでいた父の実家も、ナウラティス帝国のトラディシス公爵家で、父の継いだ母の実家はエラルフィアラ王国のエヴォルニエ公爵家。爵位だけ見れば同じであり、王城に赴くとは言え、見劣るような育ち方などしてきておらず、簡単な作法の確認の他は、予定をすり合わせるだけで叶った顔合わせだった。
 年齢が年齢だけにナウラティス帝国では王宮になど訪れたことはなく、初めて足を踏み入れた王城という場所は、今まで一番大きいと思ってきた父の実家より、流石にずっと煌びやかに厳かで。此処よりも立派だという、ナウラティス帝国の王宮はどのような所なのだろうなどとも想像してしまう。
 あちらで育ってきたのだから、仕方がないわよね、などと、内心で誰にともなく言い訳しながら、物珍しく辺りを見回した。
 勿論、私を此処へ連れてきてくれた、一か月前に3年ぶりに顔を合わせた父に窘められない程度に、だ。
 とは言え、通信用の魔導具があるので、両親とは話をしたりなど、それなりに頻繁に交流していたのだけれど。
 今日会う予定のテウムニカ殿下ともまずはそちらで、という案も出ていたと聞いていた。
 だが、それほど遅くはならないのだからと、結局は、実際に顔を合わせる段取りが成されたのだとも。
 きっとその方がいいというのは、いったい誰のどんな判断だったというのだろう。
 この時の私にはわからず、ただ、二か月前に祖父に見せられた絵姿を思い出して、なんとなく楽しみに思っていた。
 ふんわりした癖のある、柔らかそうな金の髪。澄んだ翠の瞳は大きく、零れ落ちそうで。王太子、だと聞いているし、服装などからも男の子であることはわかっていたのだけれど、絵姿からでさえ、本当は女の子だっただとか言われても、不思議はないような可愛らしさが感じられた。
 私の髪は淡い紫色をしているのだけれど、まっすぐで癖がない。背中の中ほどまで伸ばした自分の髪が、嫌というわけではないのだけれど、くせ毛で柔らかそうな髪というものにも憧れていたりする。
 そんな殿下が婚約者なのだと言う。
 きっとこれからはたくさんの時間を共に過ごすことになるのだろう。
 心根の優しい方なのだと聞いているから、私も負けないぐらい優しくあろう。
 なんてことを考えながら待たされたのは、それほど長い時間ではなかった。
 父と共に通された、応接用らしい広い部屋。並んでソファに座りながら、ドキドキしていた私の耳に、扉をノックする音が届く。

「テウムニカ殿下がお出でになりました」

 だとか言う侍従の言葉の後、開かれた扉の先、おずおずと顔を見せたのは、絵姿の通り……――いいえ、絵姿よりもずっとずっと可愛い、小さな、ひどく情けない表情をした、男の子なのだった。
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