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19・言葉の向かっていた先
しおりを挟むそれはいったい、どういった心情からの発言なのだろうか。
私は内心でおそるおそる、だけど表面上は努めて何でもない風を装って、そっと、傍らのルーミス殿下を窺った。
ルーミス殿下は明確に、いっそこれ以上ないほど怒りをあらわにしている。
視線はキューミオ殿下を厳しくねめつけていて、そんな様子からもまさか、私に向かっての言葉だとは思えない。
どきん、胸が高鳴った。
もちろん、嫌な胸の高鳴りでなんてない。
頬が赤くなってしまいそうだ。
もしかして、そう思って。
これはやはり、どう考えても。
「前々から思っていたんだが、そもそも、なぜ貴殿は何の権利があって、私の婚約者にそのような不快な言葉ばかり投げかけるのだ。それは遠回しに私を、ひいては我が国を侮辱しているということなのか? これまではあくまでも学園内のことであったし、その都度不快だとも伝えてきていた。だからこそ国を通しての苦言などにまでは至らぬようにしていたのだが、これではとても看過できない」
ルーミス殿下が厳しい口調で詰っているのは、勿論私でなど決してなかった。
視線、態度、内容からも間違いようもない。
今、ルーミス殿下が静かに、だけどはっきりと怒りも露わに話しかけている相手はキューミオ殿下。
そして当のキューミオ殿下は、まったくそのような言葉をかけられるなんて、思ってもみなかったとばかり、目を丸くして驚いていた。
しかも、先の言葉からすると、これまでルーミス殿下が口にしてきた、
『不快だ』
だとか、そのような言葉は、キューミオ殿下に向けてだったということ。
つまり、もしかして私に対してだろうか、なんてちらと考えてしまっていたのは、完全な勘違いだったということだ。
私は恥ずかしかった。
それと同時に、どうしようもなく嬉しかった。
「な、何を言っているんだ、いきなりっ! 君も辟易していただろうっ?! 君を差し置いてこれ見よがしに試験でトップに立つような女だぞ?! 婚約者だというなら、君を立てるべきだろう! それ以外でも、どんな言葉を投げかけても顔色一つ変えやしないっ! まるで人形か何かでも相手にしているようだっ、気味が悪いっ! 君も不快だと何度も口にしていたじゃないかっ! 私に同意していたんじゃないのかっ?!」
キューミオ殿下はさきほどのルーミス殿下のお言葉が、余程信じられなかったのだろう。
さらにそのようなことを声高に叫ぶ。
言葉を紡げば紡ぐほど、ルーミス殿下の怒りが増していっているのが、傍にいる私にはよくわかった。
なのに目の前にいるキューミオ殿下にはわからないのか、それとも信じたくないだけなのか。
狼狽えた様子のキューミオ殿下は、やはり都度都度、ルーミス殿下の口にされていた、
『不快だ』
などの言葉が、自分に向けてだったとは到底思ってもみなかったと、あまりにも素直に口にしていた。
ついでのように更に私のことも悪しざまに言っているのだが、いくら聞いても私には、それぞれのそれのいったいどこが悪かったのかがわからない。
キューミオ殿下の言う可愛げとは、本当にいったい何なのか。
ルーミス殿下の怒りが、ますます激しくなっているのが嫌というほど肌で感じられた。
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