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03・これまでの話、そもそもの前提③
しおりを挟む何より俺はそもそも、ラーグをそう言った対象として見たことがなかった。
少なくとも恋情を抱いているわけでは全くない。
敢えて言うなら、家族、とは思っているけれども。
ただし、ならば婚姻を考えられないほどの嫌悪などがあるのかと聞かれると、そう言うわけでもなく、元より婚約者であることは事実、幼少期など、漠然と、将来婚姻を結ぶのだろうと考えていたほどだった。
何よりも実際に、いわゆるそう言った夫婦の触れ合いとでも言えばいいのか、性的接触をしたことがないとは口が裂けても言えない状況でもあった。
王配が、叔父が育てることを良しとしなかったラーグの弟を、育てたのは俺とラーグなのだ。
どこまで、というのはともかくとして、多少の接触は必須。その延長線上に成人後、ラーグとそう言った行為に至ったのは、ある意味自然な流れと言えたことだろう。
俺とラーグは婚約者同士。当然、周囲の扱いもそのようなもので、あらゆる教育を共に受けた。それは勿論、閨教育も、なのである。
婚約者がこれほど近くにいて、共に育って、仲が悪いわけでもなくて。それでどうして、他の者と何かが出来るというのだろうか。
俺たちにとって、興味を持った諸々を試す対象として、お互い以上に都合のいい存在などあり得なかっただけの話。
それでも、だ。例えば、初めてそう言った触れ合いを持ち始めた、成人後すぐに婚姻という話になったならば、俺は断ったりしなかっただろうと思う。が、実際はどうだろう。
19で成人して既に10年。俺たちは来年には30になる。
つまり、そのような関係にありながら婚姻に至らず、10年なのだ。今更、どうして伴侶として、相手を見れるというのだろう。
何より、もしかして、婚姻を結んだら俺を第一に考えてくれるのでは、などと淡い期待を抱く期間は十に過ぎてしまっている。
きっとこの男は変わらない。
いくつになっても弟が第一で、俺はその次。弟が他国に留学して、近くにいない今でさえ変わらないのだから、今後のことなど想像に難くない。
何より、もしラーグと婚姻を結んで、子供でも出来たらどうなるのだろうか。
俺よりも弟を優先する男が、子供が出来たからと言って、弟よりも子供を大事にするなどという可能性を、信じることがどうしてもできなかった。
だからこそ俺の中で、ラーグとの婚姻など、疾うに考えられなくなっているのである。
……――でも、だからって、どうして。
俺はわからなかった。
混乱して、必死にこれまでを思い返した。
見慣れた自分の寝室でラーグに組み敷かれ、初めて見る怖ろしいほどの熱情を持った眼差しで見降ろされながら、理解できずに思い出す。これまでの俺とラーグを。ラーグが、どのような男であったのかを。
わけがわからなくなりながら、目の前にいるはずのラーグからの激情が、ただひたすらに怖かった。
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