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しおりを挟むソファまで辿り着き、深く体を沈める。
そのまましばらく、とりとめもなく思考を遊ばせた。
考えるのは自分のこと、そしてシェラのことだ。
俺はシェラのことを大切に思っている。
大切な友人だ。
それに間違いはなかった。……――だけど。
(もう、天使だ、とか。そんな風には、思えない……)
シェラが変わったわけではない。
変わったのはあくまでも俺の心情のみ。
これまで俺にとってのシェラは、好きだった小説の主人公、それに尽きた。
小説を読む時には、だいたい主人公に感情移入する。
それは俺も同じで、だけど俺は、主人公を含めた、小説の登場人物と自分を、混合したりしたことなんて全くなかった。
だって物語と現実は違う。
あくまでもキャラクターはキャラクターだから。
そして主人公というものは得てして、善性による存在として描かれるものなのである。
特にシェラは、健気で思いやりあふれた少年として描かれていた。
見た目は表紙などを含めたイラストから受けた印象が強いのだが、好みの絵柄だったのも手伝い、前世で俺はよくシェラを指して、
(うわぁ、何この子いい子過ぎ! 天使かよ~!)
とか何とか思っていたものである。
そんな風にして俺は数日前まで、前世での印象を引きずったままだったのだ。
シェラの侍従として、あるいは友人としての献身が、そのまま、大変に素晴らしい振る舞いのように感じられていた。だけど。
改めて思い返してみると、そこまでではない。
なにせシェラは特殊な事情により侍従に就任している。
加えて育ちも育ちなので、マナーだとか、侍従としての振る舞いだとか言う点においては、どうしても他の者たちに劣るのは否めない。
慣れていない、そう言った教育を受けていないというのもあるとは思う。
王宮に勤める侍従ともなると、いわばエリート中のエリート。
他家に勤める者達とだと一線を画すのは当然と言えば当然のことだろう。
そう言った意味においてシェラの振る舞いはあくまでもギリギリ合格点といったところで、所々、適切ではない行動が散見された。
ただしそれは『専属侍従ゆえの特別性』と見なすことも出来る範囲ではあったけれど。
何故シェラが俺専属の侍従となったのかという事情に関しては、俺付きの侍従や護衛、女官などならば全員が把握している。
そう言った意味で、目こぼしされている所があるのは確かだった。
だからというわけではないけれど、そう言った諸々も含め、以前ほどシェラをよく思えなくなっているのは間違いなかった。
(いや、元に戻っただけなのだろうけど)
シェラに対する印象に、前世で持っていた好印象が含まれなくなったのだ。
(だからと言って別にシェラのことを、疎ましく思っているだとか言うわけじゃない……ただ、)
依存している。
そういう自覚があるだけに、恐ろしく思っている部分があるのは確かだった。
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