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しおりを挟む何も知らなかった、否、知らずにいられた自分がどれだけ周囲に、とりわけラティに守られていたのかを思う。
そして同時にラティのことを、支えるだとか、そんなことすらできていなかったことを思った。
それを悪いことだとは思わない。思わない、けれど。
ただ、今、こんな話をしていて、周囲にいた人たちを色々と思い返して。でも、では誰が、というのかさっぱりわからない。
俺になのかラティになのか。あるいは王族そのものに対して、あるいは国に、なのか、反意を持つ者はいるとは思うのだ、ではそれはいったい誰なのかとなると。
「そうだね、そういう意思を持つ者なのだろうと思うよ」
俺のぼんやり呟いた言葉を肯定したラティに眉根を寄せる。
「……思い至れる者が誰もいないんだが…………」
そもそもからして、俺の知っている人間そのものが極端に少ない。
交友関係自体がひどく狭かった。
社交もへったくれもないことに愕然とする。
頭痛がしそうだ。
ラティ以外だとシェラだけ。
他の人間に対してとなると、辛うじて挨拶を交わしたり世間話のようなものを一言二言話す程度だ。
範囲を持つ相手になんて、思い至れるわけがない。
「そうだろうね。私でもすぐには思い至れないんだから仕方がないよ。だからこそ確認中でね。幸いと言えば良いのか、彼の接触した人間自体多いとも思えないから、今、そちらから洗い出しているところなんだけど……」
困ったように肩を竦めながらラティが、ちらと扉の方を伺う様子を見せる。
理由には俺もすぐに気付く。
シェラが戻ったのだ。
もうじき部屋に入ってくることだろう。
話を切り上げる気配に、シェラに知らせるつもりがないのだろうことを知った。
シェラはあくまでも侍従でしかない。
そしてほとんど間違いなく、今回の件に関しては利用されていると言える。
シェラの耳に入らないようにというのは、ただの気遣いだと思えた。
あるいは彼に告げる、告げないの選択肢を、ラティは俺に委ねようとでも言うのだろうか。
窺うようにラティを見ると、応えるように小さく頷かれる。
「とにかく、君が目覚めてよかったよ。魔力の状態も安定しているね。安心した。今日は出来るだけ早く戻るから、このまま一日ゆっくりしておいで」
起き出したりせずに体を休めて。
宥めるように続けられた言葉に、ぎこちなく首を縦に振った。
どうやら仕事に戻ろうとしているらしい気配に、心細くなって、縋るような目を向けてしまう。
同時にそんな自分に戸惑いも感じた。
だってこんな感情も今まではなかったものだ。
名状しがたい離れがたさは、だけど引き留めるほどのものではなく。
とは言え、俺は余程に寂しそうな顔をしていたのだろうか。
「ああ、そんな顔しないで。仕事に戻りたくなくなってしまうなぁ……」
小さくこぼしながら宥めるようにくちづけ一つ。
途端赤くなった頬を誤魔化すことも出来ない俺をなんだか恥ずかしくなるぐらい愛しそうに見つめた後、ラティはシェラと入れ違いにそっと俺から離れていった。
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