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25-1・距離感に惑う
しおりを挟む俺がラティのかっこよさに眩んだり、いつも通り率先して魔力に酔わされたりしながら仲良く夜を過ごした翌朝、起きるとシェラは戻ってきていて、俺のすぐ傍に控えていた。
目が覚めてすぐに気付き、俺はガバッと彼に取り縋ってしまう。
「シェラっ! 大丈夫なのか? 昨日、何があったんだ? 戻らないから、俺……」
取り乱す俺に、シェラは非常に申し訳なさそうな顔をして宥めてきた。
「申し訳ございません、ルニア様。ご心配をおかけいたしました。大丈夫、何も問題がないとまでは申しませんが、何か私にとってとても良くないことが起きているだとか、そういうことはございませんから……ね?」
伸ばした俺の手を振り解いたりせずに受け入れて、優しく諭すようにそう告げるルニアに嘘は感じられず、俺は少しだけ、ほっと安堵の息を吐く。
よくない事が起きたわけではない。
表現は何処までも曖昧だったが、例えば言葉や暴力で脅されたり、そこまでは行かずとも不快な思いをしたり、そう言ったことはないということなのだろう。
ただ、何があったのか、という問いに答えが返ってきていないのは確かだったし、そればかりは昨日も、ラティから教えられることがなかったので、気にならないわけもなく。
「大丈夫、なんだったらいいんだ、でも、」
何があったのかは知りたい。
続けながら、すぐにだけど躊躇した。
気にはなる。気にはなる、のだがしかしだからと言って、
(踏み込んでもいいんだろうか……)
俺は、否、俺になる前のルニアだって、どんな人も踏み込まれたくない事情だとかを一つや二つぐらい持っていることを知っていた。
心配だから、気になるから。
それで暴いていいことなのかどうかの判断が出来ない。
だってラティも俺に告げなかった事情で、シェラ本人も今、答えを口にしていないのだから、詮索してはいけなかったのではないかとすら思う。
そんな俺の迷いがきっと顔に出ていたのだろう、シェラの眉がへにょと力なく下がったのがわかった。
「ルニア様……そう、大したことがあったわけではないのです、ですが……そうですね、報告せねばなりませんよね」
苦笑しながら教えてくれたのは、つまり実家の用だったのだということ。もっと具体的に言うならば、
「僕のお見合い相手が何がどうなったのやら、あそこまで入って来てしまっていて、お帰り頂いた上で、なぜそのようなこととなったのかの確認などをしていると、少しばかり時間を取られてしまったのです」
とのこと、そのまま実家にもいろいろと確かめに帰らなければならなかったので、昨日はそのまま、ラティにのみかろうじて報告し、急ぎ王宮を出たのだということだった。
俺への連絡はつまりラティに言付けたのだそうだ。
ラティはいずれにせよきわめて個人的な事情だったことは間違いないので、俺へ伝える内容を制限しただけなのだろう。
理解できなくもない話ではあった。
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