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しおりを挟む寝室は敢えて少し光量を落としてあるようだった。
簡単に言うなら、薄暗さがあったのである。
それがなんとも、そういった雰囲気を助長させているようで、俺はますます居た堪れなくなる。
恥ずかしくて、でも。
(ようやく……ラティと触れ合える)
同時に心のどこかに、そんな風な期待もあった。
だから俺は抗わない。
否、抗えない。
「ルニア」
そのまま、部屋の中央にある、呆れるほど広い寝台へと促され、そして、とさ、その上へと押し倒されながら名を呼ばれた。
「ルニア」
いくら少ない光源の中だって、見誤るはずがない。
俺をまっすぐ見下ろしてくるラティの眼差しには欲が灯っていて、それが感じられるだけで、俺は体の芯がぐずぐずと溶けだしてしまうのではないかとさえ思う。
それぐらいになんだか、お腹の奥の方が熱かった。
子供が成っている部分、と言えばそうなのだけれど、子供が魔力を欲しているから、というだけが理由ではないことは確かで。
では何故かというと、それはつまり俺自身が、ラティを望んでいるからということになる。
俺は……否、ルニアは、これまでそんなこと自覚したことなんてなかった。
なにせ自らでわざわざ求めなくとも、何もかもが与えられてきたからだ。
それはラティからの接触だって同じ。
ルニアがラティへと触れたい、触れられたい、そんな風に思う前に、ラティから触れられ続けてきたのである。
でも今は違う。
俺が落ち着けていないからとラティが気遣って、ラティは本当に、俺に触れなかったのだ。
とは言え、エスコートは受けたりしていたので、軽く手を触れられるだとかはあったのだけれど。
少なくともこんな眼差しで見つめられることなんてなかったし、今のよう、顔を近づけて、そして……――
「ぁっ、んんっ……ふっ……んっ、」
ちゅ、と、軽く口付けたり、ましてやそのまま、口内を貪られたりなんて本当に全くしなかった。
ラティと俺がそうして触れ合わなかったのなんて、たったの五日。
だけど、されど五日、だ。
とにかく、ラティとこれまで、こんなにも長く触れ合わなかったことなんてない。
だからこそきっと寂しくて。
(これじゃあ、ただ俺が浅ましく、ラティをそう言う意味でばかり求めているみたいだ)
一瞬、そうも思ったけれど、当然そんなわけないことぐらい自覚している。
俺はただ……ただ、だけど何なのだろう。
俺は今にも自分を見失ってしまいそうだった。
そして何より、じんわりと触れ合った唇から、すぐにも流れ込んできたラティの魔力は、ますます俺の体を溶かしていくような、そんな熱に塗れているように感じられて。
それを俺が求めていたことは……――揺るがしがたい事実なのだった。
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