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しおりを挟むそんな俺の様子が、ラティにはいったいどう見えたのだろうか。
ラティの浮かべている笑みが深くなったような気がして、俺は思わず怯んでしまう。
でも嫌なわけでもないし、否定したいわけでもなかったので、俺はなんとかこくり、小さく頷きを返した。
返せる反応は、それが精いっぱいだったと言ってもいい。
でも、流石に、と、しばらくもごもごと躊躇った後、なんとかようやく口を開く。
ラティは、なんだかひどく愛しい物でも見ているというような眼差しで、ただ俺をずっと見つめていた。
「ほ、ほんとは……まだ、ちゃんと、落ち着けたわけ、じゃないけど……少なくとも、五日前、よりは……」
何よりそれと、夜を共に過ごすのはまた別の話。
そしてそんな俺の葛藤が、ラティに伝わらないわけもなく。
「なら、それはもしかして、寂しく思ってくれたとか、そう言うことかな?」
にこと改めて微笑みながら、見透かすようにそんなことを言った後、続けて、
「それともまさか体調が?」
そんな報告はなかったんだけど、と一転、気遣わしげに眉根を寄せた。
俺は慌てて首を横に振る。
「体調は! その……大丈夫……まだ……だから、その……」
もちろん、これ以上長引けばなんとも言えないのは事実だし、実際少しばかりの体調不良の気配のようなものを感じてもいた。
とは言えそんなもの、明日でも問題ないのではと思える程度で、だから本当は……先程ラティも口にしたもう一つの方。
寂しい、だとか、そういった想いの方が強かった。
否、それに体調不良だとかの理由を覆いかぶせたと言ってもいい。
否、否、先程ラティに、寂しかったのかと聞かれてようやく自覚した。
それが何も間違っていないのだと。
俺は寂しかったのだ。
ラティと別々で寝ることが。
ラティと触れ合えないことが。
だってずっと一緒だった。
少なくとも婚姻してからは毎晩、だ。
幸い、と言えば良いのか何なのか、公務だとかそういった事情だとかで叶わないなどと言うことは一日足りとてなく、ラティと俺が夜を共にしないこと自体が、ここ数日が初めてのことだったのである。
今まで当たり前に会ったぬくもりが傍にない。
広い寝台で一人きり。
俺の望み通り、思考はいくらでも巡らすことが出来た。なのに。
「あ、あの、俺……」
俺。
本当に、寂しかったんだ。
じわじわと駆け上ってきた実感に、ただでさえ俯きがちだった顔を、ますます上げられなくなってしまった。
もちろん、前提として、ある程度気持ちの整理が出来た部分もある。
でも、一番強い衝動は、やっぱり寂しさ、あるいは物足りなさだったのかもしれない。
一度そんな風に思ってしまうと、俺自身でさえ、そうとしか思えなくなってしまっていた。
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