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しおりを挟むラティのことだけを考える。
今の俺の伴侶で、そして前世からの俺の最推しだ。
美形で、なのに男らしくてかっこよくて、そして。
ずっとずっと憧れてた。
ラティがシェラを大事にするのを、見てるだけで幸せだった。
思い出すだけでドキドキする。
それは決して、俺自身がラティとどうこうなりたいとかそういうんじゃなくて、でも。
でも、今、俺は本当に、ラティとシェラが仲良く……イチャイチャするのを見たいと思っているのかの自身が、実はもうなくなってしまっていた。
好きだったはずなのにどうしてか、今は想像もしたくない。
否、否、どうしてか、なんてそんなもの、理由なんてわかっている。
「俺が……ラティを、好きだから」
だから、自分以外がラティと仲がいいところなんて想像したくないのである。
なのに同時にやっぱり、自分と、というのもなんだか違和感があって。
矛盾している。
自分でもわかっていた。
「あ~~~、ほんと、どうすりゃいいんだぁ~~……っ!」
ベッドの上でごろんごろん転がりながら身悶える。
はしたない、だとかなんだとかちらと思ったけれど、どうせ誰も見ていないのだから構わない。
いや、実際には侍従とか護衛とかが見える所にはいなくとも、部屋の外とか、すぐ近くにはいるのだけれど。
ルニアの感覚としては、彼らはいてもいないのと一緒だ。
いや、勿論、日々感謝はしているし、当たり前とまでは思っていないが、意識するような存在とも思っていなかった。
だって、生まれた時からずっとそんな風だから。
本当の意味で一人になるだなんてあり得ない。
なおかつ彼らが職分を超えて、俺に何かを告げてくるようなことも、またなかった。
だからこそ人目を気にせずに、こんな態度を取っている。
今日、シェラに用意してもらって見た映像を思い出す。
高等部時代の自分と、そしてラティとシェラ。
その後の夜会や公務の様子、そしてラティとの婚姻式。
ラティの出てくる部分はあの後、更に繰り返し何回も見た。
具体的に言うと五回ぐらい。だってかっこよくて。
もっと何回も眺めたかったけど、夕食とかそう言うのもあって無理だったのだ。
映像はラティが出てくるところだけに絞ってもそれなりに長かったので。
そんな風にラティを見て、やっぱりかっこいい、そう思った。
俺の推しだ。
見てるだけで幸せで。他のことなんか全部忘れられた。だけど。
「それはそれ、これはこれなんだよなぁ~……」
この部屋から出せないだとか。
そんなことを告げてくるラティの心情が、やはりどうしても理解できなかった。
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