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14-1・ラティ
しおりを挟むラティとは夕食も共にした。
とは言え、朝食と同じで、テラスにあるテーブルでの王族らしくないメニュー。
もちろん、ボリュームだとかそう言うのは、夕食に相応しく多かったけど。
ただ、俺はどうやら小食なようで、あまり量が食べられず、同じ量ではラティには物足りないのではないかと思ってそう告げたら、本人曰く、
「大丈夫だよ。足りないって思ったら、別で用意してもらうから」
とのこと、気にしなくてもいいと宥められた。
食後のお茶を楽しむと、ラティは名残惜しそうにしながらも部屋から出て行ってしまう。
『夜は別にする』
その言葉の通り、閨をわけてくれるということなのだろう。
先日のあまりにも長時間に及んだ行為の記憶は色濃く、それは正直ありがたいことだった。
否、ありがたいことである、はずだった。なのに。
(ラティを見送るのが、寂しい……名残惜しいのは、俺も同じだ……)
ぎゅっと胸が締め付けられるように痛んだ。
それはいったいなぜなのか。そんなこと決まっている。
(俺は……ラティが、好きだから)
前世からの推しで、かっこいいからというのも勿論ある。
でも、それだけならきっとここまで苦しくなんてない。
離れるのが、ただただ辛くて寂しいだなんて。
(ははっ……結局ルニアの方も依存してたってことかな……)
ルニアがラティに好意を抱いていたのは確かなことで、そしてそれは別に、今の俺になったからと言って、消えてなくなったわけでも何でもないのである。
ただ、なんと言えばいいのか、自分自身がラティの隣にいるのではなく、ラティと他の誰か……具体的に言えばシェラなのだが、そんな二人が仲良くしているのが見たいという気持ちの方が強いというだけで。
前世で俺は、別に同性を恋愛対象としていたわけではなかったはずなのに。
だけど今は、ラティと、そういう意味で触れ合うことに、嫌悪を感じているわけでは決してなかった。
あまりにも長時間だったししつこかったので辟易はしたけれどそれだけ。
嫌だったわけではない。
(これって結構、重要だよな……)
ラティを見送った後は、何もする気が起きなくて……それこそ、昨日のように、本を読む気にもならなくて、早々に寝支度を整えて、寝台の上で横になった。
しっかりと毎日ベッドメイクの成されるこの部屋に、ラティの匂いなんて残っているはずがない。
なのにどうしてか、思い出してしまって仕方がなくて。
深く吐いた溜め息の意味は、自分でもよくわからなかった。
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