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03-2

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 ただ、必死で。

「おおお、俺が、好きなのはラティ様だけど! でも! シェラも好きでっ!」
「ん?」
「え?」

 ラティとシェラ、二人から上がった不審やら驚きやらの声になど気付けない。

「俺、前世で! 好きなキャラ二人がいちゃいちゃしてるのを見るのが好きだったんだ! そういう話を読むのが趣味だった! 多分腐男子ってやつ! その中での一番の推しはラティ! だってかっこいいから! もう、シェラを甘く口説いたり、いろんなことから守ったりするのにドキドキした! シェラも好きだったんだ、推しだったんだよ、天使! 可愛い! ラティの相手に相応しい天使でお似合いで! だから俺はそんな推しキャラが存分に色々する・・・・のを眺めたかった! もういっそその場にいられたら! でも邪魔はしたくないし、だったらいっそ壁に! 壁になりたかった! ずっと眺めてられるから! 推しをいつまでも眺めていられる壁!! 最高じゃないか! そうなりたい! 誰はばかることなく眺め続けられる立ち位置最高! いっそ壁にならせてくださいっ、いまからでもいい、そしてラティ様、存分にシェラといちゃついて! 俺、応援してるから!」
「は?」
「え、ちょ、ルニア様っ?!」

 前世からの思いのたけをぶちまけることに知らず必死になった俺は、不快だとすぐにわかるようなラティの声にも、慌てふためくシェラの声にも気づけない。
 否、そんな二人の反応は、俺を止める役目を果たしたりなんてしなかった。
 俺は言ってしまうのだ。

「ルニアは悪役だし、俺、二人の邪魔したくないしっ! と、言うか、そもそも俺の恋愛対象男性じゃないしっ! いっそ傍観者でありたい!だからっ……!」

 何かを考えたわけではなかった、思考はほとんど停滞して、むしろうまく働かない。
 でも、ルニアの記憶がないわけではないから、自分の立場もわかっている。
 だって何故かルニアなのに、ラティと婚姻を結んでしまっているのだ。
 あり得ない、そんなこと、あり得ていいはずがないのに。
 だってルニアは悪役だ、ラティと結ばれるはずなんてない、でもルニアは俺で、だったら今更二人の邪魔なんかするはずがなくて、今からでもきっと遅くない、だから。

「俺と離縁してくださいっ!」

 などと、何もかもの思考をぶっ飛ばしたような、だけど前世からの切実な願いを、その為にと自然と出てきてしまった手段を、俺は思いっきりぶちまけていた。

「お願いしますっ!」

 それどころかいっそ懇願までしていた。だけど。
 そこまで言い切った瞬間、はっきりと、空気が凍ったような気がした。
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