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第一章 これが所謂巻き込まれトリップ!?
少女を助けただけなのに
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思えば、今日は何だかツいていなかった。目覚ましはセットし忘れるし、ご飯を炊くのも忘れるし、メガネを割ってしまって換えのメガネを探す羽目になるし。信号は全部引っ掛かり、電車は大混雑だった。大学に着いても今日提出予定の課題を家に忘れ、もう一度作り直すためにお昼の時間を犠牲にしなければならなかった。バイト先でも失敗続きで、一周回って店長に同情されてしまった。
「うぅ·····、やっと終わった····。何なんだ今日は···厄日なの····?」
漸く一日が終わり、帰路に着いていた時だった。
「おい!危ないぞ!!」
「ちょっ、誰か止めないと!」
声が聞こえる方を見ると、イヤホンを付けた少女が横断歩道を歩いていた。対向車線にはトラックが凄いスピードを出して走っていた。運転手はどうやらスマホ片手に運転しているらしい。周りの人たちは見ているだけで動こうとはしない。
無意識だった。あそこでそのまま通り過ぎれば良かった。それでも、何故だか無視してはいけないような気がして、気がついたら僕は少女のもとへ駆け出していた。
「っ、危ない·····!」
「っえ、!?きゃあっ!」
その瞬間、僕らは突然光に包まれた。
■▫□▪■▫□▪■▫□▪■
「っ、あれ····、ここは····」
「良かった····!目が覚めましたか!?」
どうやら気を失っていたらしく、目が覚めるとそこは見たこともない場所だった。隣でホッとしたように胸を撫で下ろしているのは、ついさっき僕が助けた少女だった。
「君は、さっきの····」
「先程は危ない所を助けていただき、本当にありがとうございました!」
「いーえ、君に怪我がないみたいで良かった。····それにしてもここは?」
「それが、私もさっき気がついたばかりでここが何処なのか把握出来ていないんです。」
辺りを見渡すと、どこか中世のような造りの建物でお城のような豪奢さだった。窓も扉も何もなく、どうやってここに連れて来られたのか分からない。
「·····兎に角、ここから出る事を考えよう。」
「そ、そうですね!早く家に帰「あっれ~?ね~ね~、セイジョサマって二人もいんのぉ?」」
僕たち以外の声が聞こえ振り返ると、見るからに異国の装いをした男女が扉を出現させて入ってきた。
「そんな訳ないだろう。伝説によれば聖女様はその身に莫大な聖力を宿し、我らを救って下さる美しき女性だ。そちらの少女ならまだしも間違っても、こんなちんちくりんな男の事ではない。」
「じゃああの男は誰なのよ。····まさか、侵入者?」
「窓もないもないこの空間に侵入出来る訳ねーだろうよ。大方、巻き込まれて一緒に召還されちまったっつー事じゃねぇの?」
「え、僕サラッと貶された?」
「とゆーか、誰·····?」
僕らの呟きに反応した(先程僕をちんちくりんと宣った)眼鏡のインテリそうな男が近づいてきた。
「このような形でお呼びしたこと、誠に申し訳なく思います。しかし、この世界には貴女様のお力が必要なのです。どうか我らを救っては下さいませんか?『聖女様』」
「えっ?せ、聖女って····私ですか!?」
驚く彼女に、インテリ眼鏡の肩に腕を回したちゃらんぽらんな雰囲気漂う天パの男が答える。
「うんうん、そ~だよぉ!君はオレちゃん達を救う救世主。偉大なる女神·イヴェリアナ様のお力を宿した君にしか出来ない事なんだぁ。」
「今やアタシたちの国は浄化を行わなければいけないほど腐りきってしまっているの。」
「要するに、浄化するには聖女様のお力が必要って事だ。」
「うえぇ·····、そ、そんな事言われても·····」
「ね~、それにしてもさぁ····」
天パ男が僕の方をチラと見る。一瞬だけ交わった瞳は何を考えているのか分からない。
「アイツ、ど~すんのぉ?········殺しちゃう?」
「っひ········っ」
ぶわり、と彼らから殺気を感じ、体の毛穴という毛穴から冷汗が流れ出る。友人からは底なしの鈍感鈍男と名高い僕でも分かる程の殺気。今一歩でも動けば、彼らの内の誰かが一瞬にして僕を殺すだろう。見るからに屈強そうな彼らだ。大して体を鍛えていないヒョロヒョロの僕一人殺すなど造作もないだろう。
「そうよねぇ····、仮に巻き込まれてしまったのだとしても、今聖女様が公になると困るのよね。」
「コイツを処分せず逃したとして、もし何か事件に遭って聖女の事をバラさないとは言い切れねぇ。」
「コチラの都合に巻き込んで申し訳ないとは思うが·····、まぁ運が悪かったとしか言いようがないな。」
「そ、んな·····」
そんな事ってあるだろうか。少女を助けたらいきなり異世界へ飛ばされて、挙げ句の果てに口封じの為に殺される?·····最悪だ。
(こんな事になるのなら·····、あの時無視していたら良かった。助けなければ、見て見ぬふりをしていたら·····)
「ーーーいい加減にして下さい!!」
「うぅ·····、やっと終わった····。何なんだ今日は···厄日なの····?」
漸く一日が終わり、帰路に着いていた時だった。
「おい!危ないぞ!!」
「ちょっ、誰か止めないと!」
声が聞こえる方を見ると、イヤホンを付けた少女が横断歩道を歩いていた。対向車線にはトラックが凄いスピードを出して走っていた。運転手はどうやらスマホ片手に運転しているらしい。周りの人たちは見ているだけで動こうとはしない。
無意識だった。あそこでそのまま通り過ぎれば良かった。それでも、何故だか無視してはいけないような気がして、気がついたら僕は少女のもとへ駆け出していた。
「っ、危ない·····!」
「っえ、!?きゃあっ!」
その瞬間、僕らは突然光に包まれた。
■▫□▪■▫□▪■▫□▪■
「っ、あれ····、ここは····」
「良かった····!目が覚めましたか!?」
どうやら気を失っていたらしく、目が覚めるとそこは見たこともない場所だった。隣でホッとしたように胸を撫で下ろしているのは、ついさっき僕が助けた少女だった。
「君は、さっきの····」
「先程は危ない所を助けていただき、本当にありがとうございました!」
「いーえ、君に怪我がないみたいで良かった。····それにしてもここは?」
「それが、私もさっき気がついたばかりでここが何処なのか把握出来ていないんです。」
辺りを見渡すと、どこか中世のような造りの建物でお城のような豪奢さだった。窓も扉も何もなく、どうやってここに連れて来られたのか分からない。
「·····兎に角、ここから出る事を考えよう。」
「そ、そうですね!早く家に帰「あっれ~?ね~ね~、セイジョサマって二人もいんのぉ?」」
僕たち以外の声が聞こえ振り返ると、見るからに異国の装いをした男女が扉を出現させて入ってきた。
「そんな訳ないだろう。伝説によれば聖女様はその身に莫大な聖力を宿し、我らを救って下さる美しき女性だ。そちらの少女ならまだしも間違っても、こんなちんちくりんな男の事ではない。」
「じゃああの男は誰なのよ。····まさか、侵入者?」
「窓もないもないこの空間に侵入出来る訳ねーだろうよ。大方、巻き込まれて一緒に召還されちまったっつー事じゃねぇの?」
「え、僕サラッと貶された?」
「とゆーか、誰·····?」
僕らの呟きに反応した(先程僕をちんちくりんと宣った)眼鏡のインテリそうな男が近づいてきた。
「このような形でお呼びしたこと、誠に申し訳なく思います。しかし、この世界には貴女様のお力が必要なのです。どうか我らを救っては下さいませんか?『聖女様』」
「えっ?せ、聖女って····私ですか!?」
驚く彼女に、インテリ眼鏡の肩に腕を回したちゃらんぽらんな雰囲気漂う天パの男が答える。
「うんうん、そ~だよぉ!君はオレちゃん達を救う救世主。偉大なる女神·イヴェリアナ様のお力を宿した君にしか出来ない事なんだぁ。」
「今やアタシたちの国は浄化を行わなければいけないほど腐りきってしまっているの。」
「要するに、浄化するには聖女様のお力が必要って事だ。」
「うえぇ·····、そ、そんな事言われても·····」
「ね~、それにしてもさぁ····」
天パ男が僕の方をチラと見る。一瞬だけ交わった瞳は何を考えているのか分からない。
「アイツ、ど~すんのぉ?········殺しちゃう?」
「っひ········っ」
ぶわり、と彼らから殺気を感じ、体の毛穴という毛穴から冷汗が流れ出る。友人からは底なしの鈍感鈍男と名高い僕でも分かる程の殺気。今一歩でも動けば、彼らの内の誰かが一瞬にして僕を殺すだろう。見るからに屈強そうな彼らだ。大して体を鍛えていないヒョロヒョロの僕一人殺すなど造作もないだろう。
「そうよねぇ····、仮に巻き込まれてしまったのだとしても、今聖女様が公になると困るのよね。」
「コイツを処分せず逃したとして、もし何か事件に遭って聖女の事をバラさないとは言い切れねぇ。」
「コチラの都合に巻き込んで申し訳ないとは思うが·····、まぁ運が悪かったとしか言いようがないな。」
「そ、んな·····」
そんな事ってあるだろうか。少女を助けたらいきなり異世界へ飛ばされて、挙げ句の果てに口封じの為に殺される?·····最悪だ。
(こんな事になるのなら·····、あの時無視していたら良かった。助けなければ、見て見ぬふりをしていたら·····)
「ーーーいい加減にして下さい!!」
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