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2年生2学期
10月7日(金)雨 ソフィアとシュウの完結編:序
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少し天気が悪い日が続いた金曜日。
この日も文化祭に向けた文芸部内での準備が進められ、細かい装飾を除くとあとは冊子が届けばいいところまで進んだ。
しかし、そんな準備が一区切り付いた時、僕と桐山くんは藤原先輩に呼ばれて一旦部室を出る。
普段から一緒にトイレへ行くことはないし、そもそも藤原先輩がこういう呼びかけをすることがあまりなかったから、呼ばれた時に僕と桐山くんは思わず顔を見合わせていた。
「どうしたんですか、藤原先輩」
「さっきの準備で何か不備でもあったんすか?」
「いや……それとは関係なくて……凄く個人的な話……」
そう言いながら藤原先輩は一度深呼吸するので、僕と桐山くんは息を吞む。
「実は……文化祭で……告白しようと思うんだ」
「ああ、告白っすか……えええっ、ふがふが」
「桐山くん、ごめん」
藤原先輩の言葉に声を上げそうになった桐山くんの口を僕は塞ぐ。
もちろん、僕も驚いてはいたが、とうとう来たかという感情もあった。
「……ちょ、ちょっと待ってください。藤原先輩が誰に告白する話なんすか。俺、全然事情知らないんすけど」
「それは……岬ソフィアに」
「へぇ~ 全然わからなかったっす。いや、3年生の先輩方と会ってる回数少ないのもあるとは思うんですけど。産賀先輩は知ってたんっすか?」
「まぁ……薄々は」
そう言いつつも森本先輩や水原先輩と共に色々見たり聞いたりしていたから、薄々どころか完全に把握していた。
桐山くんの言う通り、最近は3年生が忙しく、僕自身も副部長でやることや後輩に気を取られていて、あまり気にする暇がなかったけど。
「なるほど、それで俺達に協力して欲しいって話っすね」
「うん……とはいっても……シフトの調整とか……その辺りを気にして貰えれば……十分」
「じゃあ、そこは産賀先輩の役割っすね……あれ? じゃあ、俺は……?」
「……この前、桐山くんの好きな子を教えて貰ったから……話しておこうかと。それに……共有しておいた方が……色々いいかと」
「藤原先輩、真面目っすねぇ。でも、そういうことなら俺も上手い事動きは合わせますよ」
僕が答えるより先に桐山くんは話を進めていく。
普段の自分のことだと、あたふたしているけど、他人のことならスムーズに進められるらしい。
「3年生の文化祭で告白なんてマジで小説やドラマみたいな話っすねぇ。まぁ、これからもっと忙しい時期にはなるんでしょうけど……いつ頃から好きだったんすか?」
「全部話すと長くなるけど……意識したのは高1の終わり」
「それならもっと早く告白していれば……いや、俺は他人のことは言えないっすね」
「……桐山くんも何かやる予定なら……特に気にしないでも……」
「いや、そこは全力で援護させて貰うっすよ。言っても俺はまだ1年生で時間はありますし。ね、産賀先輩?」
「う、うん」
そのつもりではあったけど、僕は少しだけ桐山くんのテンションに付いていけなかった。
これからシフトを決める時も含めて、上手く調整しなければならないプレッシャーがあったし、何より僕が他人の恋路を応援することは……少々良くない前例がある。
「がんばりましょう、藤原先輩!」
「うん……!」
こうして、文化祭の裏で藤原先輩の戦いも始まることになった。
僕と桐山くんだけに相談したということは、もっと事情に詳しいはずの森本先輩や水原先輩に情報を共有できないということだ。
ただ、僕が見た限りだと、2人の関係はもう仕上がっていると思っているので、成功することを祈るばかりである。
この日も文化祭に向けた文芸部内での準備が進められ、細かい装飾を除くとあとは冊子が届けばいいところまで進んだ。
しかし、そんな準備が一区切り付いた時、僕と桐山くんは藤原先輩に呼ばれて一旦部室を出る。
普段から一緒にトイレへ行くことはないし、そもそも藤原先輩がこういう呼びかけをすることがあまりなかったから、呼ばれた時に僕と桐山くんは思わず顔を見合わせていた。
「どうしたんですか、藤原先輩」
「さっきの準備で何か不備でもあったんすか?」
「いや……それとは関係なくて……凄く個人的な話……」
そう言いながら藤原先輩は一度深呼吸するので、僕と桐山くんは息を吞む。
「実は……文化祭で……告白しようと思うんだ」
「ああ、告白っすか……えええっ、ふがふが」
「桐山くん、ごめん」
藤原先輩の言葉に声を上げそうになった桐山くんの口を僕は塞ぐ。
もちろん、僕も驚いてはいたが、とうとう来たかという感情もあった。
「……ちょ、ちょっと待ってください。藤原先輩が誰に告白する話なんすか。俺、全然事情知らないんすけど」
「それは……岬ソフィアに」
「へぇ~ 全然わからなかったっす。いや、3年生の先輩方と会ってる回数少ないのもあるとは思うんですけど。産賀先輩は知ってたんっすか?」
「まぁ……薄々は」
そう言いつつも森本先輩や水原先輩と共に色々見たり聞いたりしていたから、薄々どころか完全に把握していた。
桐山くんの言う通り、最近は3年生が忙しく、僕自身も副部長でやることや後輩に気を取られていて、あまり気にする暇がなかったけど。
「なるほど、それで俺達に協力して欲しいって話っすね」
「うん……とはいっても……シフトの調整とか……その辺りを気にして貰えれば……十分」
「じゃあ、そこは産賀先輩の役割っすね……あれ? じゃあ、俺は……?」
「……この前、桐山くんの好きな子を教えて貰ったから……話しておこうかと。それに……共有しておいた方が……色々いいかと」
「藤原先輩、真面目っすねぇ。でも、そういうことなら俺も上手い事動きは合わせますよ」
僕が答えるより先に桐山くんは話を進めていく。
普段の自分のことだと、あたふたしているけど、他人のことならスムーズに進められるらしい。
「3年生の文化祭で告白なんてマジで小説やドラマみたいな話っすねぇ。まぁ、これからもっと忙しい時期にはなるんでしょうけど……いつ頃から好きだったんすか?」
「全部話すと長くなるけど……意識したのは高1の終わり」
「それならもっと早く告白していれば……いや、俺は他人のことは言えないっすね」
「……桐山くんも何かやる予定なら……特に気にしないでも……」
「いや、そこは全力で援護させて貰うっすよ。言っても俺はまだ1年生で時間はありますし。ね、産賀先輩?」
「う、うん」
そのつもりではあったけど、僕は少しだけ桐山くんのテンションに付いていけなかった。
これからシフトを決める時も含めて、上手く調整しなければならないプレッシャーがあったし、何より僕が他人の恋路を応援することは……少々良くない前例がある。
「がんばりましょう、藤原先輩!」
「うん……!」
こうして、文化祭の裏で藤原先輩の戦いも始まることになった。
僕と桐山くんだけに相談したということは、もっと事情に詳しいはずの森本先輩や水原先輩に情報を共有できないということだ。
ただ、僕が見た限りだと、2人の関係はもう仕上がっていると思っているので、成功することを祈るばかりである。
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