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本編
11 竜との出会い
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アルブに抱っこされて運ばれている間に眠ってしまったらしい。
気づいたら見慣れないベッドの上にいて、でも父さまが隣にいた。疲れた顔で眠っている。僕は嬉しくなって父さまの胸に抱かれるようにしてもう一度眠った。懐かしい匂い、寝息。安心する。
「メイ、ごめん、メイ、メイ」
名前を呼ばれている。
目を覚ましたら、強く抱きしめられた。目をこする。あくびが出た。
「メイ、こんなに傷ついて、痛かっただろう? 俺が馬鹿なせいで、こんな……」
【父さまは悪くない。大丈夫、もう痛くないよ】
言いたいのに声が出ない。仕方ないから父さまに抱き着いて、父さまの背中をポンポンってする。アルブがしてくれたように、優しく。
「アルブレヒトさまから話は聞いたよ。メイが竜だって何だって、俺の子に変わりない。無事で良かった。本当に良かった」
父さまに抱き着いて、そのままベッドに横になる。もう少し眠っていたかった。安心したまま、父さまに抱っこされたまま。小さい子みたいに。きっと今しかできないから。
それから僕が起きるまで、父さまは一緒に横になっていてくれた。目覚めた時に父さまが隣にいてくれて、本当に嬉しかった。父さまは僕をお風呂に入れてくれて、服を着せてくれた。本当に小さい子に戻ったみたいだった。
「おまえ、甘えすぎだろ」
アルブが来てくれた。肩に小さい竜がいる。あの時、僕のいる部屋に飛んで来てくれた竜だ。
「話がしたいんだが、良いか?」
父さまと僕はアルブに連れられて、応接室のような部屋に通された。
とても広い施設で、ここがどこだかわからないけど、窓の外には空が広がっている。
部屋の中のソファに、父さまと並んで座った。目の前のソファにアルブ。竜はいなくなっていて、アルブの座る場所の後ろには僕と同じくらいの身長の可愛らしい女の子と、細身で精悍な顔つきの男の人が立っている。
「落ち着いたか?」
アルブが僕に聞いてくれたから、僕はうんって頷いた。
「ご迷惑をおかけしました。アルブレヒトさまのおかげで、メイを失わずにすみました。ありがとうございます」
父さまが頭を下げる。僕も同じように頭を下げた。
「メイ、はっきり伝えておくが、おまえの父親は、リフィエルの為に肉体労働を強いられていた。眠ることが許されず、休むと暴行されるような場所だ」
僕は息を飲む。父さまを見て、首を振ってしがみついた。
「大丈夫だよ、メイ。俺は俺の意志でそうしていたんだ。まさかメイがこんな目に合っているとも知らずに。俺が馬鹿だったんだ、悪かった」
僕はまた涙が出た。涙を流したら、父さまがぬぐってくれた。
「それとおまえの話だ」
アルブが話を続ける。僕は父さまから離れ、きちんと座りなおした。
「おまえが竜だというのは間違いがない。別の竜に確認させたからな。だが重大なことがわかった」
僕は唾をのみ込んで、覚悟をした。
「おまえの胸の紋章は、竜王の系列を示している。簡単に言えば、おまえは竜の王族の血を引いていることになる」
アルブの後ろのふたりが礼の姿を取る。それは人の礼の仕方だったけど、僕に向けてしていることがわかる。
「こいつらは竜だよ。俺の竜、エリルとジルバートだ」
ふたりは名前を呼ばれると、にっこり笑った。
竜騎士の隊長ともなると、二体も竜を所有できるのか。すごい。
「エリルはメイの部屋に行った竜だ。会っただろ? 緑色の小竜。ジルバートは飛竜だ。俺を乗せて飛ぶ」
僕は目を輝かせてふたりを見た。
父さまはずっと緊張した様子だ。僕らは庶民だから、竜が人型でいることも知らなかった。人型から竜に変化できるって聞いても、本当なのかと想像も難しい。
「ちなみに言っておくが、俺の伴侶じゃねえよ? こいつらはふたりが伴侶で、俺は昔に相方を亡くしている。相方だった竜の兄弟がジルバートだ。まぁ、昔の話だから。一応話したが、ここだけの話にしておいてくれ」
僕はこくっと頷く。
「おまえが竜の王族であることはわかったが、おまえは拾い子だ。ジルバートが言うには、王族が戯れで人と交わった時に出来た子で、子を望まなかった人が捨てたんじゃないかということだ。人の腹から生まれた竜は、親と同じ姿で生まれて来て、育ててもらう為に、成人を迎える歳まで変化しないのだそうだ。だから変化後の紋を見てしか系列がわからない。竜に現れる紋は血筋を表している。おまえは確かに王族だそうだ」
僕は訳がわからなくてぼーっとする。僕が王族だっていうのも訳がわからないし、とにかく竜だって言われても納得できていないのだから。
「竜の王族は、竜の種族関係なく愛されているんだと。竜が言うには、王族はみんな小さくて可愛いらしい。だから大事にされるし、竜から危害を加えられることはない。運命の相手を見つけたら、一度、竜の谷に挨拶に行かないとダメらしいよ」
なんだかすごいことを言われているけど、僕が小さいのは王族だからってことなのか? すごく悩んで筋肉が欲しくて頑張ってたのに、全部無駄だったってことだ。
「あとな、問題だったのは、おまえが監禁されている時に竜に変化していた場合だ。竜に変化していれば、距離があっても王族の誕生を探知し、状態を把握できるらしい。恐ろしいよな。小竜を虐めていただけで竜はそいつを殺す。それなのに王族の竜を監禁して暴行している。ありえねえよな。我が国は竜の大群に攻め入られる可能性があった。おまえが飲んだ薬が安価な物で助かったんだ。あいつの馬鹿な行動で、危うく国が滅ぶところだった」
僕はぞっとする。まるで人ごとのように聞こえてしまうのだけど、国が滅ぶとまで言われたら、恐ろしい。
「さて、おまえはこれから運命の相手を見つけなければならない。見つけて早く変化して、薬の形跡を消さなければ、竜の怒りがこちらを向く。今までにそういう兆しを感じたことはないか?」
アルブに聞かれて首を振る。ある訳がない。竜だって言われてからずっと部屋にいて、一歩も外に出ていなかったから。
アルブはふうむと考え込む。
「やはり思いつくのはウチの精鋭部隊か。他国に取られるのも厄介だしな。とりあえず、会えるだけ会って、出会うに賭けるしかねえか」
「出会ったらすぐにわかる」
ジルバートが真剣な顔つきのまま言う。
「出会ってしまったら離れられないし、傍にいないと落ち着かなくなるんだよ。竜の一途さはすごいのよ」
メリルは可愛らしくにっこり笑った。
気づいたら見慣れないベッドの上にいて、でも父さまが隣にいた。疲れた顔で眠っている。僕は嬉しくなって父さまの胸に抱かれるようにしてもう一度眠った。懐かしい匂い、寝息。安心する。
「メイ、ごめん、メイ、メイ」
名前を呼ばれている。
目を覚ましたら、強く抱きしめられた。目をこする。あくびが出た。
「メイ、こんなに傷ついて、痛かっただろう? 俺が馬鹿なせいで、こんな……」
【父さまは悪くない。大丈夫、もう痛くないよ】
言いたいのに声が出ない。仕方ないから父さまに抱き着いて、父さまの背中をポンポンってする。アルブがしてくれたように、優しく。
「アルブレヒトさまから話は聞いたよ。メイが竜だって何だって、俺の子に変わりない。無事で良かった。本当に良かった」
父さまに抱き着いて、そのままベッドに横になる。もう少し眠っていたかった。安心したまま、父さまに抱っこされたまま。小さい子みたいに。きっと今しかできないから。
それから僕が起きるまで、父さまは一緒に横になっていてくれた。目覚めた時に父さまが隣にいてくれて、本当に嬉しかった。父さまは僕をお風呂に入れてくれて、服を着せてくれた。本当に小さい子に戻ったみたいだった。
「おまえ、甘えすぎだろ」
アルブが来てくれた。肩に小さい竜がいる。あの時、僕のいる部屋に飛んで来てくれた竜だ。
「話がしたいんだが、良いか?」
父さまと僕はアルブに連れられて、応接室のような部屋に通された。
とても広い施設で、ここがどこだかわからないけど、窓の外には空が広がっている。
部屋の中のソファに、父さまと並んで座った。目の前のソファにアルブ。竜はいなくなっていて、アルブの座る場所の後ろには僕と同じくらいの身長の可愛らしい女の子と、細身で精悍な顔つきの男の人が立っている。
「落ち着いたか?」
アルブが僕に聞いてくれたから、僕はうんって頷いた。
「ご迷惑をおかけしました。アルブレヒトさまのおかげで、メイを失わずにすみました。ありがとうございます」
父さまが頭を下げる。僕も同じように頭を下げた。
「メイ、はっきり伝えておくが、おまえの父親は、リフィエルの為に肉体労働を強いられていた。眠ることが許されず、休むと暴行されるような場所だ」
僕は息を飲む。父さまを見て、首を振ってしがみついた。
「大丈夫だよ、メイ。俺は俺の意志でそうしていたんだ。まさかメイがこんな目に合っているとも知らずに。俺が馬鹿だったんだ、悪かった」
僕はまた涙が出た。涙を流したら、父さまがぬぐってくれた。
「それとおまえの話だ」
アルブが話を続ける。僕は父さまから離れ、きちんと座りなおした。
「おまえが竜だというのは間違いがない。別の竜に確認させたからな。だが重大なことがわかった」
僕は唾をのみ込んで、覚悟をした。
「おまえの胸の紋章は、竜王の系列を示している。簡単に言えば、おまえは竜の王族の血を引いていることになる」
アルブの後ろのふたりが礼の姿を取る。それは人の礼の仕方だったけど、僕に向けてしていることがわかる。
「こいつらは竜だよ。俺の竜、エリルとジルバートだ」
ふたりは名前を呼ばれると、にっこり笑った。
竜騎士の隊長ともなると、二体も竜を所有できるのか。すごい。
「エリルはメイの部屋に行った竜だ。会っただろ? 緑色の小竜。ジルバートは飛竜だ。俺を乗せて飛ぶ」
僕は目を輝かせてふたりを見た。
父さまはずっと緊張した様子だ。僕らは庶民だから、竜が人型でいることも知らなかった。人型から竜に変化できるって聞いても、本当なのかと想像も難しい。
「ちなみに言っておくが、俺の伴侶じゃねえよ? こいつらはふたりが伴侶で、俺は昔に相方を亡くしている。相方だった竜の兄弟がジルバートだ。まぁ、昔の話だから。一応話したが、ここだけの話にしておいてくれ」
僕はこくっと頷く。
「おまえが竜の王族であることはわかったが、おまえは拾い子だ。ジルバートが言うには、王族が戯れで人と交わった時に出来た子で、子を望まなかった人が捨てたんじゃないかということだ。人の腹から生まれた竜は、親と同じ姿で生まれて来て、育ててもらう為に、成人を迎える歳まで変化しないのだそうだ。だから変化後の紋を見てしか系列がわからない。竜に現れる紋は血筋を表している。おまえは確かに王族だそうだ」
僕は訳がわからなくてぼーっとする。僕が王族だっていうのも訳がわからないし、とにかく竜だって言われても納得できていないのだから。
「竜の王族は、竜の種族関係なく愛されているんだと。竜が言うには、王族はみんな小さくて可愛いらしい。だから大事にされるし、竜から危害を加えられることはない。運命の相手を見つけたら、一度、竜の谷に挨拶に行かないとダメらしいよ」
なんだかすごいことを言われているけど、僕が小さいのは王族だからってことなのか? すごく悩んで筋肉が欲しくて頑張ってたのに、全部無駄だったってことだ。
「あとな、問題だったのは、おまえが監禁されている時に竜に変化していた場合だ。竜に変化していれば、距離があっても王族の誕生を探知し、状態を把握できるらしい。恐ろしいよな。小竜を虐めていただけで竜はそいつを殺す。それなのに王族の竜を監禁して暴行している。ありえねえよな。我が国は竜の大群に攻め入られる可能性があった。おまえが飲んだ薬が安価な物で助かったんだ。あいつの馬鹿な行動で、危うく国が滅ぶところだった」
僕はぞっとする。まるで人ごとのように聞こえてしまうのだけど、国が滅ぶとまで言われたら、恐ろしい。
「さて、おまえはこれから運命の相手を見つけなければならない。見つけて早く変化して、薬の形跡を消さなければ、竜の怒りがこちらを向く。今までにそういう兆しを感じたことはないか?」
アルブに聞かれて首を振る。ある訳がない。竜だって言われてからずっと部屋にいて、一歩も外に出ていなかったから。
アルブはふうむと考え込む。
「やはり思いつくのはウチの精鋭部隊か。他国に取られるのも厄介だしな。とりあえず、会えるだけ会って、出会うに賭けるしかねえか」
「出会ったらすぐにわかる」
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