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1章
11 簡単なお仕事
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黒い仕立ての良いコートにスーツ。革の黒手袋にカシミヤのマフラー。薄い色のサングラスと口髭。いっつもキャンディバーを咥えている中年男性。危ない雰囲気は組織のボスを思わせるが、こいつは違う。志津木の上司である纐纈 刃だ。
「ジンさん、野暮でしょうよ」
マンションからつけられていたとは思いにくいが、あり得るのがこの業界だ。何でも屋家業、時には軍人にもSPにも化ける。その親玉自ら出張るとあれば、何やら怪しい話なのだろう。
「同居人はどう?」
甘い桃の香りが届く。マスクして顔を背けたい衝動を耐える。見れば運転手に扮しているのも同僚だ。中国マフィア上がりのシェンエン。暗殺が得意の危ないヤツ。
「ジンさんの威光で回避できないんですか? あれ」
そう言うジンが嬉しそうに笑う。ケッケッケと聞こえる笑い声は感に触る。
「あーなるほど。あれはジンさんの仕込みですかね? だから妙な経歴と傷持ちで。俺の友人が困ってましたよ? 俺、適当に選んだのに何故指定出来てるんですかね? マジシャンですか?」
シェンエンがルームミラー越しにバーカとか言って来る。運転席の背中を蹴ってやった。うげっとか言ってて少々気が晴れる。
「あれはさぁ、危険なお荷物持ちなんだわ。お掃除しないと使い物にならないらしいよ?」
パサっと写真が膝に落ちる。拾い上げれば、隠し撮りのショットだ。大陸に良くいるガタイの良い肌の浅黒い黒いサングラスの男と赤いドレスの女性。それにタブレットへ送られて来た情報。
「あー俺、明日7時までに帰らないと同居人が泣く羽目になるんですけど。その後じゃダメですかね?」
「マンションごと爆破されても知んねえよ?」
流暢なこの国の言葉でシェンエンが言う。どっかの店の駐車場で落とされるように降ろされ、シェンエンに車のキーを貰った。じゃあなとエンジン吹かして去る黒塗りエンペラーの尻を見送って、用意された車に乗り込む。キュッキュッと鳴るのが邪魔くさい。小型のポルシェ黒。そりゃ加速必要だが目立ちたくはない。しかもヤッた後、自宅で風呂入れば良いかとシャワーも浴びていない。妙に自分の匂いが気になる不快な気持ちのまま、しかも服装も普段着、防弾服も仕込んでいない。相棒は助手席下にある。馴染みのモノだ。っていうか暗殺とか、時間を掛けて準備して機会を狙うものじゃないのか? SPうようよ侍らせた他国の組織関連の女だろ? 要はニアを飼っていた女だ。背を鞭で打ってタバコの火を内腿で消して、外国のでかい男のナニを準備なく尻に突っ込んだ女。あぁ、もしかしたらお道具で虐めていたとか? 想像だけでも怒りが湧く。っつうか、ニアはお仕事仲間なのか? あの従順さとプルプル震えていたのに? ありえない。そうなら帰ったらお仕置きだな。嘘はいけない。なにせ飼い主なのだからと、妙なハイテンションでポルシェを走らせる。暗殺も志津木の大切なお仕事のひとつだ。
「ジンさん、野暮でしょうよ」
マンションからつけられていたとは思いにくいが、あり得るのがこの業界だ。何でも屋家業、時には軍人にもSPにも化ける。その親玉自ら出張るとあれば、何やら怪しい話なのだろう。
「同居人はどう?」
甘い桃の香りが届く。マスクして顔を背けたい衝動を耐える。見れば運転手に扮しているのも同僚だ。中国マフィア上がりのシェンエン。暗殺が得意の危ないヤツ。
「ジンさんの威光で回避できないんですか? あれ」
そう言うジンが嬉しそうに笑う。ケッケッケと聞こえる笑い声は感に触る。
「あーなるほど。あれはジンさんの仕込みですかね? だから妙な経歴と傷持ちで。俺の友人が困ってましたよ? 俺、適当に選んだのに何故指定出来てるんですかね? マジシャンですか?」
シェンエンがルームミラー越しにバーカとか言って来る。運転席の背中を蹴ってやった。うげっとか言ってて少々気が晴れる。
「あれはさぁ、危険なお荷物持ちなんだわ。お掃除しないと使い物にならないらしいよ?」
パサっと写真が膝に落ちる。拾い上げれば、隠し撮りのショットだ。大陸に良くいるガタイの良い肌の浅黒い黒いサングラスの男と赤いドレスの女性。それにタブレットへ送られて来た情報。
「あー俺、明日7時までに帰らないと同居人が泣く羽目になるんですけど。その後じゃダメですかね?」
「マンションごと爆破されても知んねえよ?」
流暢なこの国の言葉でシェンエンが言う。どっかの店の駐車場で落とされるように降ろされ、シェンエンに車のキーを貰った。じゃあなとエンジン吹かして去る黒塗りエンペラーの尻を見送って、用意された車に乗り込む。キュッキュッと鳴るのが邪魔くさい。小型のポルシェ黒。そりゃ加速必要だが目立ちたくはない。しかもヤッた後、自宅で風呂入れば良いかとシャワーも浴びていない。妙に自分の匂いが気になる不快な気持ちのまま、しかも服装も普段着、防弾服も仕込んでいない。相棒は助手席下にある。馴染みのモノだ。っていうか暗殺とか、時間を掛けて準備して機会を狙うものじゃないのか? SPうようよ侍らせた他国の組織関連の女だろ? 要はニアを飼っていた女だ。背を鞭で打ってタバコの火を内腿で消して、外国のでかい男のナニを準備なく尻に突っ込んだ女。あぁ、もしかしたらお道具で虐めていたとか? 想像だけでも怒りが湧く。っつうか、ニアはお仕事仲間なのか? あの従順さとプルプル震えていたのに? ありえない。そうなら帰ったらお仕置きだな。嘘はいけない。なにせ飼い主なのだからと、妙なハイテンションでポルシェを走らせる。暗殺も志津木の大切なお仕事のひとつだ。
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