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57 共謀
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入口のドアが開かないとなれば、反対側の窓しかないと見当を付けて走る。この部屋は何階にあったかな? と考えた。のんきな思考は現実逃避かもしれない。背中でヴォグが迫るのを感じながら、ベランダに通じる窓へほぼ体当たりでぶつかったら窓枠が歪んで倒れた。
二枚戸の中央に飛び込んだから弱い部分だったのかもしれない。窓に入っていた磨りガラスが外れて落ちる。けたたましい音が響いて、そこに腕から落ちる。痛みは感じない。とにかく逃げる。それだけの思いでベランダの柵を越える。
超えて三階だった事を思い出す。落ちながら地面が近づくのを見ていられなくて目を閉じた。獣人だったら素晴らしい身体能力で着地するんだろう。いつか見た虎獣人の逃走映像を思い出した。あれは格好良かった。まるで映画のワンシーンのように思い出に残っている。
異常に長く感じる落下速度に身を固くしていたが、思い描いていた衝撃はなく、なぜか横へ移動している。しがみついた先の布の手触りと、がっちりホールドされた体の拘束具合からハーツの腕の中を思ったが、ハーツのものとは違うと感覚で分かる。
目を開ければハーツではない獣人の横顔がある。片腕に紘伊を乗せて走るという芸当は獣人にしかできないだろう。彼は誰なのか分からないけど、助けられているのは事実なので、ひとまずじゃまにならないように荷物に徹する。
紘伊を片腕に乗せながら、柵に飛び乗り、ベランダを走り、屋根に乗って棟を越え、中庭から表へ走りながら、止めようと来る人化した兵を武器もなく避けてすり抜けて行く様は、いつかの虎獣人を思い出し、抱えられた荷物にすぎない紘伊だけど、特等席で見るアクション劇に胸を躍らせた。
とうとう表門の石壁を登り、反対側へ到達する。かなりの距離を走り抜けたはずなのに、彼は息一つ乱さずに用意していたのだろう馬に飛び乗り、駆けさせた。
「ありがとうございます」
「まだ早いな」
彼の胸前にいる紘伊には見えていなかったが、狼が後を追って来ている。さらには上空に竜の姿も見えた。
「なぜ竜が?」
食らいついて来る狼を蹴り落とし、上空から追って来る竜を森に入る事でやり過ごす。
「竜と狼が共謀している」
「なんでそんな……」
獅子と熊と狼の領地が結束して竜族の長を糾弾する。そういう作戦下にあるのでは? 彼の種族はなんだろう? 紘伊を助けに来たのだから、当然獅子族だと思ったけど、獅子族は髪を長くしてたてがみとつながっている者が多い。たてがみが自慢であるようで、特別な手入れをして美しく保っている。でもこの獣人にはたてがみがない。白いシャツと黒いパンツ、膝下のブーツで毛色は胸元から覗く茶色い毛しか見えない。なんとなく猫科の種族ではないかと、動きのしなやかさと敏捷さで思うのだけど。
森の中の細い道を駆けて行く。彼はこの地を良く知っているようだ。駆けさせる手綱に迷いがない。森を抜ける頃には狼の追っ手はなく、抜けた先には竜と地上の獣人との争いの情景が待っていた。
二枚戸の中央に飛び込んだから弱い部分だったのかもしれない。窓に入っていた磨りガラスが外れて落ちる。けたたましい音が響いて、そこに腕から落ちる。痛みは感じない。とにかく逃げる。それだけの思いでベランダの柵を越える。
超えて三階だった事を思い出す。落ちながら地面が近づくのを見ていられなくて目を閉じた。獣人だったら素晴らしい身体能力で着地するんだろう。いつか見た虎獣人の逃走映像を思い出した。あれは格好良かった。まるで映画のワンシーンのように思い出に残っている。
異常に長く感じる落下速度に身を固くしていたが、思い描いていた衝撃はなく、なぜか横へ移動している。しがみついた先の布の手触りと、がっちりホールドされた体の拘束具合からハーツの腕の中を思ったが、ハーツのものとは違うと感覚で分かる。
目を開ければハーツではない獣人の横顔がある。片腕に紘伊を乗せて走るという芸当は獣人にしかできないだろう。彼は誰なのか分からないけど、助けられているのは事実なので、ひとまずじゃまにならないように荷物に徹する。
紘伊を片腕に乗せながら、柵に飛び乗り、ベランダを走り、屋根に乗って棟を越え、中庭から表へ走りながら、止めようと来る人化した兵を武器もなく避けてすり抜けて行く様は、いつかの虎獣人を思い出し、抱えられた荷物にすぎない紘伊だけど、特等席で見るアクション劇に胸を躍らせた。
とうとう表門の石壁を登り、反対側へ到達する。かなりの距離を走り抜けたはずなのに、彼は息一つ乱さずに用意していたのだろう馬に飛び乗り、駆けさせた。
「ありがとうございます」
「まだ早いな」
彼の胸前にいる紘伊には見えていなかったが、狼が後を追って来ている。さらには上空に竜の姿も見えた。
「なぜ竜が?」
食らいついて来る狼を蹴り落とし、上空から追って来る竜を森に入る事でやり過ごす。
「竜と狼が共謀している」
「なんでそんな……」
獅子と熊と狼の領地が結束して竜族の長を糾弾する。そういう作戦下にあるのでは? 彼の種族はなんだろう? 紘伊を助けに来たのだから、当然獅子族だと思ったけど、獅子族は髪を長くしてたてがみとつながっている者が多い。たてがみが自慢であるようで、特別な手入れをして美しく保っている。でもこの獣人にはたてがみがない。白いシャツと黒いパンツ、膝下のブーツで毛色は胸元から覗く茶色い毛しか見えない。なんとなく猫科の種族ではないかと、動きのしなやかさと敏捷さで思うのだけど。
森の中の細い道を駆けて行く。彼はこの地を良く知っているようだ。駆けさせる手綱に迷いがない。森を抜ける頃には狼の追っ手はなく、抜けた先には竜と地上の獣人との争いの情景が待っていた。
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