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52 夜の散歩
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食事は部屋に運ばれて来るし、着替えも用意して貰えるし、生活として不自由はないけど、従者も護衛も必要以上の会話はしてくれない。紘伊が質問をしても、私には分かりかねます。お答え出来ません。そういう続かない答えを寄越して来る。我慢は2日までだった。ハーツの到着さえ教えて貰えないのはおかしすぎる。
紘伊は従者に領主と会えるようにお願いしたが,領主は忙しいと断られた。
2日目の夜、紘伊は部屋を抜け出し、外に出た。
領主城は高い壁に囲われていて、壁の上が見張り台になっている。夜間も交代で見張りが立ち、灯を持った兵が城内や庭を警備している。
兵もみな人化している。紘伊が見た狼族は領主ひとりで、各領ごとに様々な取り決めがあるのだと思う。
城は広くて廊下も長い。紘伊は二階の部屋を使っていたから、廊下の先の階段を降りて、長く続く廊下へ足を向けた。四角く取り囲む城壁の上を灯りが動いている。廊下の窓から見える庭にも幾つかの灯りが動いている。
廊下の先にあったドアを慎重に開け、その部屋の大きな窓から庭に出た。目の前には綺麗に作り込まれた公園のような場所が広がっている。
中央に白いガゼボがあって、その中央に八角形の池がある。池には薄い灯りが灯されていて、ガゼボの四つのアーチ型の入り口の上部に薔薇型のランプが設られている。
その灯りに照らされ、優雅な態度でくつろぐ人影がある。ボソボソとした声も聞こえるが、獣人語なのだろう。紘伊には分かる単語がひとつもない。
足音で紘伊の存在はバレていると思う。相手は獣人だ。紘伊の常識とは違う。
ぼんやりした灯りの向こうでも、くつろぐ姿の美しさが分かる。狼族領の季節は日本の初夏に近い。ついこの前まで熊族領の豪雪の冷たさに包まれていたのに、ここでは薄手のシャツ一枚で過ごせる。
「ヒロイ、おいで」
甘い声音で呼ばれる。名前を呼び捨てられる相手としたらハーツしか思いつかないが、声が全然違った。それでも呼ばれたら行くしかない。紘伊を知っている相手なのだから。
近づいて行くとガゼボ内にいる3名が紘伊の方へ視線を向けている。顔は北欧っぽい美しさがあるが、銀髪の頭部に狼の耳があり、尾っぽがふさふさと揺れている。残念ながらハーツみたいな胸に獣毛はない。
「ヒロイは本当にハーツェンド様の婚約者なの?」
ガゼボに踏み込む事が出来ずに立ち止まれば、知らない狼獣人に嘲笑われた。クスクス笑いが続いている。
「それはどういう意味でしょうか」
狼獣人の領の中だから、狼獣人の常識に従う気はあるが、理不尽に呼ばれて来た不本意さが紘伊にはあるから、なぜ笑われなくてはならないのかと腹が立つ。
「どこが良いのか」
「趣味が悪いんじゃない?」
領主も美しかったが、彼らも美しい。細くて足が長くてスタイルが良い。見目も冷たく感じるくらいに整っているのに、その表情が悪意に歪められていて醜い。紘伊にしてみれば、初対面の他人を嘲笑える彼らの方が嫌われそうだと思う。ハーツの趣味が悪くて良かったと思わずにはいられなかった。
紘伊は従者に領主と会えるようにお願いしたが,領主は忙しいと断られた。
2日目の夜、紘伊は部屋を抜け出し、外に出た。
領主城は高い壁に囲われていて、壁の上が見張り台になっている。夜間も交代で見張りが立ち、灯を持った兵が城内や庭を警備している。
兵もみな人化している。紘伊が見た狼族は領主ひとりで、各領ごとに様々な取り決めがあるのだと思う。
城は広くて廊下も長い。紘伊は二階の部屋を使っていたから、廊下の先の階段を降りて、長く続く廊下へ足を向けた。四角く取り囲む城壁の上を灯りが動いている。廊下の窓から見える庭にも幾つかの灯りが動いている。
廊下の先にあったドアを慎重に開け、その部屋の大きな窓から庭に出た。目の前には綺麗に作り込まれた公園のような場所が広がっている。
中央に白いガゼボがあって、その中央に八角形の池がある。池には薄い灯りが灯されていて、ガゼボの四つのアーチ型の入り口の上部に薔薇型のランプが設られている。
その灯りに照らされ、優雅な態度でくつろぐ人影がある。ボソボソとした声も聞こえるが、獣人語なのだろう。紘伊には分かる単語がひとつもない。
足音で紘伊の存在はバレていると思う。相手は獣人だ。紘伊の常識とは違う。
ぼんやりした灯りの向こうでも、くつろぐ姿の美しさが分かる。狼族領の季節は日本の初夏に近い。ついこの前まで熊族領の豪雪の冷たさに包まれていたのに、ここでは薄手のシャツ一枚で過ごせる。
「ヒロイ、おいで」
甘い声音で呼ばれる。名前を呼び捨てられる相手としたらハーツしか思いつかないが、声が全然違った。それでも呼ばれたら行くしかない。紘伊を知っている相手なのだから。
近づいて行くとガゼボ内にいる3名が紘伊の方へ視線を向けている。顔は北欧っぽい美しさがあるが、銀髪の頭部に狼の耳があり、尾っぽがふさふさと揺れている。残念ながらハーツみたいな胸に獣毛はない。
「ヒロイは本当にハーツェンド様の婚約者なの?」
ガゼボに踏み込む事が出来ずに立ち止まれば、知らない狼獣人に嘲笑われた。クスクス笑いが続いている。
「それはどういう意味でしょうか」
狼獣人の領の中だから、狼獣人の常識に従う気はあるが、理不尽に呼ばれて来た不本意さが紘伊にはあるから、なぜ笑われなくてはならないのかと腹が立つ。
「どこが良いのか」
「趣味が悪いんじゃない?」
領主も美しかったが、彼らも美しい。細くて足が長くてスタイルが良い。見目も冷たく感じるくらいに整っているのに、その表情が悪意に歪められていて醜い。紘伊にしてみれば、初対面の他人を嘲笑える彼らの方が嫌われそうだと思う。ハーツの趣味が悪くて良かったと思わずにはいられなかった。
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