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51 狼の領主
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狼族の姿はとても美しかった。
熊族に送られて狼族の馬車に乗り換え、狼領に入って領主の城へ連れて来られた。領地に入ってから窓から外を見る事が禁じられた為と案内人が全て人化だったので、最初に見た狼族の姿は領主となった。
白銀の髪と白い肌、光るような白銀の虹彩。紘伊が純日本人の容姿であるなら、領主は北欧の王子様だ。
領主は豪華であるが冷たい雰囲気のある部屋の、奥にあるソファに座していて、長い足を組み、肘掛けに肘を置き、優雅な態度で紘伊を見ている。まるでハイブランドのモデルのようだ。
領主の視線が不意に外され、小さなため息が聞こえる。後ろに立つ従者に何やら耳打ちをして、洗礼された所作でソファから立ち上がり、紘伊に一言もないまま部屋を出て行く。
紘伊は初めて会う狼族の領主に何を言われるか、何をされるか緊張をしていたのに、冷たい視線だけを残し、去って行った姿に拍子抜けした。でも分かる事はある。気に入られた筈はなく、嫌われたというより興味もないのだと思える。
「お部屋にご案内致します」
領主に耳打ちをされていた従者が紘伊を伴い、案内に立つ。領主以外は皆人化している。こうなって来ると熊族はアットホームな雰囲気だったのだと思う。少なくとも紘伊を無視はしなかったし、過ごしやすい家を用意してくれて、ハーツと過ごさせてくれる気やすさがあった。
人化した従者だけど足が長く細身でスタイルが良い。着ている従者服は黒いスーツで、白手袋が印象に残る。髪は皆白銀か黒か双方が混じり合った感じになっている。単に銀毛といっても濃淡や艶の加減によって細かく、同じ色はないのだなと思った。
「こちらのお部屋をお使い下さい。専用の従者を二人、警護の者を二人お付けします。ご用意があれば彼らにお申し付け下さい」
部屋の廊下に4人が整列して視線を下げている。二人は案内の従者と同じ黒のスーツを纏っていて、二人は黒の軍服っぽい服を纏っている。腰に細いサーベルが下げられていて、やはり白い手袋を付けていた。
「ありがとうございます」
部屋の中に踏み入れば、奥に天蓋付きのベッドがあり、その横にソファセットがある。貴族のお屋敷の一室のように、豪華な金入りのキラキラした壁紙に金の窓枠、天井の絵が真紅の薔薇であるのも落ち着かない。
「御用はベルでお知らせ下さい。屋敷内はお好きになさって結構ですが、必ず従者を伴うようお願い致します」
「領主は何を言っていたのですか?」
何の言葉もなく、ただ部屋に押しやられるのも関わりを持ちたくないと思われたのかもしれないが、だったら呼びつけるなとも思う。
「お話はハーツェンド様がおいでになってからとの事ですので、それまでこちらでお過ごしになり、お待ち下さい」
「俺は何の為に呼ばれたんだ?」
「私どもでは何も……」
そう言って視線を下げた従者は一歩下がり、ドアを閉めた。従者の後ろにいた4人の視線が冷たかった。人化しているからではなく、敵視しているか、差別している。そう感じさせる強い意志が見えた。
狼族はとても美しい容姿をしているが、気位が高く、他種族を見下している。そういう印象を受けた。
熊族に送られて狼族の馬車に乗り換え、狼領に入って領主の城へ連れて来られた。領地に入ってから窓から外を見る事が禁じられた為と案内人が全て人化だったので、最初に見た狼族の姿は領主となった。
白銀の髪と白い肌、光るような白銀の虹彩。紘伊が純日本人の容姿であるなら、領主は北欧の王子様だ。
領主は豪華であるが冷たい雰囲気のある部屋の、奥にあるソファに座していて、長い足を組み、肘掛けに肘を置き、優雅な態度で紘伊を見ている。まるでハイブランドのモデルのようだ。
領主の視線が不意に外され、小さなため息が聞こえる。後ろに立つ従者に何やら耳打ちをして、洗礼された所作でソファから立ち上がり、紘伊に一言もないまま部屋を出て行く。
紘伊は初めて会う狼族の領主に何を言われるか、何をされるか緊張をしていたのに、冷たい視線だけを残し、去って行った姿に拍子抜けした。でも分かる事はある。気に入られた筈はなく、嫌われたというより興味もないのだと思える。
「お部屋にご案内致します」
領主に耳打ちをされていた従者が紘伊を伴い、案内に立つ。領主以外は皆人化している。こうなって来ると熊族はアットホームな雰囲気だったのだと思う。少なくとも紘伊を無視はしなかったし、過ごしやすい家を用意してくれて、ハーツと過ごさせてくれる気やすさがあった。
人化した従者だけど足が長く細身でスタイルが良い。着ている従者服は黒いスーツで、白手袋が印象に残る。髪は皆白銀か黒か双方が混じり合った感じになっている。単に銀毛といっても濃淡や艶の加減によって細かく、同じ色はないのだなと思った。
「こちらのお部屋をお使い下さい。専用の従者を二人、警護の者を二人お付けします。ご用意があれば彼らにお申し付け下さい」
部屋の廊下に4人が整列して視線を下げている。二人は案内の従者と同じ黒のスーツを纏っていて、二人は黒の軍服っぽい服を纏っている。腰に細いサーベルが下げられていて、やはり白い手袋を付けていた。
「ありがとうございます」
部屋の中に踏み入れば、奥に天蓋付きのベッドがあり、その横にソファセットがある。貴族のお屋敷の一室のように、豪華な金入りのキラキラした壁紙に金の窓枠、天井の絵が真紅の薔薇であるのも落ち着かない。
「御用はベルでお知らせ下さい。屋敷内はお好きになさって結構ですが、必ず従者を伴うようお願い致します」
「領主は何を言っていたのですか?」
何の言葉もなく、ただ部屋に押しやられるのも関わりを持ちたくないと思われたのかもしれないが、だったら呼びつけるなとも思う。
「お話はハーツェンド様がおいでになってからとの事ですので、それまでこちらでお過ごしになり、お待ち下さい」
「俺は何の為に呼ばれたんだ?」
「私どもでは何も……」
そう言って視線を下げた従者は一歩下がり、ドアを閉めた。従者の後ろにいた4人の視線が冷たかった。人化しているからではなく、敵視しているか、差別している。そう感じさせる強い意志が見えた。
狼族はとても美しい容姿をしているが、気位が高く、他種族を見下している。そういう印象を受けた。
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