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37 ケーキ
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昼過ぎに起きてハーツと一緒に食事を取ると、ハーツは族長に呼び出されて部屋を出て行った。その間、トオルが紘伊の部屋に来た。ハーツとは会わない様にタイミングをずらしている。
「ドアの向こうなら大丈夫なのか?」
「うん、見えなければ良い」
扉の向こうにヴィルがいる。ヴィルもまたトオルが来る時には扉から離れていた。
「それよりもヒロイの相手を見た。離れた場所からだったけど、すごく大きい方だった」
「あーうん、そうだね」
なんだろう。すごく恥ずかしい。知り合いに恋人を見られて、それが男だと言う事を咎められない場所にいるんだと感じてしまった。まだ向こうの常識から逃れられていない気持ちがある。
「マサキの事は話せた?」
「話せないよ。朝方まで飲んでたんだろ? 会ってもないよ」
「そうなんだ」
ちょっと嫌な予感がする。まさか子が出来たからもう良いと思っていないか? 人の役割が子を産む為だけでは? という疑問がふつふつと湧いてくる。
「大丈夫だ、気にしなくて良いよ。こうやってヒロイと話すのを許して貰えただけで十分だ。それよりも見てこれ、ケーキを貰ったんだ、食べよう?」
見れば日本風のケーキを持って来ている。ソファの椅子に座らせて、外のヴィルに頼んで体に良い飲み物を運んで貰った。もちろん廊下で受け取る。
「ここの厨房で人が働いるらしいよ。ケーキがあってびっくりした」
ショートケーキにモンブランにチーズケーキ。紘伊はチーズケーキを選んだ。
「前に泊まっていたホテルには日本語の本の新刊があったから、日本の食材もどこからか輸入できるんだろうね。っていうかトオル、ここに日本人が働いているのなら、住む場所をこの辺りにして貰ったら? 棲家って洞窟なんだろ? 人には危ない場所じゃない?」
「うん、そうだよね。まだ自覚があんまりなくて。お腹が大きくなったら竜に運んで貰うのもダメな気がするよね」
「マサキじゃなくても、別の友人を作るとかどうかな? そうしたら気分も変わるんじゃんない?」
「うん、良いね」
トオルの手からフォークが落ちる。ゲホゲホ咳き込んで、口から血が流れた。
「トオル? 嘘だろ? ヴィル! 医者を呼んで!」
扉に向かって叫んで、ついでに貰っていたボタンを押す。ドアが開いてヴィルが部屋に踏み込んで、状況を見て駆けだして行く。すぐに医者が駆け込んで来た。
「ヒロイ様は大丈夫なのですか?」
「うん、食べる前だった」
これってマズい状況だよね? どう見ても毒だ。一番に疑われるのは紘伊だ。ヴィルが支えてくれているけど震えて怖さに飲み込まれそうだ。
「伴侶様をお連れしろ」
咳き込みながら血を吐いているトオルが竜族の騎士に抱き上げられて運ばれて行く。医師は吐いた物で毒の成分を調べながら、トオルの容態を見て付き添って行く。竜族の兵士が紘伊の前に立つ。獣人語が飛び交っている。怒鳴る声に怯える。ヴィルが抱える様に守っていてくれる。怖い。犯人に仕立て上げられる未来が脳裏を掠める。
「ドアの向こうなら大丈夫なのか?」
「うん、見えなければ良い」
扉の向こうにヴィルがいる。ヴィルもまたトオルが来る時には扉から離れていた。
「それよりもヒロイの相手を見た。離れた場所からだったけど、すごく大きい方だった」
「あーうん、そうだね」
なんだろう。すごく恥ずかしい。知り合いに恋人を見られて、それが男だと言う事を咎められない場所にいるんだと感じてしまった。まだ向こうの常識から逃れられていない気持ちがある。
「マサキの事は話せた?」
「話せないよ。朝方まで飲んでたんだろ? 会ってもないよ」
「そうなんだ」
ちょっと嫌な予感がする。まさか子が出来たからもう良いと思っていないか? 人の役割が子を産む為だけでは? という疑問がふつふつと湧いてくる。
「大丈夫だ、気にしなくて良いよ。こうやってヒロイと話すのを許して貰えただけで十分だ。それよりも見てこれ、ケーキを貰ったんだ、食べよう?」
見れば日本風のケーキを持って来ている。ソファの椅子に座らせて、外のヴィルに頼んで体に良い飲み物を運んで貰った。もちろん廊下で受け取る。
「ここの厨房で人が働いるらしいよ。ケーキがあってびっくりした」
ショートケーキにモンブランにチーズケーキ。紘伊はチーズケーキを選んだ。
「前に泊まっていたホテルには日本語の本の新刊があったから、日本の食材もどこからか輸入できるんだろうね。っていうかトオル、ここに日本人が働いているのなら、住む場所をこの辺りにして貰ったら? 棲家って洞窟なんだろ? 人には危ない場所じゃない?」
「うん、そうだよね。まだ自覚があんまりなくて。お腹が大きくなったら竜に運んで貰うのもダメな気がするよね」
「マサキじゃなくても、別の友人を作るとかどうかな? そうしたら気分も変わるんじゃんない?」
「うん、良いね」
トオルの手からフォークが落ちる。ゲホゲホ咳き込んで、口から血が流れた。
「トオル? 嘘だろ? ヴィル! 医者を呼んで!」
扉に向かって叫んで、ついでに貰っていたボタンを押す。ドアが開いてヴィルが部屋に踏み込んで、状況を見て駆けだして行く。すぐに医者が駆け込んで来た。
「ヒロイ様は大丈夫なのですか?」
「うん、食べる前だった」
これってマズい状況だよね? どう見ても毒だ。一番に疑われるのは紘伊だ。ヴィルが支えてくれているけど震えて怖さに飲み込まれそうだ。
「伴侶様をお連れしろ」
咳き込みながら血を吐いているトオルが竜族の騎士に抱き上げられて運ばれて行く。医師は吐いた物で毒の成分を調べながら、トオルの容態を見て付き添って行く。竜族の兵士が紘伊の前に立つ。獣人語が飛び交っている。怒鳴る声に怯える。ヴィルが抱える様に守っていてくれる。怖い。犯人に仕立て上げられる未来が脳裏を掠める。
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