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ヴィルと一緒に部屋に戻って鍵を掛ける。ヴィルは何も聞いて来ずに部屋に送り届けてくれた。
部屋付きのお風呂に入り、ベッドで考え事をしているうちに眠ってしまったらしい。気づいたらハーツの胸に寄り添っていた。本当に恵まれていると思う。
「大好きだ、ハーツ」
小さく告げただけなのに、ハーツは紘伊を抱いてギュッとしてくれた。
「どうした? 人が獣人に怯えるのを見たからか?」
胸の獣毛に顔を埋める。
「なんでかなぁ? 俺って契約も何もしていないのに、怖いとか怯えるとか感じた事もなかった」
そう言うとハーツが笑う。
「だから言っているだろう? ヒロイは特別で珍しいと」
「会った伴侶の子、一緒に施設にいた子だった。お腹に子がいるんだって。なのに塞ぎ込んだ生活をしていたら、お腹の子に悪いと思うんだよ」
そう言うとハーツに肩を掴まれて身を起こさせられた。
「おまえは大丈夫なのか?」
どういう意味かとハーツを見上げる。
「人の男は子を作る機能がないから、子が出来る事に怯える。追々少しずつ伝えて行こうと思っていた。俺の事が嫌になったり——」
「それはない」
ハーツの言葉を遮って言う。それはない。子を産むのは怖いし、すぐに受け入れられるものではないけど、だからと言ってハーツを嫌いになる理由にはならない。
「大好きだから嫌ったりしない。受け入れられる様に努力するよ。時間はくれるんだろ?」
そう言って笑って見せたら、安心したみたいに笑んで抱きしめてくれた。
「ハーツお酒くさい。お風呂入った?」
「入ったが匂うか?」
うんって言ったらなぜか風呂に連れて行かれてしまった。簡単に服を剥ぎ取られて、抱っこされたまま湯船に入れられる。ハーツに抱きついて足を後ろに絡めるスタイルだ。
「そういえば一緒にお風呂に入った事ってないよね」
「おまえが従者を嫌がるからだろう?」
「そうでした」
ふふふって笑いあってキスをする。
「その伴侶に子がいる話は俺以外にするなよ。他族に知れてはマズイかもしれん」
「そうだよね。そんな気はしたけどさ、でもトオルが可哀想だった」
「そんなに落ち込んでいたのか?」
それに頷く。膝の上に乗せられて、背中から抱きしめられる位置に移った。
「族長の棲家って静かで何処にも行けない場所なんだって。怯えるから族長以外に話せる人もいないんだよ。あれじゃあ子どもなんて産めないと思う」
ハーツも一緒に悩んでくれる気配がする。紘伊は本当に恵まれていると思う。
「もう一人、施設で一緒だった子が竜族の誰かの伴侶になってる。その子をトオルの世話係にする——なんて頼むのは怒られる?」
「竜族の領地は広いし、島の生息地もあると聞く。その者がどこへ行ったのか、誰の伴侶かも関係して来るだろうな」
「俺は恵まれてる」
ハーツの手を取って肉球に口付ける。ん? とハーツに聞き返されて、その言い方にさえトキメいている。
「ハーツを愛せて、ハーツに愛されてる」
そう言うと顎を取られて振り向かされる。ハーツの琥珀色の目に見下ろされて、甘く緩む表情に蕩けさせられる。
「よく分かったな、ヒロイ」
想いをぶつけるみたいにキスをして、体勢を変えて抱き合うと、求められずにはいられない。苦しいほど愛している。愛さずにはいられない。
部屋付きのお風呂に入り、ベッドで考え事をしているうちに眠ってしまったらしい。気づいたらハーツの胸に寄り添っていた。本当に恵まれていると思う。
「大好きだ、ハーツ」
小さく告げただけなのに、ハーツは紘伊を抱いてギュッとしてくれた。
「どうした? 人が獣人に怯えるのを見たからか?」
胸の獣毛に顔を埋める。
「なんでかなぁ? 俺って契約も何もしていないのに、怖いとか怯えるとか感じた事もなかった」
そう言うとハーツが笑う。
「だから言っているだろう? ヒロイは特別で珍しいと」
「会った伴侶の子、一緒に施設にいた子だった。お腹に子がいるんだって。なのに塞ぎ込んだ生活をしていたら、お腹の子に悪いと思うんだよ」
そう言うとハーツに肩を掴まれて身を起こさせられた。
「おまえは大丈夫なのか?」
どういう意味かとハーツを見上げる。
「人の男は子を作る機能がないから、子が出来る事に怯える。追々少しずつ伝えて行こうと思っていた。俺の事が嫌になったり——」
「それはない」
ハーツの言葉を遮って言う。それはない。子を産むのは怖いし、すぐに受け入れられるものではないけど、だからと言ってハーツを嫌いになる理由にはならない。
「大好きだから嫌ったりしない。受け入れられる様に努力するよ。時間はくれるんだろ?」
そう言って笑って見せたら、安心したみたいに笑んで抱きしめてくれた。
「ハーツお酒くさい。お風呂入った?」
「入ったが匂うか?」
うんって言ったらなぜか風呂に連れて行かれてしまった。簡単に服を剥ぎ取られて、抱っこされたまま湯船に入れられる。ハーツに抱きついて足を後ろに絡めるスタイルだ。
「そういえば一緒にお風呂に入った事ってないよね」
「おまえが従者を嫌がるからだろう?」
「そうでした」
ふふふって笑いあってキスをする。
「その伴侶に子がいる話は俺以外にするなよ。他族に知れてはマズイかもしれん」
「そうだよね。そんな気はしたけどさ、でもトオルが可哀想だった」
「そんなに落ち込んでいたのか?」
それに頷く。膝の上に乗せられて、背中から抱きしめられる位置に移った。
「族長の棲家って静かで何処にも行けない場所なんだって。怯えるから族長以外に話せる人もいないんだよ。あれじゃあ子どもなんて産めないと思う」
ハーツも一緒に悩んでくれる気配がする。紘伊は本当に恵まれていると思う。
「もう一人、施設で一緒だった子が竜族の誰かの伴侶になってる。その子をトオルの世話係にする——なんて頼むのは怒られる?」
「竜族の領地は広いし、島の生息地もあると聞く。その者がどこへ行ったのか、誰の伴侶かも関係して来るだろうな」
「俺は恵まれてる」
ハーツの手を取って肉球に口付ける。ん? とハーツに聞き返されて、その言い方にさえトキメいている。
「ハーツを愛せて、ハーツに愛されてる」
そう言うと顎を取られて振り向かされる。ハーツの琥珀色の目に見下ろされて、甘く緩む表情に蕩けさせられる。
「よく分かったな、ヒロイ」
想いをぶつけるみたいにキスをして、体勢を変えて抱き合うと、求められずにはいられない。苦しいほど愛している。愛さずにはいられない。
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