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24 領地

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 久しぶりにハーツと一緒に過ごした。
 ふたりでプレゼントを開けて行く。お菓子とかお茶のセットとか、可愛いハンカチとか、ハンドクリームや香水もある。こういうのも必要なんだな~と、身だしなみから遠い暮らしをしていた紘伊は少々反省した。

「そろそろ領地に向かおうと思うが、大丈夫か?」

「大丈夫というと、どんなことが?」

 だいたい領地がどこにあるのかも知らない。獣人国の地図も見た事がない。

「領地は乾いているからクリームは必須かもな」

 良い匂いのするクリームを見ながらハーツが言う。

「赤土が風に舞うから目を開けていられない場所もある。体が砂まみれになる。空気が暑くて重い。オアシスがある。南国の植物が育つ。肉が多い。香辛料が強い。弱いヒロイは腹を壊すかもな」

「酷いことしか言わないな」

 ハーツが楽しそうだ。それを見ているだけで嬉しくなる。

「では良い話にしようか」

 贈り物を開け終わると、ハーツが抱き寄せて来て膝に乗せられた。膝の間にすっぽり入る身長差だ。人としては普通体型なのに小柄に見えてしまう。

「領地に塾が建設されているらしい」

 手にハンドクリームが塗られて、持ち上げてクンクンされている。くすぐったい。

「そこに赴任して来る先生の名をヒロイというらしい」

「勝手に、なんで?」

 手を奪い返そうと思ったら、ハーツの手が離れなかったから、肉球を鼻先に持って来てクンクンする。肉球用のクリームがあるらしい。今度塗らせてもらおう。

「子ども達がヒロイ先生の教え方がわかりやすいから教えて欲しいとねだったらしいよ」

「まだ別れたの昨日の話だよ?」

 肉球を舐めたらぐいっと爪が出てきた。先をヤスリで削っているらしいけど、けっこう鋭い。爪も舐めてみる。今度削らせてもらおう。

「俺の友人達は身分が高いからな、その子どもが皆んなワガママを言ったら、塾の校舎くらい3日で建つ。残念だったなヒロイ、君はこの国でも先生と呼ばれる事になる」

 つむじにキスをされた。見上げて体勢を変える。膝に乗って向かい合わせる。胸の所の匂いが一番好きだ。

「施設で俺の経歴を見たんだっけ」

「まぁそうだな」

 その言い方だとまだ何かあると思ったけど聞かない。ハーツは秘密主義だ。聞いたら怖い答えが返って来そうで警戒している。思っていたよりは好きでいてくれるみたいだし、ハーツの周りの獣人が家族で幸せなんだろうと思うから、少しだけ安心した。とりあえず家畜のイメージは無くなった。それだけでずいぶん違う。他の誰かにハーツの子ができるとか、それはまた別のお話だから、今は考えないでおく。

「ところでヒロイ、腹は痛むか?」

 服を捲られる。腹や脇腹が青あざになっている。目の縁も青くなっているし、口端と中が切れている。

「痛いけど、いいよ?」

 見上げるとキスされる。軽く舌先で舐められ、口を開ける。痛くても良い。求めて貰えるうちに愛されたい。
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