獣人カフェで捕まりました

サクラギ

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1 獣人カフェ

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 この店に通うようになってひと月が経った。

「ダメですよ? 擦り付けないでください」

 ふわふわした首筋で深呼吸しながら、抱き込むのにちょうど良い体に腕を回して、腰を押し付けている。

「理性で耐えているんだ、これくらいは許してくれよ」

 毛布の柔軟剤の匂いが移っているのか、ボディソープの香りなのか。それに混じり合った獣臭が興味をそそる。

「お昼寝タイムに股間を熱くしてるなんて恥ずかしいですよ?」

「当てるだけで我慢しているだろ? は~胸揉みたい」

「もう! ルール違反で言いつけるよ?」

「ごめんごめん許して、大人しくするから」

 後ろから抱き込んだ腕を緩めて腕枕にする。くるんと体勢を変えて寄り添って来る姿がとても可愛い。

「あーあと10分で時間かぁ。仕事に戻るのも億劫だよ~どう? 俺に身請けされない?」

「されません。毎回くどいですよ? あくまでこれはバイトですから」

 少し垂れ目の色素の薄い茶色い瞳が見上げて来る。ピンクで艶のある唇が不満げにすぼめられるとキスをねだられているようだ。

 枕元のアラームが5分前を知らせる。

「お時間ですよ? 白石さま」

 カケラの名残もなく起き上がった彼はハンガーからジャケットを取り、着せ掛けてくれる。しぶしぶ袖を通しながら、頭ひとつ分低い彼を見る。そうすると視線に気づいた彼が営業スマイルを貼り付けた。

「ご利用ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 あと数分の残り時間を惜しむ気持ちなど無視されて、ドアを開けられ送り出される。夢の時間の終わりは早い。30分5000円の夢の添い寝空間に住まう可愛らしい獣人。

「また来るよ、ありがとうね」

 頬を撫でてキスしたいけどそれも叶わない時間とルールに縛られた部屋。おさわりは手首から先のみという。

 手の甲のすべすべした毛並みを引き寄せキスをして、喜んではくれないだろうけど許してくれるかな? と視線を上げたら、営業スマイルに引き攣りが透けて見えた。

「お気をつけてお帰りください」

 背中で閉まるドアが大きな音をたてる。嫌われたかな? と思いながら階段を下って行くとショーケースの部屋に出る。左右に展開されている部屋はガラス張りで、中にはいろんな種族の獣人がいて、くつろいだり食事をしたり会話をしたりしている。どの子も可愛らしい容姿をしていて微笑ましい光景だ。部屋内は防音、マジックミラーとなっていて、お互いの声は聞こえないし、獣人から客は見えないらしい。

 部屋の前はカフェスペースになっていて、獣人を見て楽しむ者がお茶をしている。

 入店料1000円+飲食代。上階は添い寝ルーム30分5000円とお話の出来る個室スペース30分2000円だ。

 入口の会計で指名料込みの6500円を払い、店を出る。繁華街の裏通りにある店の出口は地下にあり、薄暗く案内や店名さえ書いていない。この店は常連専用一見お断りの秘密の店だ。

 薄暗い階段を上がって太陽の下に出ると目がズキズキと痛む。

 束の間の夢と現実の狭間で大きくため息を吐いた。
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