普通の男子高校生ですが異世界転生したらイケメンに口説かれてますが誰を選べば良いですか?

サクラギ

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本編

23 ブラッドの家

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 薔薇の香りに包まれて、目を覚ました。
 ブラッドがいる。俺を大事そうに抱えて、一緒に眠っている。

「目が覚めましたか」

 身じろぎをすると、ブラッドが目覚めて、体から手を放してくれた。薔薇の香りはブラッドからしているのか、部屋の香りなのか、わからない。もう自分も薔薇の香りなのかもしれない。

「王城から戻って1日半眠っていましたよ。体は大丈夫ですか?」

 動こうとすると腹と背中が痛い。視線を体へ向けると、裸で布団を掛け、ブラッドと寝ていたことに気づく。恥ずかしくて身を丸めようとしたら、痛みが強くなる。腹に派手な色の痣が出来ている。背中にもできていることが想像できた。
 ブラッドはローブを羽織ると、横にある机から水を取った。

「飲んでください」

 水を口移しで飲まされた。口移しはブラッドにとって当たり前なのだろう。自然な行動で、普通に受け入れてしまってから、羞恥が押し寄せる。ブラッドの見た目が綺麗すぎるのがいけない。思わず見とれてしまうと、ぼーっとしている間にいろいろされてしまう。

「軽い食事を用意しています。食べられますか?」

 そう言われると、お腹がすいていることに気づいた。頷くとブラッドの手が腰に添えられ、体を起こしてくれた。へッドボードに背を預ける形で、背中にクッションを入れてくれる。それからスプーンで液体の何かをすくって口に運ばれ、口を開けると、中に流し込んでくれた。野菜とパンを煮込んだようなもの。胃に優しいようにとろとろになっている。ブラッドに口に運んでもらって、お皿にあるぶんを食べ終えると、口に薬を入れられた。また口移しで水を飲まされた。

 これってキスと何が違うんだろうと思うと、いけないことをしているようで、怖くなる。

「痛み止めです。また眠くなるかもしれません、横になりますか?」

 頷けば、背中からクッションを外し、背中を支えてくれた。

「ここはどこ?」

「フィンレイ自治領の私の家です」

 ブラッドの言葉を頭の中で繰り返して、驚く。それはとても遠い場所なのでは。
 そう思った俺の気持ちを読んだのか、ブラッドは寝ころんだ俺の体に布団を掛けながら、うっすら笑った。

「王城から転移魔法陣で移動しました」

 ああ、それじゃあ一瞬だ。と思って異世界だなあと思う。召喚ができるのだ、転移など簡単なのだろう。

「獣人の王は神に近い存在ですから、いろいろ不思議なことができるのですが、秘密にされていますので、シンも秘密にしてください」

 シッと口に指を当てるブラッドを見て、懐かしいと思ってしまった。

「食器を片付けて来ますので、ゆっくり休んでください」

 ブラッドは食器を持って部屋を出て行った。相変わらず従者も侍女もいない。広い部屋にひとりきりになると、寂しいと思ってしまう。

 何もかも忘れて、ブラッドとふたりでいれば、そのうちそれが当たり前になって、何も悩まなくて済むのだと思う。それでもう良いのだと思える。俺は最低だ。

 そうして思い至る。ここはフィンレイ自治領のあの家だ。ということは逃げ出せば、研究所の裏山へ出られる。アイザックのいる研究所の近くだ。そう思い、思いを打ち消す。そんなことをしたら、今度こそ王に殺される。

 シーツを体に巻き付け、ベッドを降りる。以前と同じように、部屋を出る。玄関のドアを開ける。すんなりと開き、外の世界が目前に広がる。でも一歩が踏み出せない。……踏み出せず、ドアを閉め、ベッドに戻った。

 ドアに鍵がかかっていたら、逃げていたかもしれない。でも開いていた。ブラッドに俺を閉じ込める意思はない。好きにしていいと言われ、言われると好きにできない矛盾。泣けてきて、シーツを抱えて、嗚咽を隠した。

「大丈夫ですか?」

 ブラッドが帰って来て、ベッドに座り、俺の髪を撫でた。

「……辛い想いをさせてしまってすみません」

 ブラッドが謝って来る。謝るくらいなら離してくれたら良いと思ったら怒りが湧いた。

「どうしてここに連れて来た? ここは一度、逃げた場所だろ? 逃げたら、その先はアイザックのところだ」

 名前を出してしまい、しまったと思ってブラッドを見る。ブラッドは驚いた顔をして、俺を見て、悲しそうに笑った。

「王の行為を止めることができず、シンを傷つけてしまいました。王はああ言っていましたが、シンが従うことはないのですよ? 王のことは私が今度こそ止めますから心配しないでください。どうぞシンの望み通りに行動してください」

 ブラッドの言葉に喉が詰まる。やって来た自由にどう動けば良いのかわからない。自分がどうしたいのか、わからない。
 俺が動かなかったのを見たブラッドが、安堵の息を吐く。それを見て胸が痛む。ブラッドが俺を想っていてくれるのは本当のことなんだろう。ただ想いが強すぎて乱暴な行為につながる。馬車での行為はそういうことなのだろうと思えた。

「痛みが癒えるまでゆっくり休んでください。そうでなければ心配でなりませんから」

 ブラッドが言い訳を用意してくれる。俺は頷いてベッドに横になった。ブラッドが布団を掛けてくれる。ブラッドに背を向けて、体を丸めた。
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