27 / 49
【2】軍生活
7・黒い兵服
しおりを挟む
「おまえなあ、なんでその服なんだよ!」
次の日、炎竜軍を除隊させられたユーリは、嬉しそうにレティウスのおさがりを着ている。
形は第一軍の兵服とかわらない。銀竜軍は魔術軍で黒が基本色となる。だから兵服も黒。剣帯もあり、フックには魔術具や薬草を入れる革袋が付いている。それもレティウスからのおさがりで、レティウスを示す銀の双羽の紋が刻まれていて、特別なものを貰ったようで、ユーリは嬉しくて仕方がなかった。
「除隊させられたので、着ても良いのかと……」
まだ第一軍の宿舎内である。周りは緑一色だ。中に黒い兵服のユーリがいれば、おのずと視線を誘うのだが、ユーリはもうなんとも思っていない。レティウスの気持ちを着ている気がしているのだ、最強である。
「わかった。もう俺の身に余る。……ついて来い」
ギルバートは近くにいた副官に今後の予定を伝え、ユーリを伴って軍用の馬車に乗り、城壁内の奥へと進んで行った。御者はギルバート、他の者は排除したらしい。馬車の中はユーリひとり。軍施設内は慌ただしく、早朝訓練や走る兵をたくさんみたが、軍施設を抜けると静かな風景が続いていた。ときおり、城で働く者の姿があるが、ゆったりとおしとやかに歩いている。まるで違う風景に興味を惹かれていたのだが、馬車はそういった城の全面よりも裏へと進んで行った。
いちおう、ユーリは元王族である。城内に立ち入りを禁じられた場所は、王専用区くらいである。それも許可を得れば出入り出来る身分だった。ただユーリはまわりのことに興味を持たなかったから、行けても行かなかった場所がたくさんある。
いま、馬車が入り込んだ場所も、ユーリが興味を持たなかった場所のひとつだった。
厳重な警戒門、それは目に見えてあるものではなく、魔術を使用した許可制限区域だ。視界にも制限がされているようで、制限区域を越えたとたん、白く大きな建物が見える。
四角い建物を重ねて連ねたような姿の建物は、山肌の中に後部をめり込ませている。全容がわからない建物であり、制限区域外から見れば、そこはただの低い山だった。
白い建物の前方中央、上部半円の扉の前で馬車を止めたギルバートは、馬車の扉を開け、ユーリを下ろすと、神妙な顔つきでユーリの前に立つ。
「おまえが元王子だからできることだ、着いて来い」
ユーリには何となくここがどんな施設かわかっていた。身に伝わる警戒の念と、張り詰めたような空気感が、未知の世界を示しているようで、ユーリは緊張をしている。でも身に着けているレティウスの兵服が、少しだけ守っていてくれるようで、今日着ていて良かったと思う。
半円の扉は、開け放つのではなく、選ばれた者、許された者しか入れない造りらしく、ギルバートに背を支えられ、一緒に扉に吸い込まれる形で中に入った。
「無事に入れたな」
ギルバートはホッとした表情をしている。
「入れない可能性もあったのですか?」
ユーリは不満顔だ。入れなかったらひとりだけ弾かれて、外に残されることになっていたのか。それはちょっと恥ずかしくはないかと思うユーリだ。
「いやあ、一応、許可は取っているし、おまえは元とはいえ王族だし、大丈夫だとはわかっていても、俺は魔術と無縁な存在なんでね。ダメな場合を想定するんだよ、なんとなく」
「……そうですか。疑問なんですが、どうして隊長は入れるのですか? 私が思うに、隊長が一番入ってはいけない存在なのでは?」
一番の疑問をぶつければ、ギルバートは飽きれるように笑う。
「ふつうはそう思うよな。でもさ、俺、これでも竜騎士なんだよね」
「は?」
ありえない言葉を聞いたユーリは、疑うようにギルバートを見た。
次の日、炎竜軍を除隊させられたユーリは、嬉しそうにレティウスのおさがりを着ている。
形は第一軍の兵服とかわらない。銀竜軍は魔術軍で黒が基本色となる。だから兵服も黒。剣帯もあり、フックには魔術具や薬草を入れる革袋が付いている。それもレティウスからのおさがりで、レティウスを示す銀の双羽の紋が刻まれていて、特別なものを貰ったようで、ユーリは嬉しくて仕方がなかった。
「除隊させられたので、着ても良いのかと……」
まだ第一軍の宿舎内である。周りは緑一色だ。中に黒い兵服のユーリがいれば、おのずと視線を誘うのだが、ユーリはもうなんとも思っていない。レティウスの気持ちを着ている気がしているのだ、最強である。
「わかった。もう俺の身に余る。……ついて来い」
ギルバートは近くにいた副官に今後の予定を伝え、ユーリを伴って軍用の馬車に乗り、城壁内の奥へと進んで行った。御者はギルバート、他の者は排除したらしい。馬車の中はユーリひとり。軍施設内は慌ただしく、早朝訓練や走る兵をたくさんみたが、軍施設を抜けると静かな風景が続いていた。ときおり、城で働く者の姿があるが、ゆったりとおしとやかに歩いている。まるで違う風景に興味を惹かれていたのだが、馬車はそういった城の全面よりも裏へと進んで行った。
いちおう、ユーリは元王族である。城内に立ち入りを禁じられた場所は、王専用区くらいである。それも許可を得れば出入り出来る身分だった。ただユーリはまわりのことに興味を持たなかったから、行けても行かなかった場所がたくさんある。
いま、馬車が入り込んだ場所も、ユーリが興味を持たなかった場所のひとつだった。
厳重な警戒門、それは目に見えてあるものではなく、魔術を使用した許可制限区域だ。視界にも制限がされているようで、制限区域を越えたとたん、白く大きな建物が見える。
四角い建物を重ねて連ねたような姿の建物は、山肌の中に後部をめり込ませている。全容がわからない建物であり、制限区域外から見れば、そこはただの低い山だった。
白い建物の前方中央、上部半円の扉の前で馬車を止めたギルバートは、馬車の扉を開け、ユーリを下ろすと、神妙な顔つきでユーリの前に立つ。
「おまえが元王子だからできることだ、着いて来い」
ユーリには何となくここがどんな施設かわかっていた。身に伝わる警戒の念と、張り詰めたような空気感が、未知の世界を示しているようで、ユーリは緊張をしている。でも身に着けているレティウスの兵服が、少しだけ守っていてくれるようで、今日着ていて良かったと思う。
半円の扉は、開け放つのではなく、選ばれた者、許された者しか入れない造りらしく、ギルバートに背を支えられ、一緒に扉に吸い込まれる形で中に入った。
「無事に入れたな」
ギルバートはホッとした表情をしている。
「入れない可能性もあったのですか?」
ユーリは不満顔だ。入れなかったらひとりだけ弾かれて、外に残されることになっていたのか。それはちょっと恥ずかしくはないかと思うユーリだ。
「いやあ、一応、許可は取っているし、おまえは元とはいえ王族だし、大丈夫だとはわかっていても、俺は魔術と無縁な存在なんでね。ダメな場合を想定するんだよ、なんとなく」
「……そうですか。疑問なんですが、どうして隊長は入れるのですか? 私が思うに、隊長が一番入ってはいけない存在なのでは?」
一番の疑問をぶつければ、ギルバートは飽きれるように笑う。
「ふつうはそう思うよな。でもさ、俺、これでも竜騎士なんだよね」
「は?」
ありえない言葉を聞いたユーリは、疑うようにギルバートを見た。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【8話完結】勇者の「便利な恋人」を辞めます。~世界を救うより、自分の幸せを守ることにしました~
キノア9g
BL
「君は便利だ」と笑った勇者を捨てたら、彼は全てを失い、私は伝説の魔導師へ。
あらすじ
勇者パーティーの万能魔術師・エリアスには、秘密があった。
それは、勇者ガウルの恋人でありながら、家事・雑用・魔力供給係として「便利な道具」のように扱われていること。
「お前は後ろで魔法撃ってるだけで楽だよな」
「俺のコンディション管理がお前の役目だろ?」
無神経な言葉と、徹夜で装備を直し自らの生命力を削って結界を維持する日々に疲れ果てたエリアスは、ある日ついに愛想を尽かして書き置きを残す。
『辞めます』
エリアスが去った翌日から、勇者パーティーは地獄に落ちた。
不味い飯、腐るアイテム、機能しない防御。
一方、エリアスは隣国の公爵に見初められ、国宝級の魔導師として華麗に転身し、正当な評価と敬意を与えられていた。
これは、自分の価値に気づいた受けが幸せになり、全てを失った攻めがプライドも聖剣も捨てて「狂犬」のような執着を見せるまでの、再構築の物語。
【勇者×魔導師/クズ勇者の転落劇】
※攻めへのざまぁ要素(曇らせ)がメインの作品です。
※糖度低め/精神的充足度高め
※最後の最後に、攻めは受けの忠実な「番犬」になります。
全8話。
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる