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22話 灰青色の天使
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ある日国境付近の騎士団の駐屯地に、風魔法の伝達が届いた。
見たこともない美しい緑色の、精霊のような鳥が部隊長の元へ降り立つ。
そして、その美しい鳥から発せられた内容は思いもよらぬものだった__
「____要請、要請。 ここから南東、ルディトロ村近辺の集落にグリッウォ山脈にて瓦石竜プレツィヌスの襲撃あり。 サディル村及びルルーナ村は壊滅。 被害及び損害、被災者達の救援要請求む。 詳細は鳥が消えると出てくる、以上。 ローイズ・ウィリアン」
「なんだってッ!!?!」
もちろんあの狂暴で凶悪な瓦石竜についても即時対応を為さねばならないが、それ以上にいまや世界で__特に我が国が求めて止まないあの伝説のSSSランクのローイズ・ウィリアンが伝達魔法だけとはいえ、実際にこちらにコンタクトを取った事実に我が隊員達は沸き立った。
詳細を確認後、直ぐさま被害にあった村へと出動したが、やはり彼の姿はなかった。
当たり前っちゃぁ、当たり前だが、やはり一目でも拝みたいのは人の性だ。
だからせめて集落の人々から当時の状況や被害状況の確認をしつつ、噂のローイズ・ウィリアンがどのような人物だったかを聞いていく。
そして、とある集落の女は言う。
「____天使のような、方でした」
人々は次々とさも自分のことのように、どこか浮かれた様子で……そしてどこか崇拝的なことを次々と口に出していく。
それは非現実じみていて、夢物語のような内容に本当にそんな人間居るのか? と疑いたくもなるようなものばかりだ。
集落の住民に薬を与え、治療を施し、食を分け、出発間際まで集落の復興の手助けをし、その見返りも求めずただ静かに集落を旅立って行ったらしい。
「灰青色の天使か____」
容姿はまだ年端もいかぬ、子どもにしては大人びていて、大人にしては華奢な、魔法を使いこなす少年だったらしい。
正直驚きの連続が続き、本当か嘘か判断がつかなくなってきたが、あの伝説の冒険者がまだ年若いとしたら色々な意味で相当な苦労をしてきたはずだ。
まぁ、結局俺たちみたいな凡人には理解なんざ出来ないし烏滸がましいもんだが、なんとなく……ほんの少しだけローイズ・ウィリアンがなんの音沙汰無く世界から姿を消したのか分かった気がした。
「確かに、背負うもんが増えるとしんどいよなぁ~」
もし集落の人間が言うことが本当であれば、もう一人の冒険者と同行してギルドへ向かったらしい。
きっと遅かれ早かれローイズ・ウィリアンもギルドに行くつもりだったのだろう。
なら、俺たちの仕事は目の前の被災者達の支援や援護にまわることのみだ。
「さて、お前らぁ~!! 仕事を始めるぞぉ!!!!」
######
ヴィクトールは城を後にし、マルクの元へと足を向けた。
「入るぞ」
なにやら思い詰めた様子で手元の伝達を眺めているマルクが、ひきつった笑みでこちらに顔を向ける。
「…………わ」
「なんだ」
「__ローイズ・ウィリアン、見つけたかもだわ」
マルクの話によると、数日前国境付近の駐屯地に風の伝達魔法が届き、グリッウォ山脈にて魔獣の襲撃ありと救援要請が届いたとのことだった。
ここまでは珍しいことには変わりないが、少なくもない。
風魔法はコントロールが難しい為、個人で属性を持っていても中々スキルなどを会得するのが難く、冒険者から見たら特に攻撃性には長けていないとされている。
だが、その中でも伝達魔法は今でこそ軍や王家、貴族など普及してきてはいるが、まだまだ庶民や一般向けに知れ渡っているわけではない。
今回の要請もたまたま腕の立つ風魔法の使い手が居たか、気まぐれな風の精霊に乞い奉って願いが聞き届けられたかのどちらかと思ったが、まさか噂のローイズ・ウィリアンの名が出てくるとは思わなかった。
「説明を」
王都から南の、そしてグリッウォ山脈に位置する山間部の村及び集落に魔獣の襲撃があり、Aランクの冒険者と謎の少年が魔獣の討伐に加わった。
その場にあった攻撃跡からAランクの冒険者のみのものとみられること。
だが、集落のもの達は口を揃えてもう一人の少年を指しこう述べた____
「灰青色の天使」
マルクは顔を天井に向け、虚ろに「また仕事が…………」とぶつぶつと独りごちている。
頭を抱え悶えていた彼が急に押し黙り、こちらを見ては口を開きかけては口をつぐむ、それを何度か繰り返し漸く諦めたのか口を割った。
「あっ、あー、それにしても……SSSランクの冒険者から灰青色の天使とは、大層な称号貰ってるよなぁ~…………はあ、あの王サマ……また騒ぐんだろうな」
「………………」
マルクの言い分に否定もせずにいると、机に顎を乗せこちらに目をやりなにか迷うように瞳を揺らせてる鮮やかな橙色と視線とかち合う。
「__なぁ、ヴィクトール。 俺は学も技量も無いから難しいことは分からんが、少なくとも……少なくとも俺は、アイツを俺らと同じとは思えないぜ」
「そうか」
「…………ヴィクトールは、これからどうすんだ?」
ヴィクトールは彼宛の報告書を読み終え、マルクに背を向け言い放つ。
「あの少年の所在を明らかにする」
そして、来る世界的な冒険者などの祭典へ向けローイズ・ウィリアン及び灰青色の天使を探し求め、再び歩みを進めるのであった____
∞∞∞∞∞∞
ちなみに団長権限の書類は本来、元団長とは言えど見せてはいけないものだがガウル王国国王の権限にてSSS持ちのヴィクトールのみ特例で許されているという裏話。
見たこともない美しい緑色の、精霊のような鳥が部隊長の元へ降り立つ。
そして、その美しい鳥から発せられた内容は思いもよらぬものだった__
「____要請、要請。 ここから南東、ルディトロ村近辺の集落にグリッウォ山脈にて瓦石竜プレツィヌスの襲撃あり。 サディル村及びルルーナ村は壊滅。 被害及び損害、被災者達の救援要請求む。 詳細は鳥が消えると出てくる、以上。 ローイズ・ウィリアン」
「なんだってッ!!?!」
もちろんあの狂暴で凶悪な瓦石竜についても即時対応を為さねばならないが、それ以上にいまや世界で__特に我が国が求めて止まないあの伝説のSSSランクのローイズ・ウィリアンが伝達魔法だけとはいえ、実際にこちらにコンタクトを取った事実に我が隊員達は沸き立った。
詳細を確認後、直ぐさま被害にあった村へと出動したが、やはり彼の姿はなかった。
当たり前っちゃぁ、当たり前だが、やはり一目でも拝みたいのは人の性だ。
だからせめて集落の人々から当時の状況や被害状況の確認をしつつ、噂のローイズ・ウィリアンがどのような人物だったかを聞いていく。
そして、とある集落の女は言う。
「____天使のような、方でした」
人々は次々とさも自分のことのように、どこか浮かれた様子で……そしてどこか崇拝的なことを次々と口に出していく。
それは非現実じみていて、夢物語のような内容に本当にそんな人間居るのか? と疑いたくもなるようなものばかりだ。
集落の住民に薬を与え、治療を施し、食を分け、出発間際まで集落の復興の手助けをし、その見返りも求めずただ静かに集落を旅立って行ったらしい。
「灰青色の天使か____」
容姿はまだ年端もいかぬ、子どもにしては大人びていて、大人にしては華奢な、魔法を使いこなす少年だったらしい。
正直驚きの連続が続き、本当か嘘か判断がつかなくなってきたが、あの伝説の冒険者がまだ年若いとしたら色々な意味で相当な苦労をしてきたはずだ。
まぁ、結局俺たちみたいな凡人には理解なんざ出来ないし烏滸がましいもんだが、なんとなく……ほんの少しだけローイズ・ウィリアンがなんの音沙汰無く世界から姿を消したのか分かった気がした。
「確かに、背負うもんが増えるとしんどいよなぁ~」
もし集落の人間が言うことが本当であれば、もう一人の冒険者と同行してギルドへ向かったらしい。
きっと遅かれ早かれローイズ・ウィリアンもギルドに行くつもりだったのだろう。
なら、俺たちの仕事は目の前の被災者達の支援や援護にまわることのみだ。
「さて、お前らぁ~!! 仕事を始めるぞぉ!!!!」
######
ヴィクトールは城を後にし、マルクの元へと足を向けた。
「入るぞ」
なにやら思い詰めた様子で手元の伝達を眺めているマルクが、ひきつった笑みでこちらに顔を向ける。
「…………わ」
「なんだ」
「__ローイズ・ウィリアン、見つけたかもだわ」
マルクの話によると、数日前国境付近の駐屯地に風の伝達魔法が届き、グリッウォ山脈にて魔獣の襲撃ありと救援要請が届いたとのことだった。
ここまでは珍しいことには変わりないが、少なくもない。
風魔法はコントロールが難しい為、個人で属性を持っていても中々スキルなどを会得するのが難く、冒険者から見たら特に攻撃性には長けていないとされている。
だが、その中でも伝達魔法は今でこそ軍や王家、貴族など普及してきてはいるが、まだまだ庶民や一般向けに知れ渡っているわけではない。
今回の要請もたまたま腕の立つ風魔法の使い手が居たか、気まぐれな風の精霊に乞い奉って願いが聞き届けられたかのどちらかと思ったが、まさか噂のローイズ・ウィリアンの名が出てくるとは思わなかった。
「説明を」
王都から南の、そしてグリッウォ山脈に位置する山間部の村及び集落に魔獣の襲撃があり、Aランクの冒険者と謎の少年が魔獣の討伐に加わった。
その場にあった攻撃跡からAランクの冒険者のみのものとみられること。
だが、集落のもの達は口を揃えてもう一人の少年を指しこう述べた____
「灰青色の天使」
マルクは顔を天井に向け、虚ろに「また仕事が…………」とぶつぶつと独りごちている。
頭を抱え悶えていた彼が急に押し黙り、こちらを見ては口を開きかけては口をつぐむ、それを何度か繰り返し漸く諦めたのか口を割った。
「あっ、あー、それにしても……SSSランクの冒険者から灰青色の天使とは、大層な称号貰ってるよなぁ~…………はあ、あの王サマ……また騒ぐんだろうな」
「………………」
マルクの言い分に否定もせずにいると、机に顎を乗せこちらに目をやりなにか迷うように瞳を揺らせてる鮮やかな橙色と視線とかち合う。
「__なぁ、ヴィクトール。 俺は学も技量も無いから難しいことは分からんが、少なくとも……少なくとも俺は、アイツを俺らと同じとは思えないぜ」
「そうか」
「…………ヴィクトールは、これからどうすんだ?」
ヴィクトールは彼宛の報告書を読み終え、マルクに背を向け言い放つ。
「あの少年の所在を明らかにする」
そして、来る世界的な冒険者などの祭典へ向けローイズ・ウィリアン及び灰青色の天使を探し求め、再び歩みを進めるのであった____
∞∞∞∞∞∞
ちなみに団長権限の書類は本来、元団長とは言えど見せてはいけないものだがガウル王国国王の権限にてSSS持ちのヴィクトールのみ特例で許されているという裏話。
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