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ランはそのままビィの協力で入り組んだスラムの奥に身を隠し、アレンに手紙を書いた。
「私を頼ってくれるとは、光栄だね子猫ちゃん」
「あなたが自ら来るとは意外です」
「せっかくのご指名だから張り切ってしまった」
アレンはそう言いながら、汽車のチケットと金を工面してくれた。
「それからこれ」
「これは?」
「私の紹介状だ。子猫ちゃんとお友達の分。家と仕事を探す時に使ってくれ」
「ありがとうございます。こんなことまで……」
ランはアレンに感謝した。そしてどこか胡散臭いと彼のことを思っていたことを反省した。
「いいのいいの」
アレンは軽い調子でそう言うと、落ち着いたらまた手紙を寄越すように言って去って言った。
こうしてランとビィは東の辺境に身を隠した。そして家と仕事を見つけて、密かにルゥを産んだのだ。
「ママ、うまうま」
「はいはい」
こんな自分がちゃんと親になれるのか不安でいっぱいの妊娠中も、バタバタの産後もビィが側に居てくれたから乗り越えられた。
「オレは恵まれてるよ、ほんと」
ランはルゥのほっぺについた食べ物のかけらをとってやりながら、愛しい我が子に微笑みかけた。
一日を終えて、ランとルゥはベッドで眠る。お腹を丸出しにして眠るルゥに何度も上掛けを掛けてやりながら死んだように眠り込んで、また朝がくる。
「おはよう」
「おはよー」
目を覚ますと、ビィは勤めから帰って来ていた。
「はーっ、やっと休みだ」
「デートにいけるね」
「うふふふ」
ここに来て、ルゥが一歳になった頃、ビィには恋人が出来た。ビィの勤める酒場の常連客でルゥも一緒に何度も遊んで貰ったことがある。
「そろそろ一緒に暮らしたら?」
「んー、でも昼間ルゥを見る人居なくなるだろ」
「それはなんとかなるよ。誰か預かってくれる人を探してもいいし」
「やだよぉ、他人がルゥの面倒見るなんて……ランこそいい人いないわけ?」
「えっ」
ビィから思わぬ反撃を受けたランは目をしばたたかせた。
「ほら……ランはフリーな訳だしさ」
ビィはランの首元をトントンと叩いた。
そう、不幸中の幸いというかランはレクスに項を噛まれて居なかった。もし項を噛まれていたら、ランはレクスと番になっていた。
「まあそのうちね」
もし番になっていたら、ランはレクスと離れられずに彼にふさわしい伴侶を娶るのを見届けなくてはならなかったろう。そう思うと、ランはこれで良かったのだと思う。
「今はちょっと考えられないし……子持ちだしなぁ」
「ああ、まだ若いのに老け込んじゃって」
ビィは呆れたようにやれやれと首をふった。
「ルゥにパパを作ってやるのもいいと思うんだぁ」
「ぱぱ?」
「そうパパ!」
「うー?」
きょとんとした顔を見てビィはゲラゲラ笑っていたが、ルゥはパパという言葉がよく分からないようだった。
「私を頼ってくれるとは、光栄だね子猫ちゃん」
「あなたが自ら来るとは意外です」
「せっかくのご指名だから張り切ってしまった」
アレンはそう言いながら、汽車のチケットと金を工面してくれた。
「それからこれ」
「これは?」
「私の紹介状だ。子猫ちゃんとお友達の分。家と仕事を探す時に使ってくれ」
「ありがとうございます。こんなことまで……」
ランはアレンに感謝した。そしてどこか胡散臭いと彼のことを思っていたことを反省した。
「いいのいいの」
アレンは軽い調子でそう言うと、落ち着いたらまた手紙を寄越すように言って去って言った。
こうしてランとビィは東の辺境に身を隠した。そして家と仕事を見つけて、密かにルゥを産んだのだ。
「ママ、うまうま」
「はいはい」
こんな自分がちゃんと親になれるのか不安でいっぱいの妊娠中も、バタバタの産後もビィが側に居てくれたから乗り越えられた。
「オレは恵まれてるよ、ほんと」
ランはルゥのほっぺについた食べ物のかけらをとってやりながら、愛しい我が子に微笑みかけた。
一日を終えて、ランとルゥはベッドで眠る。お腹を丸出しにして眠るルゥに何度も上掛けを掛けてやりながら死んだように眠り込んで、また朝がくる。
「おはよう」
「おはよー」
目を覚ますと、ビィは勤めから帰って来ていた。
「はーっ、やっと休みだ」
「デートにいけるね」
「うふふふ」
ここに来て、ルゥが一歳になった頃、ビィには恋人が出来た。ビィの勤める酒場の常連客でルゥも一緒に何度も遊んで貰ったことがある。
「そろそろ一緒に暮らしたら?」
「んー、でも昼間ルゥを見る人居なくなるだろ」
「それはなんとかなるよ。誰か預かってくれる人を探してもいいし」
「やだよぉ、他人がルゥの面倒見るなんて……ランこそいい人いないわけ?」
「えっ」
ビィから思わぬ反撃を受けたランは目をしばたたかせた。
「ほら……ランはフリーな訳だしさ」
ビィはランの首元をトントンと叩いた。
そう、不幸中の幸いというかランはレクスに項を噛まれて居なかった。もし項を噛まれていたら、ランはレクスと番になっていた。
「まあそのうちね」
もし番になっていたら、ランはレクスと離れられずに彼にふさわしい伴侶を娶るのを見届けなくてはならなかったろう。そう思うと、ランはこれで良かったのだと思う。
「今はちょっと考えられないし……子持ちだしなぁ」
「ああ、まだ若いのに老け込んじゃって」
ビィは呆れたようにやれやれと首をふった。
「ルゥにパパを作ってやるのもいいと思うんだぁ」
「ぱぱ?」
「そうパパ!」
「うー?」
きょとんとした顔を見てビィはゲラゲラ笑っていたが、ルゥはパパという言葉がよく分からないようだった。
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