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あの日……ランのオメガ性が発現した日、そしてランがレクスに抱かれた後。ランは動揺しつつも、眠るレクスを起こさぬように身の回りのものをまとめて王城を出た。
「どうしよう……」
ランはひどく混乱しながら、とりあえずスラムへと向かうことにした。
「ビィ」
「えっ、ラン!? この匂い……お前オメガだったのか……?」
今だ発情の治まらない体でランはスラムのビィの元にたどり着いた。
ビィは戸惑いながら自分の抑制剤を分けてくれ、とにかく横になるようにと言った。
「ランはベータだと思ってたんだけど」
「ビィ……実は」
薬が効いて落ち着きを取り戻したランは、ビィに自分の性別のことを打ち明けた。
「そうか……じゃあランは今頃オメガになったってこと?」
「うん、そうだと思う」
「なにかきっかけがあったんだろうか」
「きっかけ……」
ランは考え込んだ。ランの体がオメガに花開いたのなら、それは……レクスに対する密かな恋情のせいかもしれないと思った。
「好きな人が、できた……からかな」
「それって、ランを連れて行ったあいつか」
ビィの問いかけに、ランはこくりと頷いた。
「でも……一緒に居られない。レクスは王族のアルファなんだ。ベータでもオメガでもないオレならあいつの側に友人として居られると思ってた。でも……」
「ラン、もしかして」
「うん……。いきなり発情がきて、そのまま……」
ランの瞳から涙が溢れた。押し倒され、押さえつけられた腕には痕がつき、まだ痛む。
その胸には、レクスへの恋心と友情と、そして獣のように犯された恐怖がグチャグチャになって渦巻いていた。
「……ラン、しっかり」
「う、うん」
むせび泣くランをビィはそっと抱いて、その背中を撫でながら言った。
「発情を起こしてやったんだよね」
「そうだよ」
「それじゃ、ラン……落ち着いて聞いて。ランは多分妊娠してる」
「え……あ!」
ランはハッとしてビィの顔を見た。
「どうしよう……!」
通常、発情を起こして性交するとほぼ間違いなくオメガは妊娠する。
「レクスの……レクスの子供!?」
さらなる混乱が、ランを襲う。
「ラン、ランはどうしたい? 誰か頼れる人は?」
「え、えっと……」
ランはビィの言葉に頭を巡らせた。実家は今なら受け入れてくれるかもしれない。でも、あの場所はレクスも知っている。ランが居なくなったのを知ればきっと見つけ出されてしまう。
もう『友人』なんて言葉で誤魔化してレクスの側に居続けることなんて出来ない、とランは思った。
「……あ」
その時、ランの脳裏にある人物が浮かんだ。それは……アレンだった。
「どうしよう……」
ランはひどく混乱しながら、とりあえずスラムへと向かうことにした。
「ビィ」
「えっ、ラン!? この匂い……お前オメガだったのか……?」
今だ発情の治まらない体でランはスラムのビィの元にたどり着いた。
ビィは戸惑いながら自分の抑制剤を分けてくれ、とにかく横になるようにと言った。
「ランはベータだと思ってたんだけど」
「ビィ……実は」
薬が効いて落ち着きを取り戻したランは、ビィに自分の性別のことを打ち明けた。
「そうか……じゃあランは今頃オメガになったってこと?」
「うん、そうだと思う」
「なにかきっかけがあったんだろうか」
「きっかけ……」
ランは考え込んだ。ランの体がオメガに花開いたのなら、それは……レクスに対する密かな恋情のせいかもしれないと思った。
「好きな人が、できた……からかな」
「それって、ランを連れて行ったあいつか」
ビィの問いかけに、ランはこくりと頷いた。
「でも……一緒に居られない。レクスは王族のアルファなんだ。ベータでもオメガでもないオレならあいつの側に友人として居られると思ってた。でも……」
「ラン、もしかして」
「うん……。いきなり発情がきて、そのまま……」
ランの瞳から涙が溢れた。押し倒され、押さえつけられた腕には痕がつき、まだ痛む。
その胸には、レクスへの恋心と友情と、そして獣のように犯された恐怖がグチャグチャになって渦巻いていた。
「……ラン、しっかり」
「う、うん」
むせび泣くランをビィはそっと抱いて、その背中を撫でながら言った。
「発情を起こしてやったんだよね」
「そうだよ」
「それじゃ、ラン……落ち着いて聞いて。ランは多分妊娠してる」
「え……あ!」
ランはハッとしてビィの顔を見た。
「どうしよう……!」
通常、発情を起こして性交するとほぼ間違いなくオメガは妊娠する。
「レクスの……レクスの子供!?」
さらなる混乱が、ランを襲う。
「ラン、ランはどうしたい? 誰か頼れる人は?」
「え、えっと……」
ランはビィの言葉に頭を巡らせた。実家は今なら受け入れてくれるかもしれない。でも、あの場所はレクスも知っている。ランが居なくなったのを知ればきっと見つけ出されてしまう。
もう『友人』なんて言葉で誤魔化してレクスの側に居続けることなんて出来ない、とランは思った。
「……あ」
その時、ランの脳裏にある人物が浮かんだ。それは……アレンだった。
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