少年と銀貨  第一章:始まりの世界

五十嵐 昌人

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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

♯33. トランプゲーム”練習プレイ”決着!

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「確かに腹筋も申し分ない位に鍛え上げられてるけど、
正面にある腹直筋への”正拳突き”じゃダメなの?」
「正拳突きは男でも出来ますし、華麗な回転を加えられ
て正確な位置に蹴りを入れられる女性となると俺は霞実
ちゃんしか思い浮かびません。お願いします!」
「まぁ、あなたが望むなら別にしてあげても構わないけ
ど当たり所が悪くて骨にヒビが入っても知らないわよ?」
「大丈夫です。全力で受け止めますからっ」
 骨にヒビが入ったら入ったで激しい愛をしばらく身近
に感じられるので大歓迎だとも思うようになってニヤケ
顔が止まらない明石。

 何を根拠に言っているのか直ぐには理解出来なかった
がニヤケ顔がしばらく続いていたので立花を除く全員が
M体質である事を理解していたのだった。
「分かったわ。但し筋肉の鎧をまとってる明石君だけよ。
そんな危険な事は小学生にはさせられないもん」
「そうですね。鍛え上げられた者だけが到達できる試練
だと思いますっ」
 立花はしっかりと目の前にある腹筋を記憶に焼き付け
ておいてから軽く息を吸い込んで宣言する。
「明石先輩、話が終わったのなら続きを始めますよ」
 立花がスペードの3を出す。(立=残り2枚)
「スキップって事は俺だよな」
 要約、特殊カードの動きにも慣れてきた明石が積み札
から一枚取って霞実に見せる。増えたのはハートのQだった。
(明=残り5枚)
「じゃあ運試しって事で」
 立花はハートの3を出して連続スキップを放った後、間を
置かずに高らかに宣言する。
「ページワンっ!」
(立=残り1枚)

「立花さん。凄いじゃないっ」
 先生を筆頭に初のページワンコールが出た事にザワザワ
が止まらなかったが上がりを阻止できる可能性がある明石
の一手に注目が集まる。
「自分の事に集中してて、いつの間にって奴だな」
 明石はハートの5を出していた。(明=残り4枚)
「やったぁー。私、ツイてるかもイエェーーーイ!!」
 立花は最後の一枚であるハートのKを出して上がりを決めた。
「先輩、ありがとね! 私、今、最高に嬉しい気分なの。
だから……」
「だから?」
 明石が質問した後、霞実を横切って明石の側に移動する
と腰を落として明石の肩に手を置いてバランスをキープす
ると右頬にキッスをする立花。
「チュッ」
 立花の行動が本気なのかワザとなのか判断が付かない状
況であったがキスの音だけが妙に印象に残っていた。突然
の不意打ち攻撃ではあったが立花は可愛い部類にも入って
いるので何もさせて貰えなかった哀川は両耳を赤くさせな
がら視線を横に向けていて膝をプルプルと振るわせていた。
(俺の気持ちも知らないで勝手に暴走するかよっ。帰宅し
たら集中的に腹筋を鍛えてやる)

「まぁ、良かったわね。明石君。いつの間にか、そういう
関係だったのね。先生、驚いちゃった」
 席から立ち上がり、一歩も動けない明石を見下ろす様に
観ている霞実。
「ちっ違うんです。これは歓喜の衝動って奴でしょ!?
そうだよね立花さん?」
「それがあんまり覚えてなくて……。困らせたならゴメン
なさい」
 立花は両頬を赤らめながら明石を見詰めている。
「まぁ、ホッペならセーフだとは思うけど誤解を受けやす
いから気を付けた方が良いと思うな~」
「へぇ~。それなら2位が誰になるのか、スッゴク楽しみ
にしてるから必ず勝ってね!」
 眉間に皺を寄せながら指をパキパキと鳴らして仁王立ち
になっている姿に立花以外は視線を合わせられないでいた。
 一番楽しみにしていた明石でさえも、この時の霞実が、
本気で蹴りを放っていたら長期入院レベルになりかねなか
ったと想像するだけで脇汗が止まらなかった。付き合って
いる関係ならば見舞いに来てくれる事は容易に想像できた
が構築できてない関係での入院は距離が離れるだけで得る
物は何も無い気がしたのだ。

 この事態を収束させたのは唯一、冷静に観ていたタカフ
ミだった訳だが隠し芸のトランプによるピラミッドタワー
3段をノーミスで成功させて意識を向けさせたのだった。
 
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