少年と銀貨  第一章:始まりの世界

五十嵐 昌人

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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

♯12. 立花マイカの告白①

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 ヒカルの記憶が封印される3秒前に宮間は、着ていた
茶色いスーツを脱いで小脇こわきかかえ、持ってきたボストン
バッグから灰色のベストと燕尾服えんびふくを取り出して早着替え
を済ませて持っていたスーツをしまうと胸ポケットから
くしを取り出して髪型を執事業務時の七三分けに戻した。

「あのっ。私は何故、ここにいるのですか?」
 ヒカルは自分の記憶力に自信を失くしている状態だっ
たので目の前に居る執事の格好をしている人物に解答を
欲すべくたずねた。
「きっと誰かが聞き間違えてただけだと思います。急が
ないと合同体育の授業が始まってしまいますよ」
 宮間は、改めて自己紹介するのを伏せて急かすように
目的の場所を教えた。
「そうでした。どなたかは、知りませんが教えて頂いて
ありがとうございます!」
 ヒカルは不思議と目の前に居る人物の事を知りたいと
思わなかったが合同体育の授業という言葉には聞き覚え
があったので信じる事にした。去り際、何故なのか分か
らないが早急に体をきたえなければならないと感じていた。

 全ての要件が終わった宮間はうっすらとにじんだ額の汗
を花柄のハンカチで拭き取ると終了時の合図であるノッ
クを出口の扉に施す。
「思ったよりも時間が掛かったわねっ」
 掃除を終えた立花がノックされた扉を開けて顔を見せ
ながら嫌味いやみを言うと約束の品を宮間に差し出した。
「憧れの人だったんで少し緊張したんでしょう。密封みっぷう
でしてあるとは手際てぎわが宜しくて結構です」
 ジッパーが付いている透明な袋にブルマーが入れてあ
る事を確認すると悪魔あくまのような笑みを浮かべる宮間。

「宮間さん。勘違いしないで貰いたいから、これだけは
言わせて貰うけど体操着だからOKしたんであって下着
だったら、あなたには依頼していないわ。そこまで外道げどう
になるつもりは私にはない!」

「えぇ、ちゃんと分かっていますよ。私は物が手に入れ
ば外道とだろうが手を組みますけどね!」
 外見は、執事の格好をしているが悪魔と対面している
ような錯覚におちいり、背筋が寒くなる立花だった。
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