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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

♯13. 立花マイカの告白②

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「一応、念の為に確認しておきますけど下着はどうする
つもりです?」
 細い目を大きく開きながら質問する宮間。
「私が綺麗に洗濯をして来たるべき日が来るまで大切に
保管しておきます」
「不快に思うかもしれませんが本当に、そんな日がやっ
て来るんですかね?」
「私には優秀な知人が居ますので……」
「あぁ、あのB探偵とかいう男子ですか」
「Bの意味は彼から直接聞きましたよ」
「まさか、催眠術を使ったんじゃないでしょうね!」
「やたらと暗示を掛けるのは本意ではありませんので私
が欲しい情報と彼が欲しい物を交換したまでです」
「それでヒカルの両親の情報を得たのね」
「えぇ、あの歳で確かな情報網を保持している事は、認
めますが何故、武術を覚える師匠として清武なのですか?
 そこがに落ちません」
「別に不思議な事ではないと思いますけど宮間さんの技
は催眠術のスキルも必要としますし何より、一子相伝で
はないですか。他人である私に教える事は有り得ません」
「成程、B探偵は私の事も事前に調べ上げているのです
ね。大人になる前に、それ相応の対応が必要になるかも
しれませんね」
「宮間さんが注視する程の事はありませんよ。大人にな
って彼が始める事業は刑事ドラマであるような難事件を
解決するようなたぐいではなく、かなり現実的な需要じゅようが高い
男女間のトラブルですから」
「成程、理想を追い求めない現実主義という訳ですね。
彼はBESTとBetter。後、ベタ(ありきたり)の頭文字
から付けたと言っていました。確かに優秀かもしれませ
ん。しかし、空手なら他にもいるでしょう。清武と互角
に戦える人は名古屋になら居ます。柔術を得意な方も居
ますよ。よければ紹介致しますが……」
「何か誤解されているみたいですので、この際、はっき
りと言わせて貰いますが空手だけを学びたい訳では無い
ですし子供の体格で寝技は実践向きとは言えないと思い
ます」
「投げ技なら、問題ないと言う事か……。はたしてそう
だろうか?」
「もちろん、背負うような技は出来ないと思いますが、
ともえ投げみたいに反動を利用して応用する方法だって出来
る筈です!」
「その歳で、その考えに辿り着くとは恐れ入るよ。君み
たいな娘が居たら技は格段に進化するだろうね」
 腕を組みながら本気で感心する宮間。
「それと大切な事を忘れていますよ。この街で習う必要
があるんです。私が復讐をする事を親戚は望んでいませ
んので名古屋で武術を覚えるには無理があります。移動
に掛かる時間が勿体ないですし交通費を出してくれる人
は居ません」
 キリッとした力強い視線を向けつつも宮間からの高圧
的な視線を逸らそうとはしない立花。
「成程、合理的な考えが君を最短距離で行動させるのか
も知れないね。私が君の親のかたきだったとしたら見た目の
綺麗さにだまされて何をされるか分かったものじゃないな。
得意の催眠術を出す前に床に倒れている可能性だって、
あり得るよ。私に対して物怖ものおじせずに話せるんだから!」
「宮間さんって意外とお喋りなんですね。驚きました」
「長すぎたようだから、私はこれで失礼するよ」

 宮間は廊下を曲がった先の消火器が子供の目線で備え
付けられてるコンクリートの壁に立ち止まると怒りが沸
点に達しており、中学まで本気で習っていた実践空手の
膝蹴ひざげりを叩き込み、消火器の真下にヒビを入れて立ち去
っていく。
「この街は、どいつもコイツも清武ばっかりでウンザリ
する!!」
 普段、冷静沈着な宮間にしては珍しく声を荒げていた
瞬間でもあった。

 
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