家政婦さんは同級生のメイド女子高生

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「ゆず、大和くんありがとう!」
ファインダーから目を離した彩香が満足そうに言った。
「ふう、さすがに疲れた」
「そそ、そうだね・・・」
まだ恥ずかしいのか、ゆずは俯いたまま答えた。
「あれ?もう終わりなの?」
「うん。ゆずの表情もよかったし、これくらいで」
「なーんだ。逆あーんはないんだぁ」
満足顔の彩香を横目に明衣がつぶやいた。
「逆あーん?」
「うん。さっきはゆずからだったでしょ。そしたら今度は大和からゆずにってのが定番かなぁって」
「言われてみると、そうねえ・・・あっ、大和くん、それ食べちゃダメ!!」
大和が宇宙船ハンバーグに箸をつける直前で、びくっと動きを止めた。
「な、なに?なんか俺、まずいことした?」
不安そうに彩香の方を向く大和。
「ごめんね、大和くん。あと少しだけ撮ろうかなぁって・・・」
思わず大きな声を出してしまった彩香は、恥ずかしそうに謝った。
「へえ、どんなの?」
「う、うん。今度は大和くんに『あーん』して欲しいんだけど、いいかな?」
「えっ、それって、おれがゆずちゃんにってこと?」
彩香が頷いた。
「まじかよ・・・」
呆気に取られた大和がゆずを見ると、どうやら話を聞いていたようで、すでに耳まで真っ赤になって頭から湯気も出ていた。
「俺はいいけどさ、ゆずちゃんは大丈夫なのか?」
「大丈夫!ゆずは私がなだめるから。ほらぁ、ゆずたぁん・・・」
と明衣がニコニコしながらゆずに近づいて行った。
それを見ていた彩香が大和に向き直って
「大和くんはさっきのゆずみたいに・・・」
とシーンの説明を始めた。

大和がゆずの口元に、箸を近づけてゆく。
「ゆずちゃん、あーん」
「ああ、あああ、あ・・・あー」
一方のゆずは、ただあーんされるだけにもかかわらず、両手をあわあわさせながら、小刻みに震えていた。
「・・・ゆず、手、下ろせないかな?」
「ててて、手?」
反応はしているが、なにを言われたのかは全くわかっていない様子のゆず。
「ゆず。ほら、あんたの手、あわあわ震えてるよ」
笑いを堪えながらやってきた明衣が、ゆずの手を優しく握った。
「てて、ててて、て手・・・」
どうやらむこうの世界に行ってしまったらしい。
「彩香。この手、動かないみたい」
「そう・・・じゃあ、もう少しゆずに寄せて撮るわ」
「その方が良さそうだね。ゆずたん、じゃあこのままでいいから、あーん、ね」
「ああ、あああ・・・あーん」
「はい、そこで大和!」
「お、おう」
おかずの乗ったお箸をゆずの口の前に差し出すと、ゆずが目を閉じながら「ぱくん」と口に入れた。同時に彩香がシャッターを切る。
「なんか餌付けしてるみたい・・・くくっ」
明衣は必死に笑いを堪えた。
「・・・野崎くん、そっちのカメラ使わせてもらっていい?」
「は、はい。もちろんっす!」
彩香は自分のデジカメを受け取ると、素早く設定を調整して元の位置に構えた。
「じゃあ、大和くん、ゆず、もう一回だけお願い」
「あ、ああ。ゆずちゃん、あーん」
「ああ、あー・・・」
デジカメに持ち替えた彩香が連写で一部始終をカメラに収めると、ゆずが静かにくずおれていった・・・

お弁当シーン撮影後、ゆずはシートに横になっていた。
他のみんなは、撮影していたところで賑やかにお弁当を食べている。
「ゆず、もうダメそうだね」
「そうね。ちょっと無理させすぎちゃったかな」
「彩香はまだ撮るの?」
「ううん。午後は初めから予備の時間のつもりだったから」
「あ、あーん!!」
ゆずがいきなり起き上がった。
「大丈夫、ゆず?」
「へっ・・・さ、さいちゃん?わわ、私、あーん・・・」
状況が掴めていないのか、ゆずはキョロキョロと辺りを見回した。
「もう終わったわよ、ゆず」
「へっ?」
「ほらあっち見て、みんなお弁当食べてるでしょ」
「ほ、ほんとだ・・・」
「もう今日の分は撮り終えたから、もう少しねてていいよ」
「そう・・・」
ゆずは少しだけ悲しそうな顔をした。
「もう、おわっちゃったんだ・・・」
「え?何か言った、ゆず?」
「う、ううん!なんでも、ない・・・」
「そう・・・」
ゆずは、お弁当を食べるみんなをじっと見つめていた。
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