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10.邪竜(股間)の咆哮④
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もちろんジレーザは依斗の状況を知っているので、部屋の中でなにが行なわれているかは、おおよそ気付いているが、あえてそれは考えないようにしている。
依斗の体調を心配してネルディムが世話を申し出るが、ジレーザは依斗ではなく、聖人の尊厳を守るためにこれを丁重に断り、自分が世話をすると説明する。
そうしてジレーザが部屋に戻ると、精魂尽き果てた依斗が白目を剥いてベッドに横たわっていた。
「どうしてこう、緊張感のない男が」
ジレーザは呆れたように呟くと、洗面用の手桶に魔法で水を張り、柔らかい布を底に浸して溜め息を吐き、絞った布を手に依斗の元に近付いてまた溜め息を吐く。
「なぜ私がこんなことを」
顔を歪めたまま、ブランケットを剥がして依斗の体を清めてやると、先ほどは熱り立つ存在のせいで目に入らなかった、依斗の白い肌に刻まれたタトゥーが目に入って手を止める。
サーチェスにおいても、民族によっては成人の証として刺青を入れる習慣があるが、依斗の腰元から局部近くに刻まれたタトゥーは、なぜか背徳感が激しく刺激された。
そしてジレーザは無意識に依斗のタトゥーを、ひんやりとした指先で緩やかになぞる。
「ぁんっ」
気絶したように眠っているはずの依斗が、思いもしない甘ったるい声を出したので、ジレーザはようやくそこで我に返って咳払いをした。
どうしてだか分からないが、この男は危険だと、ジレーザの中で警報のように心臓が早鐘を打つ。
止まっていた手を動かして依斗に服を着させると、すっかり沈静化した箇所から目を逸らして、そのことを思い出さないように大きく首を振る。
そして何気なく視線を移した先に走り書きを見つけ、ジレーザはサイドテーブルからその紙を手に取り、書かれた内容を食い入るように見つめた。
聖人が聖剣を扱うと性衝動が抑え切れずに暴走する件について、依斗が纏めたのだろう考察が書かれていて、そのことを調べるためか魔力に関する書物が傍に積まれている。
「これを一人で調べていたのか」
下劣な単語を聞かされてそのことばかりに気を取られていたが、依斗は本来知性的で頭の回転は恐ろしく速く、ジレーザが思い付きもしない考え方や視点を持っている。
その依斗が書きまとめた用紙には、聖剣は聖人の膨大な魔力を吸い尽くして形を留めると書かれている。
通常の魔力枯渇ならば極度の倦怠感を生むが、大抵はそこに至るまでに魔力の行使を制限し、枯渇することを回避するのでジレーザ自身には魔力が枯渇した経験はない。
ジレーザは部屋の隅に無造作に立て掛けられた聖剣〈ネグロシス〉を視界に入れると、再び依斗に視線を戻して白い手を握り、試しに魔力をゆっくりと流し入れる。
だが意に反して魔力は急激に依斗の中に雪崩れ込み、ジレーザはあっという間に魔力が枯渇してその場に倒れ込んだ。
依斗は手を繋がれたままジレーザが倒れたことで目を覚まし、繋がれた手の先でガタガタと震えるその様子に驚いてベッドから飛び降りる。
「おいジレーザ、しっかりしろ」
「……ト様」
依斗を呼んでいるのか、掠れた声はただ事ではない状況を表している。
依斗は慌ててジレーザを抱き上げてベッドの上に寝かせると、部屋を飛び出して近くに控えていたネルディムを捕まえた。
「回復魔法か薬でもなんでもいい。急いでくれ! ジレーザが倒れた」
動転した様子で声を荒げると、ネルディムは血相を変えて依斗の腕を掴んで部屋に駆け戻った。
依斗の体調を心配してネルディムが世話を申し出るが、ジレーザは依斗ではなく、聖人の尊厳を守るためにこれを丁重に断り、自分が世話をすると説明する。
そうしてジレーザが部屋に戻ると、精魂尽き果てた依斗が白目を剥いてベッドに横たわっていた。
「どうしてこう、緊張感のない男が」
ジレーザは呆れたように呟くと、洗面用の手桶に魔法で水を張り、柔らかい布を底に浸して溜め息を吐き、絞った布を手に依斗の元に近付いてまた溜め息を吐く。
「なぜ私がこんなことを」
顔を歪めたまま、ブランケットを剥がして依斗の体を清めてやると、先ほどは熱り立つ存在のせいで目に入らなかった、依斗の白い肌に刻まれたタトゥーが目に入って手を止める。
サーチェスにおいても、民族によっては成人の証として刺青を入れる習慣があるが、依斗の腰元から局部近くに刻まれたタトゥーは、なぜか背徳感が激しく刺激された。
そしてジレーザは無意識に依斗のタトゥーを、ひんやりとした指先で緩やかになぞる。
「ぁんっ」
気絶したように眠っているはずの依斗が、思いもしない甘ったるい声を出したので、ジレーザはようやくそこで我に返って咳払いをした。
どうしてだか分からないが、この男は危険だと、ジレーザの中で警報のように心臓が早鐘を打つ。
止まっていた手を動かして依斗に服を着させると、すっかり沈静化した箇所から目を逸らして、そのことを思い出さないように大きく首を振る。
そして何気なく視線を移した先に走り書きを見つけ、ジレーザはサイドテーブルからその紙を手に取り、書かれた内容を食い入るように見つめた。
聖人が聖剣を扱うと性衝動が抑え切れずに暴走する件について、依斗が纏めたのだろう考察が書かれていて、そのことを調べるためか魔力に関する書物が傍に積まれている。
「これを一人で調べていたのか」
下劣な単語を聞かされてそのことばかりに気を取られていたが、依斗は本来知性的で頭の回転は恐ろしく速く、ジレーザが思い付きもしない考え方や視点を持っている。
その依斗が書きまとめた用紙には、聖剣は聖人の膨大な魔力を吸い尽くして形を留めると書かれている。
通常の魔力枯渇ならば極度の倦怠感を生むが、大抵はそこに至るまでに魔力の行使を制限し、枯渇することを回避するのでジレーザ自身には魔力が枯渇した経験はない。
ジレーザは部屋の隅に無造作に立て掛けられた聖剣〈ネグロシス〉を視界に入れると、再び依斗に視線を戻して白い手を握り、試しに魔力をゆっくりと流し入れる。
だが意に反して魔力は急激に依斗の中に雪崩れ込み、ジレーザはあっという間に魔力が枯渇してその場に倒れ込んだ。
依斗は手を繋がれたままジレーザが倒れたことで目を覚まし、繋がれた手の先でガタガタと震えるその様子に驚いてベッドから飛び降りる。
「おいジレーザ、しっかりしろ」
「……ト様」
依斗を呼んでいるのか、掠れた声はただ事ではない状況を表している。
依斗は慌ててジレーザを抱き上げてベッドの上に寝かせると、部屋を飛び出して近くに控えていたネルディムを捕まえた。
「回復魔法か薬でもなんでもいい。急いでくれ! ジレーザが倒れた」
動転した様子で声を荒げると、ネルディムは血相を変えて依斗の腕を掴んで部屋に駆け戻った。
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