聖女召喚でなぜか呼び出された、もう30のお兄さん(自称)ですが、異世界で聖人することにしました。

藜-LAI-

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4.聖人始めます②

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「でもあれは、囁きを意識したんだぞ」
「そもそも媒介も無しに、魔法を使うこと自体ありえない事なんですよ」
「え、そうなの」
「そうです。昨日ご説明しましたが」
 ハリスのムッとした顔に苦笑すると、依斗は魔力と魔素の関係について頭の中の記憶を浚う。
 魔法を発動するために必要な魔力は体内で循環しているが、それ単体では魔法を発動出来ず、大気中の魔素と掛け合わせて初めて魔法として出力することが可能になる。
 つまり火を燃やすための酸素が体内に巡っていても、火種となる物や可燃物がない限り、息を燃焼させることは出来ないというのに意味は近いのだろうか。
 ハリスが言う媒介は、杖や特殊な宝石らしいが、要約するとライターやマッチのような物に当たるのか、依斗はそれを使わなくても火を起こして炎を生み出すことが出来る状態だ。
 そういった理屈であれば、確かに媒介も無しに魔法が発動出来るのは、ハリスが言うように異能としか言いようがないのも頷ける。
「聞いてますか、ヨリト様」
「ああ、悪い。昨日の講義を思い返してた」
「とにかく、魔力の流れを意識できるまでは、絶対に魔法を発動させてはなりません」
「緊急時でも?」
「当たり前です」
「回復魔法くらいは見逃してくれよ」
「ヨリト様、貴方はご自身のお立場を理解なさってないのですか」
 ハリスは呆れたように肩を落として溜め息を吐く。
「お立場って」
「貴方は聖人様です。御身になにも起こらぬように必ず誰かが付き添いますし、御身をお守りするために、それなりの能力がある者しか貴方のお側に仕えることはないのです」
「じゃあなんのために魔力の勉強してるんだよ」
「聖剣の扱いに必要となる、重要な力だからです」
「ああね」
 依斗が適当な返事を返すと、タイミングよく十五時を知らせる鐘が鳴った。
「もうそんな時間でしたか。では本日の講義はここまでと致します」
「あざした」
「ヨリト様!」
「ごめんってば。ありがとうございました」
 依斗はハリスを揶揄って肩を揺らすと、ハリスのご機嫌をとりながら部屋の片付けを済ませて、昼食を取るために食堂に移動する。
「ああ、今日から剣術の指南があるんだったか」
「ええ。エントリノ騎士団から、聖騎士パラディンのリュミナス様がお見えになります」
「聖騎士」
「はい。お優しい方ですので、すぐに打ち解けてお話が弾むと思いますよ」
「へえ」
 ピアリス内部の複雑に入り組んだ通路を通り、ハリスを揶揄いながら食堂に到着すると、配膳の順番を待つ列に、二日ぶりに見掛けるジレーザの姿があった。
「よう」
「これは、ヨリト様。なかなかお会いする機会が持てませんが、魔力の講義は順調に進んでおいでですか」
「まあね。ハリスは教えるのが上手い」
 隣で最高神官を目の前に萎縮するハリスの肩を叩いて抱き寄せると、ジレーザは困ったように笑ってから、それは良かったですとハリスに笑顔を向ける。
「本日から剣術の指南が入りますが、お困りのことがあればいつでもお申し付けくださいませ」
「まだ詳細が分かってないのに、ちょっと予定を詰め過ぎだと思うんだけど」
 禁書などの単語は伏せて遠回しに依斗が牽制すると、ジレーザは分かっていますと断りを入れる。
「それに関しては、剣術指南の後にお時間をいただく予定です」
 暗に今ここでの話は避けると返答されて、依斗は仕方なく頷くと、その場でジレーザと別れてハリスと一緒に昼食を取った。
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