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3.異世界サーチェス④

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「ああ、この神話に関しては古い表現が多いから、辞典の類がないと意味の本質を捉えるのは難しいかな。でも聖典と創造主の教えに関しては普通に読める文章だな」
 依斗が文章を読み上げると、ジレーザは感心したように嘆息し、一つの提案を持ち掛ける。
「ヨリト様にお願いが御座います」
「ん?」
「禁書庫の閲覧許可が降りた際に、是非とも禁書の解読にご協力を願いたいのです」
「なんで」
「お恥ずかしい話ですが、サーチェスの識字率はそう高くなく、教会の神官でも古代文字、ヨリト様の表現をお借りするならば、古語を解読出来る者は限られております」
「なるほど? でも俺だってさすがに古語は辞典の類がないと意訳的になるし、間違った解釈になるぞ」
「文字が読めるだけで、十人の神官にも優るのです。是非ともご協力をお願いしたく存じます」
「つまり俺は、俺自身のために禁書を解読する必要がある訳だな?」
「大変申し訳ないのですが、その類い稀なる才をお借りしたく存じます」
 申し訳なさそうにジレーザは頭を下げるが、依斗は元々勉強ばかりで、本を読むことに抵抗はない。
 それに一ヶ月近く、いやこちらの暦では二十日程度なのだろうが、なにもせずに待つよりは建設的な話ではあるし、聖人について湾曲した説明をされて誤魔化される心配もなくなる。
 手間と時間の掛かる作業ではあるだろうが、依斗にとってメリットの方が大きいのは明らかなので、少し逡巡してからジレーザを見つめると、協力はすると返答した。
「それは良いとして、聖剣についても質問したい」
「なんなりと」
「刀身が光り輝いていたのは、聖人たる力のせいなのか、それとも聖人が持つ魔力のせいなのかどっちだ」
 ジレーザが寄越したサーチェスの本には、魔力についての記述があった。
 依斗はそれを見逃さず、わざわざ異世界から呼び寄せる聖女や聖人には高い魔力があるのではと考えてジレーザの返答を待つ。
「仰る通り、聖人であるが故の強い魔力によるもので御座います」
 やはり思った通り、元の世界では考えられない話だが、依斗自身が魔力を保持しているということになる。
「残念だけど、俺は魔法や魔術、魔力に関する存在が確認されてない世界から来た。だから魔力で聖剣が扱えると言われても、魔力の使い方すら分からないぞ」
「それに関しては問題御座いません。過去に召喚された皆様も同じ境遇にいらしたので、魔力についての講義の支度は整って御座います」
「なら、禁書の解読と並行して魔力について学べと?」
「ご負担にお感じになるかも知れませんが、魔力操作に関してはそう難しいことではありませんので、どうかご安心ください」
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