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第十四章 まずはコレをどうにかしないと

第331話 やっぱり、いっぱい居たよ…

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 父ちゃん達がガサ入れを始めて。
 ホールに残ったのはおいらとオラン、それにお義父さん(シタニアール国王)の三人。
 如何にも戦えそうもない姿のおいら達三人を見て。
 形勢逆転のチャンスと踏んだ冒険者が、おいら達を取り囲んだよ。

「ふむ、やはり冒険者なんぞしている者は姑息じゃのう。
 私達が御し易いと踏んで、人質に取ろうというのじゃから。」

 オランは、心底呆れたと言った表情で、そんなことをボヤいてた。

「襲い掛かって来た連中は、なるべくおいらが相手をするから。
 オランは、お義父さんが危なくないように護ってちょうだいね。」

「了解なのじゃ。
 背後の輩と父上の護衛は任せてくれなのじゃ。」

 おいらが声を掛けると、オランは阿吽の呼吸で返事を返してくれたよ。

「いや、その、十歳児に護ってもらうなど、私の立場が無いぞ。
 一応、私だって先祖代々受け継いで来たレベルがあるし。
 若い頃に指導の騎士から、一通り剣の振り方は手解きを受けているのだが。」

 腰に下げた装飾過多の剣に手を掛けてそんな愚痴を零すお義父さん。
 国王ならレベル五十以上はあるだろうし。
 多分敵さんもロクに剣の振り方なんか修練してない連中だろうから、後れを取ることは無いだろうけど。
 流石に、他国の国王にならず者と喧嘩させる訳にはいかないからね。

「平気、平気、危なくなったら助けてもらうから。
 お義父さんは、そこでのんびり見ていて。
 直ぐに片付けちゃうよ。」

 おいらが、お義父さんにそんな声を掛けると。

「けっ、メスガキが一丁前の口を利きやがって。
 俺達をすぐに片付けるだぁ?
 ナマ言ったことを、後悔するなよ!」

 侮られたと思ったのか、キレた冒険者が斬り掛かって来たんだ。
 でも、その剣筋はヘロヘロで鋭さの欠片も無かったよ。

「ニイチャン、冒険者を名乗るなら。
 昼間っからこんなところに燻ぶってないで魔物狩りでもしたら。
 体が鈍っているから、剣もロクに振れてないじゃない。
 冒険者を名乗る資格無しだね。」

 おいらはそいつの剣を軽く躱して、剣を握る手の甲を軽く殴って粉砕したの。
 手の甲の骨を砕かれ剣を取り落とした冒険者は、痛みに耐えかねてその場に蹲っちゃった。
 おいらはそいつの後ろ襟を掴むと、取り囲んでいる連中へ向かって力任せ放り込んだよ。

「このメスガキ、バケモノか!
 大の大人を腕一本で放り投げたぞ。」

 投げ飛ばされた冒険者が取り囲む人垣の一画を突き崩すと、そんな驚きの声が上がっていたよ。

「おい、このメスガキ、舐めてかかるとえらい目に遭うぞ。
 一対一になるな、何人かで連携してボコるんだ。」

 誰かがそんな指示を飛ばすと、それに呼応し今度は三人掛かりで斬り掛かって来たよ。
 とは言え、怠惰な冒険者のこと、『STD四十八』の連中みたいに連携の訓練なんかしている訳もなく。
 三人てんでバラバラに斬り掛かって来るから、避けるのは簡単だった。
 スキル『完全回避』の出番が無かったよ。

 おいらは、三人の剣を躱しざまに、相手の腕に一撃こぶしを入れて剣を持てなくしていったの。
 利き腕の骨を粉砕されて、痛みの余り蹲る三人の冒険者崩れ。

 それを目にした他の冒険者は。

「おい、こっちのメスガキはヤバいぞ!
 もう一人と年寄りを人質に取って、そのメスガキの抵抗を封じるんだ。」

 おいらに敵わないと見ると、案の定、オラン達の方を人質に取ろうとしたんだ。

「そなたら、何で、犬コロみたいに条件反射で動くのじゃ。
 私の方が弱いと何の根拠で決めつけておるのじゃ。」

 オランは再び呆れた様子で呟くと。
 お義父さんを背後に庇いながら、襲い掛かって来た冒険者を鞘に納めたままの剣で殴り飛ばしていたよ。

 オランが五人ほど冒険者を殴り飛ばしたところで、後続が途絶えたよ。
 とても敵う相手ではないと悟ったみたい。

「何だ、こっちのメスガキも鬼のように強えじゃないか。
 こいつら一体何モンだ。」

 おいら達を遠巻きに囲んだ冒険者達からそんな声が聞こえて来たよ。
 ここでもオランは女の子だと思われてる。

「ニイチャン達、酒場とかで噂話を聞いたこと無いかな。
 『ウサギに乗った二人の幼女』って。」

 おいらがその言葉に答えてあげると。

「そう言えば、街で噂になってたな。
 年端のいかない小娘の二人組が、辺境で騎士を狩り回っているって。
 何の冗談かと思ってたら、キーン王家もそいつらにやられちまったらしいじゃねえか。
 その小娘が、ヒーナルに代わって王になったとか…。」

 噂を耳にしていた冒険者が周囲に聞かせるように言うと、途中で言葉に詰まったの。
 そいつ、顔を青くしているし、どうやら、おいらがその女王だと気付いたみたい。

「そう言うこと。
 取り敢えず、おいらに斬り掛かって来た四人は大逆罪だね。
 問答無用で死罪、これは動かないはず。
 後、女の子に見えるかも知れないけど、オランはおいらの旦那様。
 年寄りなんて酷い言われ方してたのは、旦那様のお父さん。
 シタニアール国の国王様ね。
 オランに斬り掛かった五人の罰は宰相に聞かないと分からないな。
 多分死罪だろうけど…。」

 おいらは、マヌケな冒険者たちに、犯した罪がどんなものか説明してあげたよ。

「分かったら、大人しく椅子にでも座っておるのじゃ。
 法に背いていなければ、罰せらることも無いのじゃからな。
 逃げだそうなどと思わぬ方が身のためじゃぞ。」

 オランが周囲の冒険者に指示すると、皆スゴスゴと元いた場所に戻って行ったよ。
 自分が犯した罪に身に覚えがある連中は顔が青褪めていたよ。

       **********

 おいらとオランが打ちのめした連中を縛り上げていたら、父ちゃん達が戻って来たよ。

「おや、マロン、何かあったのか?
 転がっている数が増えているようだが。」

 おいらが縛り上げている男達を見て父ちゃんがそんなことを尋ねてきた。
 父ちゃんの後ろには、おいらが用意した服を着た若いお姉ちゃんが十八人も並んでいたよ。

「父ちゃん、お疲れさま。
 こいつら、父ちゃんが居なくなったら、襲って来たの。
 おいら達を人質にして、父ちゃんに手を引かせたかったみたい。」

「バカな奴らだ。
 相手の力も推し量れないくせに狂犬のように噛み付きやがって。
 ここにいる中でマロンが一番強いと言うのに…。」

「昼間からこんなところで燻ぶっている連中だから仕方がないよ。
 それより、後のお姉ちゃん達はここに拉致監禁されてたのかな。」

「ああ、地下の隠し部屋に監禁されていたんだ。
 一階と地下は隈なく探したが、監禁されていたのはこの十八人だけだな。」

 父ちゃんは、これから二階より上も捜すって言ってたよ。

「あと、こいつら、強姦の現行犯だ。
 とんでもないな、真昼間からサカリやがって。
 ほれ、とっとと歩きやがれ!」

 父ちゃん達に遅れてタロウが素っ裸のむさい男達を連れて来たよ。
 その数、二十二人、全員が父ちゃんとタロウに懲らしめれたみたいで、体中を痣だらけにしてた。
 後ろ手に縛られた上に、全員が首に縛った一本の縄で繋がれてて、縄の先をタロウが握ってた。

「タロウもお疲れ。
 そいつらは、拉致監禁に強姦が加わるから…。
 やっぱり、死罪だね。」

 おいらがそう告げると。

「おい、何だよ、その死罪ってのは!
 いきなり乗り込んできて、こんな仕打ちをしたうえ。
 女を拉致って抱いたくらいで死罪なんて、そんなの横暴だろうが!」

 目の周りに青痣を作ったニイチャンが、醜い裸体を晒しながら吠えたよ。

「何言ってるの?
 少し前から、広場に掲示板にお触れ書きを掲げているでしょう。
 冒険者及び冒険者ギルドに対して、女性の拉致監禁や女性に対する暴行・強姦を禁止するって。
 違反した場合の罰則もちゃんと書いてあったよね。
 拉致監禁した女性を強姦した場合は死罪とちゃんと書いてあったよ。」

 おいらの言葉を聞いて、文句を言ってニイチャンは青褪めていたよ。
 一緒に捕まっている二十一人もね。
 だから、ちゃんとお触れ書きを見ておかないと…。 

「さて、お姉ちゃん達、助けに来るのが遅れてゴメンね。
 今から、みんな自由だよ。
 さっき、このギルドの金庫から有り金を没収したから。
 一人当たり銀貨十万枚は慰謝料を払えると思うよ。
 それと、お姉ちゃん達に酷いことした人は全員罰するから。
 協力して欲しいんだ。
 今ここに居る連中で、お姉ちゃん達に酷いことした連中を教えて。」

 すると。

「それは、本当かい。
 私達を奴隷のように使った連中を、全員罰してくれるんかい。」

 おいらの言葉を聞いたお姉ちゃんの一人が尋ねてきたの。
 おいらがそれに頷くと。

「おい、みんな、こちらのお貴族様が女の敵を罰してくれるそうだ。
 私達に跨った薄汚ねえゴミ共を告発してやろうぜ。」

 他のお姉ちゃん達に向かって気勢を上げてたよ。
 その後は、父ちゃんとタロウが手分けして、お姉ちゃん一人ずつに付いて悪さをした冒険者を拘束してた。

 当然、後ろめたい連中の中には捕まる前に逃げ出そうとする連中もいる訳で。

「ダメだよ、ニイチャン、こっそり逃げ出そうなんて。」

 おいらは、裏口と思われる扉の前に立ち塞がって、逃げ出そうとしている一団を制止したよ。
 裏口を塞がれた連中は、振り返って正面入り口の方を見て…。
 そこにオランが立ち塞がっているのを確認すると、力なく項垂れたよ。
 どうやら、逃げ出せないと理解して観念したみたい。

 結局、その場にいた冒険者の大部分は、お姉ちゃん達に酷いことをしていたの。
 お縄にしたのは五十人以上、でも、それで全員ではないみたい。
 今ここに居ない冒険者とか、こらからガサ入れする二階以上にいるギルドの職員とか。

 そんな訳で、これから二階より上をガサ入れしようかと思っていると。

「マロン、待たせたわね。
 頼まれた通り、トシゾー団長と騎士団員を連れて来たわ。
 もう大分進んでいるみたいね。」

 アルトが、トシゾー団長とその配下の騎士五十名ほどを従えてやって来た。
 アルトには、捕縛した冒険者を連行するための騎士を呼びに言ってもらったんだ。

「陛下、御自ら、冒険者ギルドに出向くとは何事ですか。
 御身にもしものことがあったら、どうなさるおつもりです。」

 おいらと顔を会わせると早々に、トシゾー団長がお小言を言ってきたよ。
  
「ゴメンね。今日は父ちゃんの初仕事だから。
 父ちゃんの活躍が見たくて、つい、付いて来ちゃった。
 トシゾー団長、早速で申し訳ないけど。
 ここに捕縛した連中を、牢屋に放り込んでおいて。
 それと、このお姉さん達を王宮の一室で保護しておいて。
 おいら、お姉ちゃん達に話と渡すものがあるから。」

 おいらは、トシゾー団長のお小言を躱すべく、軽く謝ると同時に仕事を命じたよ。
 ついでに捕縛した連中の罪状を簡単に補足すると。
 トシゾー団長は冒険者の行いに凄く腹を立てて、速やかに仕事に移ってくれたよ。
 冒険者の無法に対する怒りの余り、おいらへのお小言などすっかり頭から抜けちゃったみたい。

 冒険者たちを連行するトシゾー団長を見送ると、おいら達は二階より上のガサ入れに移ったの。
    
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