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第五章 王都でもこいつらは・・・

第104話 それは余りにも、やることがセコイよ…

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 『スイーツ団』を訪ねてゴーヨクに会ってから、早一週間、あれから本当に妨害が無くなったんだ。
 困っちゃたのはおいら達の方で、辺境へ帰るにも帰れなくなっちゃった。
 この一週間、露店は毎日繁盛でお客さんが途切れないの。

「あいつら、私達が品切れを起こして店じまいするのを待っているのね。
 私達が一筋縄ではいかないもんだから、立ち去るのを待つことにしたみたいだわ。
 ゴーヨクは、私達が王都の者じゃないと知っているからね。」

 そんな事を呟いたアルト。
 アルトは、おいら達が王都を去ったら、『スイーツ団』はまたのさばり始めるだろうって。

「いやあ、あんた達が、ハチミツを元の値段で売ってくれるから助かるよ。
 でもねえ、『スイーツ団』っていうゴロツキは健在なんだろう。
 あんた達が、帰っちまったら、また『ハチミツ』を高く売りつけるんだろうね。
 イヤだよ、あんな輩、いなくなっちまえば良いのにねえ。」

 ハニートーストが大好物だと言うおばさんが、何度目かの『ハチミツ壺』を買いに来て言ってた。
 王都のおばさん達が口々に、『スイーツ団』に対する心配を言うものだから、帰るに帰れないの。
 こんなに長い間、王都に留まるつもりは無かったので、手持ちが底をついちゃったよ。
 『砂糖』も、『ハチミツ』も、『メイプルシロップ』も全部。

 なもんで、ここ数日、露店を閉めたらトレント狩りに行って、手持ちを補充しているんだ。
 アルトがサッと空を飛んで、三人でパパっと狩って、一瞬で『積載庫』に詰め込めるから日帰りできるけど。
 普通の冒険者じゃ無理だね、荷馬車でトレントの森に行くだけでも一日掛かりだもの。
 トレントを狩るのも、その『実』を拾い集めるのも、結構時間がかかるからね。

 アルトのおかげで、露店を閉めてから行っても、翌朝には店を広げられるから助かるよ。
 
      ********

 そんな訳で、『スイーツ団』の妨害が止み、店を続けて一週間ほど経ったとき。

「おい、ここで、『砂糖』やらなんやらを手広く売ってるってのおめえらか?」

 ガラの悪い、絵に描いたような冒険者の三人組がやって来たんだ。
 でも、おいら達のことをよく知らないようで、『スイーツ団』とは別口みたいな気がする。

「うん、そうだよ。 兄ちゃん達、何の用かな?」

 おいらが尋ねると。

「てめえらが、ここで店を広げているもんだから。
 『スイーツ団』に『シュガーポット』を売りに行っても買い取ってもらえねえんだよ。
 何でも、おまえらのせいで在庫が過剰になっちまって買い取れねえと言われちまったんだ。
 『在庫』とか、『過剰』とか小難しいこと言われてもわかんねえが。
 こちとら、苦労してシュガートレントを狩って来たんだ。
 買い取ってもらえないと、大損だぜ。
 おめえら、迷惑だから、とっとと出て行け!
 さもなければ、痛い目に遭わせるぞ!」

 おいらを怒鳴り付けた冒険者の兄ちゃん、腹に据えかねたという感じだった。
 『スイーツ団』のやつら、そう来ましたか。
 甘味料が売れないからと言って買取りを止めて、然もおいら達が悪いように言い触らしてるんだ。
 それで、冒険者においら達の邪魔をさせるんだね、我関せずで。

「ねえ、兄ちゃん、『スイーツ団』が買取りをしないなら、おいらが買い取ってあげるよ。
 『スイーツ団』へ売ると一つ銅貨四十五枚でしょう。
 おいら達なら、一つ銅貨五十枚で買い取ってあげるよ。
 そうじゃなければ、ここでおいら達みたいに自分で売れば良いよ。
 一つ銀貨一枚で売れるから、超お得だよ。」

 『スイーツ団』の連中、買取り価格銅貨五十枚と言いつつ、手数料を一割取っているから。
 冒険者の手取りは銅貨四十五枚なんだ。
 『スイーツ団』が出来る前はお店に直接持って行けば銅貨五十枚で買い取ってくれたんだけど。
 今は、『スイーツ団』に脅迫されて、お店じゃ銅貨三十枚でしか買い取ってもらえないの。

「バカ言え、そんな事をしたら『スイーツ団』に目を付けられちまうじゃねえか。
 あそこの親分は、広域指定冒険者ギルド『アッチ会』の理事長をやってたお人で。
 『マムシのゴーヨク』って呼ばれて恐れられている人なんだぜ。
 ゴーヨクに睨まれたら、地獄へ行くまでしつこく追い込みをかけられるぜ。
 それに、手下の『STD四十八』の連中もおっかねえしな。
 『松葉崩しのジョー』なんて、笑顔で近付いて来ていきなり匕首でズブリなんだぜ。
 おめえらに売るのもヤベえが、露店なんか出した日にゃその日のうちにお陀仏だぜ。」

 『STD四十八』の連中、唯の雑魚かと思ってたら、冒険者の中じゃ二つ名がつくほど恐れられてるんだ。
 『松葉崩しのジョー』とか…。

 でも、それなら。

「兄ちゃん、『STD四十八』の連中だったら、一週間前に王都の人達に袋叩きにあってたよ。
 多分、今治療中で何もできないよ。
 おいらも、大分、あいつらのスネやら手首の骨をへし折っちゃったから治療は長引くと思う。
 若頭と呼ばれている人と『ホシガキ隊』っていう三人組もやっつけちゃったよ。
 『スイーツ団』の連中なんて、もう怖くないからここで売っていきなよ。
 『スイーツ団』に売るより銅貨五枚お得だよ。」

 おいら、一週間のことを目の前の三人組に話して上げたよ。
 すると、…。

「なあ、銅貨五十枚で買い取ってもらえるなら、ここで売っちまったらどうだ。
 せっかく採って来た『シュガーポット』千個、俺達の住処には置く場所もねえぞ。
 『STD四十八』と『ホシガキ隊』がやられちまったんなら実働部隊はいねえし。
 一回くらいここで売っちまっても足はつかねえだろう。」

 もう一人がそう言うと、残る一人が。

「俺も賛成だ。
 俺、借金を返さねえといけねえから、『シュガーポット』が売れないと困るんでえ。
 『STD四十八』も、『ホシガキ隊』も出て来れねえんだったら今がチャンスだぜ。」

 そう言って、おいら達に売ることに賛成したんだ。

    ********

 結局。

「はい、確かにシュガーポット千個あったよ。
 これ、代金の銀貨五百枚ね。」

 三人組はおいら達に砂糖を売ることにして、荷車を持って来たんだ。
 このお兄ちゃん達、ガラは悪いけど冒険者としては真っ当そうだよ。
 街中で強請りゆすりなんかしてないで、ちゃんとトレント狩りで稼いでいるようだし。
 話しを聞いてると、どうやらレベル持ちみたいで、三人だけでトレント狩れるみたい。
 
「なあ、俺達、計算が出来ねえから、それ三人それぞれに分けてくれねえか。」

 また面倒な事を、五百枚じゃ三等分は出来ないよ。
 おいらは、机に置いた売上金をいれた箱から新たに銀貨を一枚取り出して。

「銀貨五百枚だと、三で割り切れないから、一枚イロを付けてあげるね。
 兄ちゃん達、最初の買取客だから、サービスしとくよ。
 はい、五百一枚を三等分したから、一人当たり百六十七枚ね。」

 おいらは、先に差し出した銀貨五百枚の山に一枚加えて、目の前で三等分して渡したんだ。
 目の前でやるのが大事、ちょろまかしたと因縁つけられないため。

「おめえ、ちっこいのにすげえな。
 あっという間に計算して、分けてくれるんだもんな。
 うん、銀貨百六十七枚だって? これ、多過ぎないか。」

 おいらが、ささっと計算して三人に分けたら、最初は感心してたんだけど。
 受け取った銀貨の数を聞いて、多いって言い出したんだ。
 少ないって難癖つける冒険者を警戒していたんだけど、多いって言われるとは思わなかったよ。

「冒険者ギルドの買取は、一つ銅貨四十五枚だから、千個なら銀貨四百五十枚。
 一人当たり百五十枚だから、それに比べれば多いよ。」

「いや、違う、俺達は『スイーツ団』に持ち込むのは千個ちょうどにしてるんだ。
 なんか、キッチリの数を上回ると手数料が高くなるって聞いたんでな。
 だから、持ち込む数はいつもと同じにしてたんだが…。
 俺達、いつも銀貨百四十枚しか受け取ってないぞ。
 千個で、銀貨四百五十枚、三人で分けると一人百四十枚だと言って渡されるんだ。」

 おい、…。
 あいつら、多くの冒険者が計算できないのを知ってて、支払いを誤魔化してやんの。
 いや、あいつらの事だから、計算の手数料だと言い張るかも知れないけど。

「呆っきれた!
 あいつら、冒険者が無知なのを利用してそんな悪どいことしてるの!
 あんた達、ずっと支払いをちょろまかされているわよ。 
 いい歳して、計算が出来ないなんて情けないこと言ってないの。
 習えば、子供にだってできる事よ。
 酒飲んでクダまいてる暇があったら、少し勉強しなさいよ。」

 アルトってば、呆れて説教を始めたよ。

「いや、面目ねえ。
 そっか、『シュガーポット』千個持ち込んだら、銀貨百五十枚貰わないとダメなんだ。
 良いこと教えてもらったぜ、今度、『スイーツ団』の野郎に文句言ってやる。
 教えてくれて有り難うよ。
 他の冒険者連中にも、言っとくぜ。
 ここなら、高く買い取ってくれる上に、ちょろまかしが無いって。」

 兄ちゃんは、来た時の喧嘩腰の態度とはうって変わって、上機嫌で帰って行ったよ。
 帰り掛けに、また来るって言ってた。

 しかし、『スイーツ団』、やる事がセコイ…。
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