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第18章 冬、繫栄する島国で遭遇したのは
第519話 辛い選択が行われていました
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翌日、再び炊き出しをしに小アルビオン島へむかおうとしたら。
「シャルロッテ様、今日も私をお連れください。
私も飢えで苦しむ島の人を放ってはおけません、少しでもお役に立ちたいのです。
土地勘のある私がご一緒した方が、幾らかでも手際よく回ることが出来るかと。」
メイちゃんが申し出てきました。
飢餓状態の上に無茶な旅をしてきたのですから、メイちゃんも大分体が弱っているはずです。
そのため、しばらくは館で静養してもらおうかと思っていました。
ですが、同行すると言うメイちゃんの瞳には強い意志が込められていました。
「そう言ってもらえると助かるわ。
地元の人が一緒にいれば、あまり警戒されないで済むでしょうからね。
でも、無理は禁物よ、疲れた時は馬車の中で休んでいてね。」
どうやらあの島では貴族に抱いている感情が良くないようですので、メイちゃんが一緒だと助かります。
メイちゃんも加わり、今日のメンバーは炊き出し係のノノちゃんとナナちゃん、運搬係のアリィシャちゃん。
そして、どうしても一緒に行くと譲らない癒し担当のサリーとエリーです。
トリアさんには、メアリーさんと一緒に子供の保護施設の準備をお願いしてあります。
「まま、きょうも、たくさん、たすけられるといいね。」
「うん。まま、がんばって。
さむいのも、おなかがすくのも、かなしいから。」
私とノノちゃんの膝の上で、サリーとエリーがそんな言葉と共に私に期待の眼差しを向けてきました。
これは、この二人の期待を裏切る訳にはいきませんね。
「ママ、頑張っちゃうわよ。
子供達にひもじい思いも、寒い思いもさせないわ。」
そう答えると、二人はとても嬉しそうに笑みを浮かべました。
本当に、天使のような笑顔です。
**********
二人の笑顔に癒されながら、馬車で空を行くこと二時間ほどメイちゃんの村の隣村に到着します。
少し手前で、着地し地上を走らせて村に入ろうとすると。
「おい、お貴族様がこの村に何の用だ。
この村には、俺達から取り上げられるようなものは何も残っちゃねえぞ。
小麦も、大麦も全部持ってかれちまった、僅かな貯えだって税で取り上げられちまって。
今村に残っているのは、あと何日食いつなげるかわかんねえチットばっかりのジャガイモだけだ。
まさか、それすらも取り上げようって言うんじゃないだろうな。」
馬車の行く手を三人の青年に塞がれ、うち一人がいきなり喧嘩腰で話しかけてきました。
通常、貴族にこのような口の利き方をすると激しく叱責されるものですが…。
どうやら、相当貴族に対する不満が鬱積しているようです。
もはや、反乱寸前と言ったところですね。
「あっ、村長さん所のお兄ちゃん、私、隣村のメイだよ。
ちょっと、話を聞いて。」
メイちゃんが馬車に向かって威嚇してきた青年に声を掛けます。この青年、村長さんの息子さんのようですね。
「うん? 隣村のメイだって?
なんだ、おまえ、どうした。
そんなお貴族様のような格好しちまって。」
青年はメイちゃんと顔見知りのようで、怪訝な顔で尋ねてきました。
「助けてくださる方を連れて来たの。
安心してこの国の貴族じゃないから。
うちの村の人達も昨日、助けてもらったの。
この村も助けてくださるって。」
メイちゃんはそう言うと、私と出会ってからのことを簡単に説明していました。
メイちゃんの話があらかた済んだのを確認して、私は馬車を降りました。
「あんたが、メイの言っていた遠い国の女王様か?
俺達を助けてくれると言うのは本当なのか?
何の見返りも要求せずに。」
「ええ、そのつもりよ。
私は、シャルロッテ・フォン・アルムハイム。
女王様って言われるほど格上ではないけど。
アルムハイム公国という小国の大公をしているわ。
まずは先に炊き出しをしましょう、お腹が空いているでしょう。
詳しい話はその後でゆっくりするわ。」
メイちゃんの説明のおかげで、私が自己紹介すると青年たちは警戒を解き村の中へ入れてくれました。
幸いと言ったら叱られるかもしれませんが、この村では亡骸が放置されている事はありませんでした。
それに、みんな痩せてガリガリですが、男の人もちゃんと生き残っています。
私は青年に生き残った村人を全員広場に集めるように指示しました。動けなくなった人も含めて。
その間に、私達は炊き出しの準備にかかります。
昨日、一回行っているので、段取りはかなり良くなりました。
すぐにアリィシャちゃんが王都の館に魔法で転移すると、大地の精霊ノミーちゃんがカマドを作り始めます。
ほどなく、アリィシャちゃんから鍋や薪、そして食材が転送されて来ました。
重い鍋を、私が魔法で浮かべてカマドにセットすると、水の精霊アクアちゃんが鍋に水を満たしてくれます。
ノノちゃんがカマドに薪を入れると、火の精霊セラちゃんがあっという間にカマドの中を炎で満たしてくれました。
その時には、ノノちゃんとナナちゃんが食材を鍋に放り込んでいて、後は煮えてくるのを待つだけです。
予め下拵えをしてきたとはいえ、昨日に比べたら格段に手順が良くなっています。
「おい、おい、いったいこの馬車の何処にこんなものを積んであったんだ?」
飢餓状態に伴う衰弱で動けなくなった青年を背負って広場に戻って来た村長の息子さん。
私達が炊き出しの準備をしている様子を見て驚きの声を上げました。
「まま、すごいよね、まほうつかいなんだよ。
おうちから、まほうでもってきたの。」
サリーが、拙い言葉で精一杯説明しようとしていました。
でもそれでは私が魔法で取り寄せたみたいです。実際は、アリィシャちゃんが魔法で送ってくれたのに。
「魔法使い?」
村長の息子さんは、要領を得ないようで首を傾げて呟きました。
「娘の言う通り、私は魔法使いなの。
ここにある調理器具や食材は、私の魔法の弟子が王都に戻って送ってくれたのよ。
そして、炊き出しのためのカマドを作ってくれたのはこの子、大地の精霊ノミーちゃん。
この村の支援のために、他の精霊にも手伝ってもらうから驚かないでね。」
私はちょうど良いので、ノミーちゃんを紹介し精霊の存在を明かしました。
「精霊? 遠い国には色々と変わったモノがいるもんだな。」
などと言って、この国にも精霊がいる事を全然知らないようです。
この辺りでは精霊の伝承は廃れてしまったようですね。
これから精霊達に色々としてもらいます。
その時に、ビックリしないように存在を知っておいてもらえばそれで良いのですが。
**********
ノノちゃんとナナちゃんが炊き出しの準備をしている間に、水の精霊アクアちゃんに村人の健康状態を診てもらいました。
「大丈夫、かなり衰弱している人はいるけど、全員飢餓によるものね。
伝染病の発生は見られないわ。
私が『癒し』を施してきたから、あとは食べ物を与えれば全員回復するわ。」
広場に集まった百人以上の人を診て回ったアクアちゃんが報告してくれました。
「すげえもんだな。
さっき俺が背負ってた奴、もう全然動く力が残ってなくて。
次に天に召されるのはあいつだと思ってたのに。
そのお嬢ちゃんが光の雨を降らせたら。
むくっと起き上がって『はらへった』って言ったんだぜ。
俺、びっくりしたぜ。」
アクアちゃんが広場を飛び回るのについて回っていた村長の息子さんが言いました。
そうこうするうちに、炊き出しの準備が終り、昨日同様に具沢山のスープとパンを配ります。
私とノノちゃんでスープの入った器を配ると、サリーとエリーがパンを渡して回ります。
「美味しい…。こんな美味しいものを恵んでくださるなんて有り難いことです。」
「これが、パンと言うモノかい。私らが作った小麦からこんなモノが出来るんだね。」
そんな、食べ物を喜ぶ声や。
「まあ、こんな小さな子供が私達のために食べ物を配ってくれるなんて。
本当に天使様のような子達だね。」
サリーとエリーを褒める声などが広場にいる人々から聞こえてきます。
皆さん、久しぶりに口にする暖かい食べ物をとても喜んでくれました。
村の皆さんには、お腹一杯になるまで、スープもパンもお替りしてもらいます。
一時間もすると、空腹が満たされて、広場の雰囲気が穏やかなものに変わっていました。
「大公様、有り難うございました。
みんな、腹が膨れて人心地つくことが出来した。」
村長の息子さんが穏やかな表情で感謝の言葉を口にしました。
どうやら、私に対する警戒を完全に解いてくれた様子です。
「この村は、メイちゃんの村よりかなり大きな村なのですか?
このような事を口にするのは何なのですが…。
メイちゃんの村は四十三人しか生き残ることが出来なかったのです。
こちらの村は百人以上の方が無事だったようですが。」
すぐ隣の村で食糧事情がそんなに違うとは思えなかったので尋ねてみたのです。
生存率が同等ならば、メイちゃんの村の倍以上の人口がいたことになります。
「メイの村はそれだけしか、生き残ることは出来なかったのですか…。」
村長の息子さんは、私の言葉を聞いて悲痛な表情となり続けました。
「メイの住む村もこの村も、村の大きさはほとんど変わりません。
小麦が全部取り上げれちまうのも、ジャガイモが不作だったことも同じです。
どうしてこの村のモンがこれだけ生き残れたのか。
ここにいる顔ぶれを見て何か気が付きませんか。」
村長の息子さんに言われて、改めて広場を見渡すと、私はある事に気付きました。
それこそ、口に出して言うことが憚られるようなことを。
「気付きましたか、この村には年寄りが一人もいないでしょう。
村のジャガイモが凶作だと気付いた時の最初の対応が、メイの村とこの村の明暗を分けたんです。
この村の年寄りはいち早く、食い物を断ったんですよ。
『一人でも多く若い者が生き残れるように。』とね。
おかげで、若いモンは今日まで何とか食つなぐことが出来た。
もっとも、もう備蓄のジャガイモも底をついちまったんで、これから本当の地獄が始まるんですがね。」
なんと、この村では飢饉が表面化する前に命の選別がなされていたみたいです。
この村では、ジャガイモの凶作から飢饉になりそうだと気付いてすぐに、年寄りの食い扶持を若い人達に回してくれたと言います。
村長さんなど、『自分が手本を示すんだ。』と言って、真っ先に食べ物を辞退したそうです。
村長さんは、今回の飢饉で一番最初の方に犠牲になった方のお一人だと言います。
その結果、この村では四十代以下の若い方の大部分は今日まで生き延びることが出来たと言います。
ただ、やはり食糧事情が良くないとちょっとした風邪でもなくなる方はいるようで。
何人か、身寄りを無くした子供達も居るとのことでした。
**********
「それじゃあ、一気に行くよ!」
大地の精霊ノミーが元気な声を上げると。
枯れたジャガイモが異臭を放っていた畑の土が、黒々とした土に姿を変えます。
その土を検分した植物の精霊ドリーちゃんが言います。
「うん、ちゃんと消毒できているね。
ジャガイモばっかり作ってたんで、ちょっと栄養が偏ってるみたい。
それを少し調整して…。
うんじゃ、ジャガイモ作るよ!
本当は違う作物を作った方が良いんだけど、料理道具が無いんじゃ仕方ないか。」
そう言って、何処かから大量の種芋を取り出して、宙にばらまきました。…次々と、泉の水が湧くように。
「「「「ええええええ、そんなバカな!」」」」
それを目にした村人から、大きな声が上がります。
それは、そうですよね。どこの世界に、今植え付けた種芋が目を出すのかって。
でも、そんな、村人の驚きをよそにジャガイモはぐんぐんと茎を伸ばし、葉を茂らせ…。
やがて、花を咲かせるとと、枯れ始めます。
「さあ、出来た、今が収穫時期だよ!
みんな、頑張って、収穫して!」
頃合いを見て、ドリーちゃんの掛け声が上がります。
「おお、すげえ、立派なジャガイモがこんなにたくさん出来てるぞ。
喜べ、これなら冬を越せるぞ!」
最初にジャガイモを引き抜いた村長の息子さんが声を上げます。
その声を合図にするように、村に人達が一斉にジャガイモ掘りに動きました。
大きく実ったジャガイモを掘り上げ、村人たちに笑顔が戻ります。
ここは男手が健在ですので、食糧の支援をして村の存続を図ってもらう事にしました。
結局、この日、ノミーちゃんとドリーちゃんは村の全てのジャガイモ畑を再生させ。
今年収穫できなかった分以上の実りをもたらしたのです、たった一日で。
「すげえな、精霊さんの力ってのは。
その小っちゃい体の何処にそんな力を持っているのかと驚かされたぜ。
有り難う、おかげでこれ以上の飢え死にを出さんで済みそうだ。」
村長の息子さんの言葉に合わせて、二人の精霊に感謝の気持ちを込めて頭を下げた村の人達。
そんな村の人達に対してドリーちゃんが言います。
「収穫した後の畑は、消毒して、栄養を整えておいたから来年もジャガイモを作れるよ。
でもね、ジャガイモって続けて作ると病気になり易いし、収穫量も減って凶作のもとだよ。
これからは、一つの畑でジャガイモを作るのは三年に一回くらいにした方が良いよ。
それと、来年植えるジャガイモの種芋はこれを使って。
今ある種芋は多分病気に罹っているから、絶対に植えちゃダメ。
腐る前に食べちゃった方が良いと思う。」
そう言って、村人の前に来年用の種芋を積み上げました。
いったい、この子、どこから出しているんでしょうか。
まっ、精霊の力って常軌を逸しているものが多いですから今更突っ込みませんが。
**********
「大公様、有難うございました。
暖かい食べ物を配給してくれたばかりか。
ジャガイモ畑を蘇らせてくれて、今年ダメだったジャガイモを実らせてくれた。
薪や義援金まで、沢山もらっちまって、本当に助かりました。
それと、親をなくした子供たちのこと、よろしくお願いします。」
立ち去り際、村長の息子さんがそう言って見送ってくれました。
あの後、村の事情を詳しく聞き取ったところ。
食べ物だけでなく、薪もお金も底をついているとのことでしたので支援することになりました。
薪は、ヴァイスに預けてあった分を出してもらいました。
薪だけは潤沢にありますからね。
なんといっても、セルベチア戦役の時に大型の戦列艦を含む数百隻の艦艇を全て薪にしてしまいましたから。
二つの私の館で使って、シューネフルトの女学校に寄贈しても何十年分もあります。
お金も一応用意してきたのです、『協産党』から巻き上げたお金を。
奴らが建前で掲げた農民のために使われるのですから本望でしょうね。
そして、この村では新たに五人の子供を保護して帰ることになったのです。
「シャルロッテ様、今日も私をお連れください。
私も飢えで苦しむ島の人を放ってはおけません、少しでもお役に立ちたいのです。
土地勘のある私がご一緒した方が、幾らかでも手際よく回ることが出来るかと。」
メイちゃんが申し出てきました。
飢餓状態の上に無茶な旅をしてきたのですから、メイちゃんも大分体が弱っているはずです。
そのため、しばらくは館で静養してもらおうかと思っていました。
ですが、同行すると言うメイちゃんの瞳には強い意志が込められていました。
「そう言ってもらえると助かるわ。
地元の人が一緒にいれば、あまり警戒されないで済むでしょうからね。
でも、無理は禁物よ、疲れた時は馬車の中で休んでいてね。」
どうやらあの島では貴族に抱いている感情が良くないようですので、メイちゃんが一緒だと助かります。
メイちゃんも加わり、今日のメンバーは炊き出し係のノノちゃんとナナちゃん、運搬係のアリィシャちゃん。
そして、どうしても一緒に行くと譲らない癒し担当のサリーとエリーです。
トリアさんには、メアリーさんと一緒に子供の保護施設の準備をお願いしてあります。
「まま、きょうも、たくさん、たすけられるといいね。」
「うん。まま、がんばって。
さむいのも、おなかがすくのも、かなしいから。」
私とノノちゃんの膝の上で、サリーとエリーがそんな言葉と共に私に期待の眼差しを向けてきました。
これは、この二人の期待を裏切る訳にはいきませんね。
「ママ、頑張っちゃうわよ。
子供達にひもじい思いも、寒い思いもさせないわ。」
そう答えると、二人はとても嬉しそうに笑みを浮かべました。
本当に、天使のような笑顔です。
**********
二人の笑顔に癒されながら、馬車で空を行くこと二時間ほどメイちゃんの村の隣村に到着します。
少し手前で、着地し地上を走らせて村に入ろうとすると。
「おい、お貴族様がこの村に何の用だ。
この村には、俺達から取り上げられるようなものは何も残っちゃねえぞ。
小麦も、大麦も全部持ってかれちまった、僅かな貯えだって税で取り上げられちまって。
今村に残っているのは、あと何日食いつなげるかわかんねえチットばっかりのジャガイモだけだ。
まさか、それすらも取り上げようって言うんじゃないだろうな。」
馬車の行く手を三人の青年に塞がれ、うち一人がいきなり喧嘩腰で話しかけてきました。
通常、貴族にこのような口の利き方をすると激しく叱責されるものですが…。
どうやら、相当貴族に対する不満が鬱積しているようです。
もはや、反乱寸前と言ったところですね。
「あっ、村長さん所のお兄ちゃん、私、隣村のメイだよ。
ちょっと、話を聞いて。」
メイちゃんが馬車に向かって威嚇してきた青年に声を掛けます。この青年、村長さんの息子さんのようですね。
「うん? 隣村のメイだって?
なんだ、おまえ、どうした。
そんなお貴族様のような格好しちまって。」
青年はメイちゃんと顔見知りのようで、怪訝な顔で尋ねてきました。
「助けてくださる方を連れて来たの。
安心してこの国の貴族じゃないから。
うちの村の人達も昨日、助けてもらったの。
この村も助けてくださるって。」
メイちゃんはそう言うと、私と出会ってからのことを簡単に説明していました。
メイちゃんの話があらかた済んだのを確認して、私は馬車を降りました。
「あんたが、メイの言っていた遠い国の女王様か?
俺達を助けてくれると言うのは本当なのか?
何の見返りも要求せずに。」
「ええ、そのつもりよ。
私は、シャルロッテ・フォン・アルムハイム。
女王様って言われるほど格上ではないけど。
アルムハイム公国という小国の大公をしているわ。
まずは先に炊き出しをしましょう、お腹が空いているでしょう。
詳しい話はその後でゆっくりするわ。」
メイちゃんの説明のおかげで、私が自己紹介すると青年たちは警戒を解き村の中へ入れてくれました。
幸いと言ったら叱られるかもしれませんが、この村では亡骸が放置されている事はありませんでした。
それに、みんな痩せてガリガリですが、男の人もちゃんと生き残っています。
私は青年に生き残った村人を全員広場に集めるように指示しました。動けなくなった人も含めて。
その間に、私達は炊き出しの準備にかかります。
昨日、一回行っているので、段取りはかなり良くなりました。
すぐにアリィシャちゃんが王都の館に魔法で転移すると、大地の精霊ノミーちゃんがカマドを作り始めます。
ほどなく、アリィシャちゃんから鍋や薪、そして食材が転送されて来ました。
重い鍋を、私が魔法で浮かべてカマドにセットすると、水の精霊アクアちゃんが鍋に水を満たしてくれます。
ノノちゃんがカマドに薪を入れると、火の精霊セラちゃんがあっという間にカマドの中を炎で満たしてくれました。
その時には、ノノちゃんとナナちゃんが食材を鍋に放り込んでいて、後は煮えてくるのを待つだけです。
予め下拵えをしてきたとはいえ、昨日に比べたら格段に手順が良くなっています。
「おい、おい、いったいこの馬車の何処にこんなものを積んであったんだ?」
飢餓状態に伴う衰弱で動けなくなった青年を背負って広場に戻って来た村長の息子さん。
私達が炊き出しの準備をしている様子を見て驚きの声を上げました。
「まま、すごいよね、まほうつかいなんだよ。
おうちから、まほうでもってきたの。」
サリーが、拙い言葉で精一杯説明しようとしていました。
でもそれでは私が魔法で取り寄せたみたいです。実際は、アリィシャちゃんが魔法で送ってくれたのに。
「魔法使い?」
村長の息子さんは、要領を得ないようで首を傾げて呟きました。
「娘の言う通り、私は魔法使いなの。
ここにある調理器具や食材は、私の魔法の弟子が王都に戻って送ってくれたのよ。
そして、炊き出しのためのカマドを作ってくれたのはこの子、大地の精霊ノミーちゃん。
この村の支援のために、他の精霊にも手伝ってもらうから驚かないでね。」
私はちょうど良いので、ノミーちゃんを紹介し精霊の存在を明かしました。
「精霊? 遠い国には色々と変わったモノがいるもんだな。」
などと言って、この国にも精霊がいる事を全然知らないようです。
この辺りでは精霊の伝承は廃れてしまったようですね。
これから精霊達に色々としてもらいます。
その時に、ビックリしないように存在を知っておいてもらえばそれで良いのですが。
**********
ノノちゃんとナナちゃんが炊き出しの準備をしている間に、水の精霊アクアちゃんに村人の健康状態を診てもらいました。
「大丈夫、かなり衰弱している人はいるけど、全員飢餓によるものね。
伝染病の発生は見られないわ。
私が『癒し』を施してきたから、あとは食べ物を与えれば全員回復するわ。」
広場に集まった百人以上の人を診て回ったアクアちゃんが報告してくれました。
「すげえもんだな。
さっき俺が背負ってた奴、もう全然動く力が残ってなくて。
次に天に召されるのはあいつだと思ってたのに。
そのお嬢ちゃんが光の雨を降らせたら。
むくっと起き上がって『はらへった』って言ったんだぜ。
俺、びっくりしたぜ。」
アクアちゃんが広場を飛び回るのについて回っていた村長の息子さんが言いました。
そうこうするうちに、炊き出しの準備が終り、昨日同様に具沢山のスープとパンを配ります。
私とノノちゃんでスープの入った器を配ると、サリーとエリーがパンを渡して回ります。
「美味しい…。こんな美味しいものを恵んでくださるなんて有り難いことです。」
「これが、パンと言うモノかい。私らが作った小麦からこんなモノが出来るんだね。」
そんな、食べ物を喜ぶ声や。
「まあ、こんな小さな子供が私達のために食べ物を配ってくれるなんて。
本当に天使様のような子達だね。」
サリーとエリーを褒める声などが広場にいる人々から聞こえてきます。
皆さん、久しぶりに口にする暖かい食べ物をとても喜んでくれました。
村の皆さんには、お腹一杯になるまで、スープもパンもお替りしてもらいます。
一時間もすると、空腹が満たされて、広場の雰囲気が穏やかなものに変わっていました。
「大公様、有り難うございました。
みんな、腹が膨れて人心地つくことが出来した。」
村長の息子さんが穏やかな表情で感謝の言葉を口にしました。
どうやら、私に対する警戒を完全に解いてくれた様子です。
「この村は、メイちゃんの村よりかなり大きな村なのですか?
このような事を口にするのは何なのですが…。
メイちゃんの村は四十三人しか生き残ることが出来なかったのです。
こちらの村は百人以上の方が無事だったようですが。」
すぐ隣の村で食糧事情がそんなに違うとは思えなかったので尋ねてみたのです。
生存率が同等ならば、メイちゃんの村の倍以上の人口がいたことになります。
「メイの村はそれだけしか、生き残ることは出来なかったのですか…。」
村長の息子さんは、私の言葉を聞いて悲痛な表情となり続けました。
「メイの住む村もこの村も、村の大きさはほとんど変わりません。
小麦が全部取り上げれちまうのも、ジャガイモが不作だったことも同じです。
どうしてこの村のモンがこれだけ生き残れたのか。
ここにいる顔ぶれを見て何か気が付きませんか。」
村長の息子さんに言われて、改めて広場を見渡すと、私はある事に気付きました。
それこそ、口に出して言うことが憚られるようなことを。
「気付きましたか、この村には年寄りが一人もいないでしょう。
村のジャガイモが凶作だと気付いた時の最初の対応が、メイの村とこの村の明暗を分けたんです。
この村の年寄りはいち早く、食い物を断ったんですよ。
『一人でも多く若い者が生き残れるように。』とね。
おかげで、若いモンは今日まで何とか食つなぐことが出来た。
もっとも、もう備蓄のジャガイモも底をついちまったんで、これから本当の地獄が始まるんですがね。」
なんと、この村では飢饉が表面化する前に命の選別がなされていたみたいです。
この村では、ジャガイモの凶作から飢饉になりそうだと気付いてすぐに、年寄りの食い扶持を若い人達に回してくれたと言います。
村長さんなど、『自分が手本を示すんだ。』と言って、真っ先に食べ物を辞退したそうです。
村長さんは、今回の飢饉で一番最初の方に犠牲になった方のお一人だと言います。
その結果、この村では四十代以下の若い方の大部分は今日まで生き延びることが出来たと言います。
ただ、やはり食糧事情が良くないとちょっとした風邪でもなくなる方はいるようで。
何人か、身寄りを無くした子供達も居るとのことでした。
**********
「それじゃあ、一気に行くよ!」
大地の精霊ノミーが元気な声を上げると。
枯れたジャガイモが異臭を放っていた畑の土が、黒々とした土に姿を変えます。
その土を検分した植物の精霊ドリーちゃんが言います。
「うん、ちゃんと消毒できているね。
ジャガイモばっかり作ってたんで、ちょっと栄養が偏ってるみたい。
それを少し調整して…。
うんじゃ、ジャガイモ作るよ!
本当は違う作物を作った方が良いんだけど、料理道具が無いんじゃ仕方ないか。」
そう言って、何処かから大量の種芋を取り出して、宙にばらまきました。…次々と、泉の水が湧くように。
「「「「ええええええ、そんなバカな!」」」」
それを目にした村人から、大きな声が上がります。
それは、そうですよね。どこの世界に、今植え付けた種芋が目を出すのかって。
でも、そんな、村人の驚きをよそにジャガイモはぐんぐんと茎を伸ばし、葉を茂らせ…。
やがて、花を咲かせるとと、枯れ始めます。
「さあ、出来た、今が収穫時期だよ!
みんな、頑張って、収穫して!」
頃合いを見て、ドリーちゃんの掛け声が上がります。
「おお、すげえ、立派なジャガイモがこんなにたくさん出来てるぞ。
喜べ、これなら冬を越せるぞ!」
最初にジャガイモを引き抜いた村長の息子さんが声を上げます。
その声を合図にするように、村に人達が一斉にジャガイモ掘りに動きました。
大きく実ったジャガイモを掘り上げ、村人たちに笑顔が戻ります。
ここは男手が健在ですので、食糧の支援をして村の存続を図ってもらう事にしました。
結局、この日、ノミーちゃんとドリーちゃんは村の全てのジャガイモ畑を再生させ。
今年収穫できなかった分以上の実りをもたらしたのです、たった一日で。
「すげえな、精霊さんの力ってのは。
その小っちゃい体の何処にそんな力を持っているのかと驚かされたぜ。
有り難う、おかげでこれ以上の飢え死にを出さんで済みそうだ。」
村長の息子さんの言葉に合わせて、二人の精霊に感謝の気持ちを込めて頭を下げた村の人達。
そんな村の人達に対してドリーちゃんが言います。
「収穫した後の畑は、消毒して、栄養を整えておいたから来年もジャガイモを作れるよ。
でもね、ジャガイモって続けて作ると病気になり易いし、収穫量も減って凶作のもとだよ。
これからは、一つの畑でジャガイモを作るのは三年に一回くらいにした方が良いよ。
それと、来年植えるジャガイモの種芋はこれを使って。
今ある種芋は多分病気に罹っているから、絶対に植えちゃダメ。
腐る前に食べちゃった方が良いと思う。」
そう言って、村人の前に来年用の種芋を積み上げました。
いったい、この子、どこから出しているんでしょうか。
まっ、精霊の力って常軌を逸しているものが多いですから今更突っ込みませんが。
**********
「大公様、有難うございました。
暖かい食べ物を配給してくれたばかりか。
ジャガイモ畑を蘇らせてくれて、今年ダメだったジャガイモを実らせてくれた。
薪や義援金まで、沢山もらっちまって、本当に助かりました。
それと、親をなくした子供たちのこと、よろしくお願いします。」
立ち去り際、村長の息子さんがそう言って見送ってくれました。
あの後、村の事情を詳しく聞き取ったところ。
食べ物だけでなく、薪もお金も底をついているとのことでしたので支援することになりました。
薪は、ヴァイスに預けてあった分を出してもらいました。
薪だけは潤沢にありますからね。
なんといっても、セルベチア戦役の時に大型の戦列艦を含む数百隻の艦艇を全て薪にしてしまいましたから。
二つの私の館で使って、シューネフルトの女学校に寄贈しても何十年分もあります。
お金も一応用意してきたのです、『協産党』から巻き上げたお金を。
奴らが建前で掲げた農民のために使われるのですから本望でしょうね。
そして、この村では新たに五人の子供を保護して帰ることになったのです。
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レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
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