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第17章 夏、季節外れの嵐が通り過ぎます
第492話 見せしめ(?)ですか…
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子供達のその日の勉強が終った後のことです。
「お姉ちゃん、うちの弟二人がやっと真面目に読み書きを習うようになったんだよ。
全部、シャルロッテ様のおかげなんだ。
お姉ちゃんからも、シャルロッテ様にお礼を言っておいて。」
セリカちゃんと一緒に別室で勉強をしていたナナちゃんがリビングに入って来て言います。
「へえ、あの子達、ちゃんと勉強する気になったの。
シャルロッテ様のおかげって何があったの?」
子供たちの勉強を終えて、クララちゃんを膝の上に乗せたノノちゃんが尋ねると。
「秋に、シャルロッテ様が村にいらして。
ちょうど、ログハウスで勉強をしていた私達を色々な場所に案内してくださったの。
このお屋敷にも来たんだよ。
一日だけだからお姉ちゃんには会えなかったけど。
セリカちゃん達にお出掛け用の服を買ってくださったの。
私も秋物の服を一着買ってもらっちゃった。
それから、王宮に行ってケリー君という男の子に会わせてもらったの。
スラムの生まれでも、賢ければ王様に御召し抱え頂けることさえあるんだって。
シャルロッテ様は弟二人に教えたかったみたいなの。」
ナナちゃんは、秋に私と一緒に各地を巡ったことをノノちゃんに話して聞かせました。
二人の弟君がケリー君と話をしたものの、今一つピンときた様子でなかったことや。
この館で出されたゴハンを口にして、自分の村の食生活が貧しいという事に初めて気付いたこと。
そんな事から話し始めて、私の経営する工房を見学したことや帝都へ遊びに行ったことなどを話していました。
そして、
「ねえ、お姉ちゃん、村にいた暴れん坊のゴンダーって覚えている?」
「ええ、もちろん、覚えているわ。
村の男の子達のガキ大将で、気にくわない事があるとすぐに殴るのよね。
あれで、村の男の子達のリーダーだって言うのだから頭痛がしたものだわ。
理屈なんか関係なしで、力で従えれば良いっていう。
うちの村の典型的な男の人の予備軍だったね。
それが、どうかしたの?」
「じゃあ、『裏なりズッキーニ』って言われていた人は知ってる?」
「うーん、よく覚えていないけど、そういう男の子がいたのは覚えているわ。
線が細くて、あまり、存在感がない男の子だったよね。
そうそう、良くゴンダーから苛められてたわ。」
「その二人が、シャルロッテ様の工房にお勤めしているの。
工房の中では、その二人の力関係が逆転しちゃってるの。
そのことが、うちの弟二人にショックだったみたいで。
それから人が変わったみたいに、真面目に勉強に取り組むようになったの。
それまでは、『女の子に混じって読み書きなんか習っているとバカにされる』なんて言ってたのに。
最近は、村の男の子達にバカにされても全然気にしなくなったし。
時々、喧嘩ばっかりしていると嫁のきてが無くなるぞって言い返してるんだよ。」
ナナちゃんは、私の工房で見たゴンダー青年と『裏なりズッキーニ』と呼ばれていた青年の事をノノちゃんに話しました。
『裏なりズッキーニ』青年、誰も名前を憶えていないんですね、不憫な…。
余程村では影が薄かったのでしょうね。
弟君たちが手本としていたゴンダー青年が私の工房では、何時まで経っても一番下っ端で。
村では『裏なりズッキーニ』とバカにされて虐められていた青年が、工房の出世頭になっていた。
同じ村にいた身近な二人の明暗、特にゴンダー青年の境遇に、弟君二人は危機感を感じたようだとナナちゃんは言ってました。
「弟二人はケリー君との話でも、漠然と読み書き計算が必要なのは感じたみたいだし。
喧嘩ばかりしている野蛮な人よりも、心優しい人の方が評価されるとは感じていたみたいなの。
でも、ケリー君って王宮仕えでしょう、余りにも雲の上の人なものだから。
貧しいスラムの出身だと言われてもピンとこなかったみたいなんだ。
でも、うちの村出身の二人には、凄い衝撃を受けたみたい。
何年か前まで、身近にいた人達だもの。
片や、村で一番威張ってて、弟が手本にしてた男の子が一番下っ端で女の子にアゴで使われているし。
方や、村でバカにされ、虐められていた男の子が、出世頭になっている。
どっちが、世の中で評価されているかは、一目瞭然だもの。
特に、下の弟は、『裏なりズッキーニ』が美人のお嫁さんを貰うというのに衝撃を受けたみたい。
あれから、『俺はゴンダーみたいにはならないぞ。』って自分にハッパを掛けながら勉強しているの。」
ゴンダー青年の名誉のためにも、村中にあまり大きな声で言うのはいかがなものかと思いますが…。
せめて、『裏なりズッキーニ』青年の出世話の方を喧伝してあげて欲しいです。
まあ、彼の事もナナちゃんが村に広めてくれてはいるみたいではありますが。
先日、ナナちゃんの村に女学校に試験的に受け入れる男子生徒を募集に行った時に尋ねられましたものね。
ナナちゃんが言っていた『裏なりズッキーニ』青年の件は本当の事かって。
**********
一通りナナちゃんの話を聞いたノノちゃんが、傍で話を聞いていた私に向かって言いました。
「シャルロッテ様、本当に有り難うございました。
うちの弟二人に関しては、村の男衆に毒されてしまって困っていたんです。
確かに、どんな仕事でもある程度体力が無いと出来ませんから。
体力を養うことは必要だとは思うのです。
ですが、うちの村、いえ、近隣の農村部では体力偏重が過ぎます。
例えば、牧畜にしても、農業にしても、ここアルビオンでは新しい試みがなされています。
そういったノウハウは、いずれ口頭でも伝わるのでしょうけど…。
最初は、研究論文のような形で、文書で公表されます。
いち早く新しい技術や手法を取り入れようとするなら、それを読み解く力が必要なんです。
読み書きが出来ないと、新しい流れに乗り遅れちゃいます。
でも、うちの村って貧乏だけど、それなりに生活できちゃうものだから。
新しいことをやろうとしないんです。
だから、重労働に耐えられる屈強な男ばかりもてはやされちゃって…。」
まあ、お金に困った時、息子や娘を売り出すことをそれなりに生活できると言って良いのかは微妙ですが。
確かに、それで餓死者も出さずに村を維持しているのですから、そう言えなくもないですね。
農村の人達にとっては現状が当たり前で、変えようとかは思っていなのでしょう。
いえ、現状をより良い方向へ変えることができるとは、思いも寄らないのかも知れません。
ノノちゃんが、夏に帰省した際に子供達に算術を教えようとした時、『そんなモン何の役に立つ』と言われたそうですが。
実は、読み書きについても、同様な事を言われ、ほとんどの子供達に相手にしてもらえなかったと言います。
「町に住む子供たちは、商人や商人に勤める人の子供も多くいます。
なので、読み書き算術の重要性を理解している子が多いと思うのです。
ですが、農村部の子供達はと言うと。
まずはお店が無いので、買い物をすることが無い。
だから、お金の計算なんか無縁なんです。
畑仕事や牛の世話に読み書きは要らないし、村に本の一冊も無い。
これでは、読み書きが大切だよと言っても理解のしようが無いと思います。」
ノノちゃんは、夏に村の子供達から言われたことを話しながらそんなことを言い。
更に、こう続けたのです。
「今、カロリーネ様が創ろうと計画を進めている領民学校ですが。
一番の目的は、私の村のような貧しい農村の子供達に読み書き算術を手解きすることで。
貧しい村を出ても、より良い就労機会を得られるようにすることにあります。
今のような傭兵や娼婦だけではなく、もっと良い仕事に就けるように。
なのに今のままじゃ、その村の方が拒否しそうな気がしてならないのです。
『そんなモノ何の役に立つ』と言って。
せっかく、カロリーネ様やシャルロッテ様、それにアガサさんが尽力してくださっているのに。
特に村では、水汲みや子守りなどで、子供も労働力に数えられているものですから。
読み書き算術の大切さを理解してもらえないと、子供の時間を拘束する学校そのものに反発が出そうです。
私の弟二人や夏に村の男の子の言葉を聞いてそんな不安を感じていました。
何とかしないといけないと思っていましたが。
解決方法は意外と簡単かもしれないですね。」
とても、良い笑顔を見せてそう言ったノノちゃん。
「シャルロッテ様。
領民学校が出来た際には、是非領民学校の一年生にシャルロッテ様の工房を見学させてください。
シャルロッテ様の工房には、うちの村のゴンダーの様な例は、他にも沢山あると思います。
多分他の村の出身者でも、同じことが起こっているでしょうから。
うちの弟二人と同じように、身近に反面教師がいれば、考えを改める子供が多いと思います。
シャルロッテ様の工房は、読み書き算術の大切さを理解させ、体力偏重の考えを改めさせるのに最適です。」
ええっと、それは私の工房にいる脳筋共を見せしめにしようと言うのですか。
ノノちゃん、意外と残酷なことを言いますね。
でも、ノノちゃんの言う通り、身近な反面教師を目にすれば容易く考えを改めるかも知れませんね。
一度、リーナとも相談して、私の工房見学をカリキュラムに入れる事を検討して見ますか。
「お姉ちゃん、うちの弟二人がやっと真面目に読み書きを習うようになったんだよ。
全部、シャルロッテ様のおかげなんだ。
お姉ちゃんからも、シャルロッテ様にお礼を言っておいて。」
セリカちゃんと一緒に別室で勉強をしていたナナちゃんがリビングに入って来て言います。
「へえ、あの子達、ちゃんと勉強する気になったの。
シャルロッテ様のおかげって何があったの?」
子供たちの勉強を終えて、クララちゃんを膝の上に乗せたノノちゃんが尋ねると。
「秋に、シャルロッテ様が村にいらして。
ちょうど、ログハウスで勉強をしていた私達を色々な場所に案内してくださったの。
このお屋敷にも来たんだよ。
一日だけだからお姉ちゃんには会えなかったけど。
セリカちゃん達にお出掛け用の服を買ってくださったの。
私も秋物の服を一着買ってもらっちゃった。
それから、王宮に行ってケリー君という男の子に会わせてもらったの。
スラムの生まれでも、賢ければ王様に御召し抱え頂けることさえあるんだって。
シャルロッテ様は弟二人に教えたかったみたいなの。」
ナナちゃんは、秋に私と一緒に各地を巡ったことをノノちゃんに話して聞かせました。
二人の弟君がケリー君と話をしたものの、今一つピンときた様子でなかったことや。
この館で出されたゴハンを口にして、自分の村の食生活が貧しいという事に初めて気付いたこと。
そんな事から話し始めて、私の経営する工房を見学したことや帝都へ遊びに行ったことなどを話していました。
そして、
「ねえ、お姉ちゃん、村にいた暴れん坊のゴンダーって覚えている?」
「ええ、もちろん、覚えているわ。
村の男の子達のガキ大将で、気にくわない事があるとすぐに殴るのよね。
あれで、村の男の子達のリーダーだって言うのだから頭痛がしたものだわ。
理屈なんか関係なしで、力で従えれば良いっていう。
うちの村の典型的な男の人の予備軍だったね。
それが、どうかしたの?」
「じゃあ、『裏なりズッキーニ』って言われていた人は知ってる?」
「うーん、よく覚えていないけど、そういう男の子がいたのは覚えているわ。
線が細くて、あまり、存在感がない男の子だったよね。
そうそう、良くゴンダーから苛められてたわ。」
「その二人が、シャルロッテ様の工房にお勤めしているの。
工房の中では、その二人の力関係が逆転しちゃってるの。
そのことが、うちの弟二人にショックだったみたいで。
それから人が変わったみたいに、真面目に勉強に取り組むようになったの。
それまでは、『女の子に混じって読み書きなんか習っているとバカにされる』なんて言ってたのに。
最近は、村の男の子達にバカにされても全然気にしなくなったし。
時々、喧嘩ばっかりしていると嫁のきてが無くなるぞって言い返してるんだよ。」
ナナちゃんは、私の工房で見たゴンダー青年と『裏なりズッキーニ』と呼ばれていた青年の事をノノちゃんに話しました。
『裏なりズッキーニ』青年、誰も名前を憶えていないんですね、不憫な…。
余程村では影が薄かったのでしょうね。
弟君たちが手本としていたゴンダー青年が私の工房では、何時まで経っても一番下っ端で。
村では『裏なりズッキーニ』とバカにされて虐められていた青年が、工房の出世頭になっていた。
同じ村にいた身近な二人の明暗、特にゴンダー青年の境遇に、弟君二人は危機感を感じたようだとナナちゃんは言ってました。
「弟二人はケリー君との話でも、漠然と読み書き計算が必要なのは感じたみたいだし。
喧嘩ばかりしている野蛮な人よりも、心優しい人の方が評価されるとは感じていたみたいなの。
でも、ケリー君って王宮仕えでしょう、余りにも雲の上の人なものだから。
貧しいスラムの出身だと言われてもピンとこなかったみたいなんだ。
でも、うちの村出身の二人には、凄い衝撃を受けたみたい。
何年か前まで、身近にいた人達だもの。
片や、村で一番威張ってて、弟が手本にしてた男の子が一番下っ端で女の子にアゴで使われているし。
方や、村でバカにされ、虐められていた男の子が、出世頭になっている。
どっちが、世の中で評価されているかは、一目瞭然だもの。
特に、下の弟は、『裏なりズッキーニ』が美人のお嫁さんを貰うというのに衝撃を受けたみたい。
あれから、『俺はゴンダーみたいにはならないぞ。』って自分にハッパを掛けながら勉強しているの。」
ゴンダー青年の名誉のためにも、村中にあまり大きな声で言うのはいかがなものかと思いますが…。
せめて、『裏なりズッキーニ』青年の出世話の方を喧伝してあげて欲しいです。
まあ、彼の事もナナちゃんが村に広めてくれてはいるみたいではありますが。
先日、ナナちゃんの村に女学校に試験的に受け入れる男子生徒を募集に行った時に尋ねられましたものね。
ナナちゃんが言っていた『裏なりズッキーニ』青年の件は本当の事かって。
**********
一通りナナちゃんの話を聞いたノノちゃんが、傍で話を聞いていた私に向かって言いました。
「シャルロッテ様、本当に有り難うございました。
うちの弟二人に関しては、村の男衆に毒されてしまって困っていたんです。
確かに、どんな仕事でもある程度体力が無いと出来ませんから。
体力を養うことは必要だとは思うのです。
ですが、うちの村、いえ、近隣の農村部では体力偏重が過ぎます。
例えば、牧畜にしても、農業にしても、ここアルビオンでは新しい試みがなされています。
そういったノウハウは、いずれ口頭でも伝わるのでしょうけど…。
最初は、研究論文のような形で、文書で公表されます。
いち早く新しい技術や手法を取り入れようとするなら、それを読み解く力が必要なんです。
読み書きが出来ないと、新しい流れに乗り遅れちゃいます。
でも、うちの村って貧乏だけど、それなりに生活できちゃうものだから。
新しいことをやろうとしないんです。
だから、重労働に耐えられる屈強な男ばかりもてはやされちゃって…。」
まあ、お金に困った時、息子や娘を売り出すことをそれなりに生活できると言って良いのかは微妙ですが。
確かに、それで餓死者も出さずに村を維持しているのですから、そう言えなくもないですね。
農村の人達にとっては現状が当たり前で、変えようとかは思っていなのでしょう。
いえ、現状をより良い方向へ変えることができるとは、思いも寄らないのかも知れません。
ノノちゃんが、夏に帰省した際に子供達に算術を教えようとした時、『そんなモン何の役に立つ』と言われたそうですが。
実は、読み書きについても、同様な事を言われ、ほとんどの子供達に相手にしてもらえなかったと言います。
「町に住む子供たちは、商人や商人に勤める人の子供も多くいます。
なので、読み書き算術の重要性を理解している子が多いと思うのです。
ですが、農村部の子供達はと言うと。
まずはお店が無いので、買い物をすることが無い。
だから、お金の計算なんか無縁なんです。
畑仕事や牛の世話に読み書きは要らないし、村に本の一冊も無い。
これでは、読み書きが大切だよと言っても理解のしようが無いと思います。」
ノノちゃんは、夏に村の子供達から言われたことを話しながらそんなことを言い。
更に、こう続けたのです。
「今、カロリーネ様が創ろうと計画を進めている領民学校ですが。
一番の目的は、私の村のような貧しい農村の子供達に読み書き算術を手解きすることで。
貧しい村を出ても、より良い就労機会を得られるようにすることにあります。
今のような傭兵や娼婦だけではなく、もっと良い仕事に就けるように。
なのに今のままじゃ、その村の方が拒否しそうな気がしてならないのです。
『そんなモノ何の役に立つ』と言って。
せっかく、カロリーネ様やシャルロッテ様、それにアガサさんが尽力してくださっているのに。
特に村では、水汲みや子守りなどで、子供も労働力に数えられているものですから。
読み書き算術の大切さを理解してもらえないと、子供の時間を拘束する学校そのものに反発が出そうです。
私の弟二人や夏に村の男の子の言葉を聞いてそんな不安を感じていました。
何とかしないといけないと思っていましたが。
解決方法は意外と簡単かもしれないですね。」
とても、良い笑顔を見せてそう言ったノノちゃん。
「シャルロッテ様。
領民学校が出来た際には、是非領民学校の一年生にシャルロッテ様の工房を見学させてください。
シャルロッテ様の工房には、うちの村のゴンダーの様な例は、他にも沢山あると思います。
多分他の村の出身者でも、同じことが起こっているでしょうから。
うちの弟二人と同じように、身近に反面教師がいれば、考えを改める子供が多いと思います。
シャルロッテ様の工房は、読み書き算術の大切さを理解させ、体力偏重の考えを改めさせるのに最適です。」
ええっと、それは私の工房にいる脳筋共を見せしめにしようと言うのですか。
ノノちゃん、意外と残酷なことを言いますね。
でも、ノノちゃんの言う通り、身近な反面教師を目にすれば容易く考えを改めるかも知れませんね。
一度、リーナとも相談して、私の工房見学をカリキュラムに入れる事を検討して見ますか。
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