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2日目-2

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無事に2日目の数学を修めた俺は再び部屋で本を読んでいた。

「はぁ~、やはり魔法関連はさっぱりだな。暗記で何とかなる歴史よりたちが悪い」

歴史は最悪詰め込みで行けなくもない。横文字も世界史と割り切れば大丈夫だが、流石に経験のない魔法関連は一からだ。

「せめて、魔法が使えればな…」

アーダンとして生きてきた記憶もあるものの、得意な属性が分からない。ここまで馬鹿なら逆に偉大だ。

「仕方ない、気は重いがアーヴィンに頼みに行くとするか」

アーヴィンは宮廷魔術師兼、魔導兵団団長として王宮に勤めている。俺の家庭教師もやったことがあるのだが、研究のため、また俺のバカさ加減に呆れ早々にやめてしまったのだ。彼なら、属性の再計測や短期間で鍛えてくれるだろう。

「こ、これは殿下。こちらに何用で?」

「アーヴィン殿に用がある。在室か?」

「はっ、ただいま書類作業中です!」

「そうか」

コンコン

「入れ」

「久しぶりだなアーヴィン殿」

「これはアーダン殿下。ご健勝で」

「うむ。聞いているかもしれんが、実は学園の卒業が危ぶまれていてな。そこで手間をかけてすまんが、3日でいいから鍛えてくれないか?」

「明日であれば期待に沿えぬこともありますが、それ以外は…」

「明日は大丈夫なのか?」

「はい。学園を卒業するものに手本というか魔導兵団の実力を見せるデモンストレーションがありますので、私も学園に出向くのです。なので明日は時間も確保できます」

「では明日だけでも頼む。それと、魔力を測る魔道具も持ってきて欲しい」

「あれをですか。なぜ?」

「実は自分の得意属性が分からなくてな。自分で鍛えようがないのだ」

「分かりました。お持ちいたします」

「それと、このことは内密にな。流石に自分の属性を知らぬという話が広まると困る」

「心得ております」

殿下が退出されると副官が声をかけてきた。

「よろしいのでしょうか?お忙しいところに」

「構わん。私も殿下の家庭教師を務めたことがあったが、あくまで団長就任前の1週間だけだ。あの頃は、皆を黙らすために忙しかったから断る理由を考えていたからな。改めて王族を計測できるなど興味がある。奥にしまってあるあれを出しておけ」

「分かりました。ご用意しておきます」

「それと、デモンストレーションは私の出番を削っておけ。最初に魔法を披露した後はさりげなく退出できる手配だ」

「了解いたしました」

殿下は次期国王として困った方だと思っていたが中々どうして変われるものだ。あのカリスマ性だけは本物だったからな。いまだに正妃の息子の第2王子が勢力を伸ばせないのもうなづけるというものだ。
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