DEAREST【完結】

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第199話 語り部

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 教会跡地。背中を合わせて中央付近に立つナギとリーダー。二人の周りには、竜がたくさん積み重ねられるようにして倒れています。
 上空を舞う竜達は二人を目掛けて飛び込んで来ました。だけど、二人は臆する事なく避ける事もなく剣を構えます。
 竜の牙を刃で受け止める二人。押される二人の背中がぶつかります。しかし、二人はそのまま前へ踏み出すと牙に挟まれたままの剣を横へなぎ払いました。竜の頭がズシリとその場に落ちて、少し遅れてその大きな体が倒れました。
 ナギは悲しそうな顔で亡骸を見つめます。そんなナギの肩を後ろから叩くリーダー。
「ナギ、次が来るぞ」
「……うん」
「今はまだ、悲しむ時間じゃない」
「……うん!」
 ナギは指笛を吹き始めました。いつもより高めのその音に竜達がすぐに反応を示します。二人は竜をここへ誘い込んでいました。
 しかし、積まれた亡骸の数に竜達も徐々に警戒の色を見せ始めます。教会跡地の真上を円を描くように飛びながら様子を窺っています。
 その時、他の竜達よりも一回りは大きな竜が真下を目掛けて急降下して来ました。大きな翼を広げ二人の目の前まで。しかも、竜は止まろうとはしません。
「ナギ!」
「うん!」
 二人は地面を蹴り横へ真っ直ぐ広げられた翼に両手をついて、くるりと回ってそれを避けました。着地と同時にすぐさま振り返る二人。竜の勢いは止まらず周りの建物を破壊しながら強引に方向転換をします。翼に削られた瓦礫が飛んで来てそれがナギにぶつかりました。
「うわっ!」
「ナギ!」
 倒れ込んだナギの方へ駆け寄ろうと、リーダーが竜から視線を外した瞬間。竜は、それを狙っていたようです。不気味な咆哮と共にその大きな口を開けてリーダーに襲いかかりました。
「アラン!」
 ナギは倒れたまま咄嗟に剣を投げます。その剣が竜の首に刺さりました。竜がその痛みに首を上げるよりも早く、リーダーが突き刺さった剣を掴んで真下へ引き落としました。
 ギリギリ繋がった竜の首から血が吹き出します。だけど、竜の命はまだ消えていませんでした。最後の力を振り絞り、リーダーの体を挟み込むように牙を立てたのです。
「アランッ!」
 痛みを忘れ体を起こすナギ。その瞳は絶望の色を浮かべながら、目の前の光景を映しています。その時、リーダーが動きました。こちらを見てナギと目が合うと少しだけ微笑みます。
「大丈夫だ」
 リーダーの剣は、竜の口の中からそのまま顎を貫いていました。両手で口を広げ、その中から出てくるリーダーは無傷で、ナギの目から涙が零れます。
「良かった……」
「お前の方こそ大丈夫か?」
「うん」
 リーダーの手を借りて立ち上がるナギ。リーダーはナギに剣を返しました。
「そうか。助かった、ありがとう」
「うん」
 ナギは再び剣を握りしめて空を見上げます。
「あれ? 竜が減ってる?」
「ん? ああ……カモメだ」
 二人が目を凝らすと、竜に誰かが乗っているのが見えました。竜から竜へ飛び移る人物の影。その影が消える度に竜が落下していくのです。
「あ、危なくない?」
「カモメなら大丈夫だろう。それより、そろそろリサと合流した方が良くないか?」
 リーダーが剣を鞘に収めます。
「あ、う、うん。そうだね」
 ナギも剣を収め、今度は馬を呼ぶ為に指笛を吹きます。二頭の馬が戻って来ました。二人が馬に乗り、再び空を見上げた時。
「あっ!」
 一本の矢が放たれました。それは竜に突き刺さり下へ落ちていきます。そこへ他の竜も集まっていくのが見えました。
「リサが戦ってる……?」
「ナギ、急ぐぞ!」
「うん!」
 二人は大急ぎでその場所に向かいました。
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