2 / 21
第1話 自由奔放な主
しおりを挟む
貴族の三男である、ダレス・フロートは毎日、女遊びに明け暮れていた。フロート家の後継ぎである長男でもなく、その右腕となる優秀な次男でもないダレスは恋愛ごとに自由であった。故に家を継ぐことや令嬢との政略結婚など、フロート家に関する重責のないダレスは母に溺愛されながら人懐っこく気ままに育った。
そんなお坊ちゃんに愛想を尽かすものは多く。ダレスのいたずらや不真面目な態度、不埒でふしだらな生活に今や従者ですら彼から離れた。父は飽きれ、ダレスに別宅を与えると隠すようにそこへ押し込んだ。しかし、別宅を持ったダレスは更に自由奔放になってしまった。
この別宅に来るのは、何人かの(ダレス好みの)メイドかお友だち、もしくはダレスを溺愛する母ヘレン、そして護身だけでなく身の回りの世話まで担っている専属騎士のウルソンくらいだ。
∇
「ふふ、きゃっ!もぉ~、ダレス様ったら! 私のスカートを返してくださいましっ」
下着だけを身に付けたメイドがスカートを掴み高く持ち上げたダレスに言う。この別宅には、ダレスの専属騎士であるウルソン以外に男はいない。
「なんだ、いいだろう? 君たちは僕のメイドなんだよ。これも全部、僕のものだ。」
「まあ! なんて傲慢なんですの、ダレス様っ…!」
うっとりと、もう一人のメイドがダレスを見ながら言う。少し長めの前髪が彼の自由さを表している、目鼻立ちの整った顔立ちに、艶のある美しい金髪。一目見れば、貴族だとわかる優雅さがある。
「だって、君たちは僕のものだろう?」
きゃ~! と楽しげでわざとらしい悲鳴がダレスの部屋の扉から漏れ聞こえる。聞こえてくるそんな声に、専属騎士であるウルソンは羨ましさを感じながら、汚れてしまったであろうシーツの替えや、湯浴びの準備をしていた。
騎士らしく、引き締まった筋肉質な体に短く切り揃えられた黒髪の大男が羨ましさを感じているのは、“貴族で遊び人のダレス” ではない。これからダレスに抱かれるのであろう、女たちの方だ。こんな男に惚れるなんて、馬鹿だと世間は言うかもしれない。
すーはー、と深呼吸をして部屋の扉をノックする。楽しげなお坊ちゃまやメイドの女性たちがいるなかに入り込むのは、いつも緊張する。坊ちゃま…、何よりも女性たちの機嫌を損ねるのが怖い。コンコンコンと数回ノックをする。
「お坊ちゃま、失礼いたします」
「ああ、ウルソンか。入っていいよ。」
ダレスの了承を得た専属騎士は、重たい扉を引き開ける。ベッドの上で半裸になる女たちとダレスを見ないように視線を伏せ、膝を付く。
「いいって、ウルソン。いつも言ってるだろう? 僕には、そんなことしなくて良いんだよ。」
「いえ…、私は騎士として、ダレス様に仕える身ですので」
「相変わらず、真面目だね。まぁ、そこがウルソンの良い所だけど。」
ダレス様は、いつも俺を甘やかそうとする…。
頑固で馬鹿真面目な専属騎士にダレスは、やれやれと苦笑いをした。今だって、女の裸を見ないように視線を落としている。短すぎる黒髪、モテそうな顔してるんだから伸ばせば良いのに、とダレスは思う。
「それで、最中に君が部屋に来るなんて珍しいね、どうしたのかな。もしかして、一緒に遊びたくなった?」
坊っちゃんはウルソンを少しからかった。そんなダレスに専属騎士はため息を吐くこともなく、受け答えをする。
「いえ。ヘレン奥様がこちらに御出向きになるようなので、ご準備をとのご報告に参りました。」
「母上が!! 久しぶりだ、君たち今すぐ準備をしてくれ。君、この間買ってきてくれた、あの美味しい苺のケーキをまたお願いしたい!母上は苺がお好きだからね」
母ヘレンがダレスを溺愛するように、ダレスもまた母が大好きだ。今の今まで行っていた不埒な行為の影はどこへやら…、ダレスは無邪気な笑顔で母を招く準備をはじめた。
そんなお坊ちゃんに愛想を尽かすものは多く。ダレスのいたずらや不真面目な態度、不埒でふしだらな生活に今や従者ですら彼から離れた。父は飽きれ、ダレスに別宅を与えると隠すようにそこへ押し込んだ。しかし、別宅を持ったダレスは更に自由奔放になってしまった。
この別宅に来るのは、何人かの(ダレス好みの)メイドかお友だち、もしくはダレスを溺愛する母ヘレン、そして護身だけでなく身の回りの世話まで担っている専属騎士のウルソンくらいだ。
∇
「ふふ、きゃっ!もぉ~、ダレス様ったら! 私のスカートを返してくださいましっ」
下着だけを身に付けたメイドがスカートを掴み高く持ち上げたダレスに言う。この別宅には、ダレスの専属騎士であるウルソン以外に男はいない。
「なんだ、いいだろう? 君たちは僕のメイドなんだよ。これも全部、僕のものだ。」
「まあ! なんて傲慢なんですの、ダレス様っ…!」
うっとりと、もう一人のメイドがダレスを見ながら言う。少し長めの前髪が彼の自由さを表している、目鼻立ちの整った顔立ちに、艶のある美しい金髪。一目見れば、貴族だとわかる優雅さがある。
「だって、君たちは僕のものだろう?」
きゃ~! と楽しげでわざとらしい悲鳴がダレスの部屋の扉から漏れ聞こえる。聞こえてくるそんな声に、専属騎士であるウルソンは羨ましさを感じながら、汚れてしまったであろうシーツの替えや、湯浴びの準備をしていた。
騎士らしく、引き締まった筋肉質な体に短く切り揃えられた黒髪の大男が羨ましさを感じているのは、“貴族で遊び人のダレス” ではない。これからダレスに抱かれるのであろう、女たちの方だ。こんな男に惚れるなんて、馬鹿だと世間は言うかもしれない。
すーはー、と深呼吸をして部屋の扉をノックする。楽しげなお坊ちゃまやメイドの女性たちがいるなかに入り込むのは、いつも緊張する。坊ちゃま…、何よりも女性たちの機嫌を損ねるのが怖い。コンコンコンと数回ノックをする。
「お坊ちゃま、失礼いたします」
「ああ、ウルソンか。入っていいよ。」
ダレスの了承を得た専属騎士は、重たい扉を引き開ける。ベッドの上で半裸になる女たちとダレスを見ないように視線を伏せ、膝を付く。
「いいって、ウルソン。いつも言ってるだろう? 僕には、そんなことしなくて良いんだよ。」
「いえ…、私は騎士として、ダレス様に仕える身ですので」
「相変わらず、真面目だね。まぁ、そこがウルソンの良い所だけど。」
ダレス様は、いつも俺を甘やかそうとする…。
頑固で馬鹿真面目な専属騎士にダレスは、やれやれと苦笑いをした。今だって、女の裸を見ないように視線を落としている。短すぎる黒髪、モテそうな顔してるんだから伸ばせば良いのに、とダレスは思う。
「それで、最中に君が部屋に来るなんて珍しいね、どうしたのかな。もしかして、一緒に遊びたくなった?」
坊っちゃんはウルソンを少しからかった。そんなダレスに専属騎士はため息を吐くこともなく、受け答えをする。
「いえ。ヘレン奥様がこちらに御出向きになるようなので、ご準備をとのご報告に参りました。」
「母上が!! 久しぶりだ、君たち今すぐ準備をしてくれ。君、この間買ってきてくれた、あの美味しい苺のケーキをまたお願いしたい!母上は苺がお好きだからね」
母ヘレンがダレスを溺愛するように、ダレスもまた母が大好きだ。今の今まで行っていた不埒な行為の影はどこへやら…、ダレスは無邪気な笑顔で母を招く準備をはじめた。
23
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説

パラレルワールドの世界で俺はあなたに嫌われている
いちみやりょう
BL
彼が負傷した隊員を庇って敵から剣で斬られそうになった時、自然と体が動いた。
「ジル!!!」
俺の体から血飛沫が出るのと、隊長が俺の名前を叫んだのは同時だった。
隊長はすぐさま敵をなぎ倒して、俺の体を抱き寄せてくれた。
「ジル!」
「……隊長……お怪我は……?」
「……ない。ジルが庇ってくれたからな」
隊長は俺の傷の具合でもう助からないのだと、悟ってしまったようだ。
目を細めて俺を見て、涙を耐えるように不器用に笑った。
ーーーー
『愛してる、ジル』
前の世界の隊長の声を思い出す。
この世界の貴方は俺にそんなことを言わない。
だけど俺は、前の世界にいた時の貴方の優しさが忘れられない。
俺のことを憎んで、俺に冷たく当たっても俺は貴方を信じたい。

もうすぐ死ぬから、ビッチと思われても兄の恋人に抱いてもらいたい
カミヤルイ
BL
花影(かえい)病──肺の内部に花の形の腫瘍ができる病気で、原因は他者への強い思慕だと言われている。
主人公は花影症を患い、死の宣告を受けた。そして思った。
「ビッチと思われてもいいから、ずっと好きだった双子の兄の恋人で幼馴染に抱かれたい」と。
*受けは死にません。ハッピーエンドでごく軽いざまぁ要素があります。
*設定はゆるいです。さらりとお読みください。
*花影病は独自設定です。
*表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217 からプレゼントしていただきました✨

もし、運命の番になれたのなら。
天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(α)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。
まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。
水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。
そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。

未必の恋
ほそあき
BL
倉光修には、幼い頃に離別した腹違いの兄がいる。倉光は愛人の子だ。だから、兄に嫌われているに違いない。二度と会うこともないと思っていたのに、親の都合で編入した全寮制の高校で、生徒会長を務める兄と再会する。親の結婚で名前が変わり、変装もしたことで弟だと気づかれないように編入した、はずなのに、なぜか頻繁に兄に会う。さらに、ある事件をきっかけに兄に抱かれるようになって……。

【BL】魔王様の部下なんだけどそろそろ辞めたい
のらねことすていぬ
BL
悪魔のレヴィスは魔王様の小姓をしている。魔王様に人間を攫ってきて閨の相手として捧げるのも、小姓の重要な役目だ。だけどいつからかレヴィスは魔王様に恋をしてしまい、その役目が辛くなってきてしまった。耐えられないと思ったある日、小姓を辞めさせてほしいと魔王様に言うけれど……?<魔王×小姓の悪魔>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる