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五章
第62話 現れる味方
しおりを挟む「セシリア様。お客様です」
ミカが知らせにきた。その横で、リカがお茶の準備をしている。
「…皇妃殿下かしら?」
「いえ、そうではなく…」
私たちは応接室に向かった。
「こんにちは。お久しぶりです、レイラ様」
私のかつての教え子であり、かつ子爵令嬢の彼女はどこか余裕のない笑みで挨拶を返した。
「セシリア様。急に申し訳ありませんが…ご協力のお願いをしに参りました」
皇妃殿下についてです…とレイラが言った途端、私は咄嗟に彼女の口を押さえた。
「奥へ行きましょう」
奥…というのは、私の部屋の隠し部屋のことで、ミカとリカ、アレクシス様以外は知らない。そしてレイラもそれを知る一人になった。
「ここの存在は、誰にも言ってはいけませんわ」
こくんと彼女は頷く。
彼女はもしかしたらーーミランダの手下かもしれない。けれど、私は彼女を信じたい。ーーだって、私は知っているもの。
彼女が、実は正直者で、すごく頑張れる人なんだってことを。
「…皇妃殿下が、アレクシス殿下とセシリア様の御命を狙っていることはご存じでしょうか」
「ええ、薄々は気づいていたわ」
「…ですが、皇妃殿下は、実はそうではないようなのです。いえ、そうなのですが…命を奪う前に、評判を貶めていくおつもりだそうで」
「…!」
「特に、アレクシス殿下を」
信じられなかった。
殺すだけでは、だめなの?そんなにも、憎まれるようなことを、アレクシス様はしたのだろうか。…いいえ、実際はしたのかもしれない…。
だけど。
私は信じているし、それに、大好きなあの人を傷つけるようなことがあれば、私は許さない。
と、ここでふと気づく。
なぜ、レイラはーー一介の子爵令嬢である彼女が、わざわざ皇妃のことを話に来たのだろうか、と。
そして、それは…。
「…レイラ様。もしかしてあなたは、皇妃の動きを把握して…?」
「はい」
…そういうことか。
皇妃は、おそらく私を調べあげ、私と近かった一人のレイラを上手く丸め込んだ。けれど、その彼女は裏切ってまで私に伝えに来てくれたーー。
なんて、勇気のある行動なのだろう。
国外追放の件があってもまだまだこの城を牛耳っている皇妃に背くなど、王侯貴族にとってはそうそう簡単にできることではない。
「…ありがとう」
ありがとう。
そう言った時の彼女は嬉しそうに微笑んで、だけど私をしっかりと捉えていた。
レイラは、私の味方についたのだと、そう彼女のまっすぐな瞳が物語っている。
「…良ければ、続きを聞かせて?」
「もちろんです!」
彼女は、これからの皇妃の計画を全て話してくれた。
彼女の瞳はどこまでも、真剣で美しかった。
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