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三章

第35話 再び動き出した渦

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◇◇◇
「妊娠していらっしゃいます」

そう言われたあの時。
勝った、と思った。これで生まれたのが男児なら、なおさらよし。

アスレリカの法律では、男しか皇帝になれない。だけど、女が生まれたら、法律を変えればいいだけ。
「伝統だ」と大臣たちは言っているけど、たかが貴族、皇族にかないっこない。
そう、私は「皇妃」なのよーー。

フェイマス皇帝は、エレナを愛していた。
それが許せなかった。だって、愛しすぎるあまり、「皇后」を授けたんだもの。だから、私は「皇后」にはなれない。一人の皇帝に正式な皇后は一人、私は「皇妃」まで。でも、そんなの、覆してやるわーー。

妊娠4ヶ月。

セシリアとアレクシスを潰し、自分の子を皇帝にする。
完璧な計画だ。

◇◇◇
「再び渦が動き出したそうです!」

だけど、進路は変わった。
皇都に向かってきたーー。

それからは、前よりも速いスピードで、動いている。
すぐに民を避難させ、兵を動員しようという案がでた。だけど、そんな暇はなかったーー。

「あれは…瘴気か……?」

瘴気。
本来、アスレリカにはないはずだ。だけど、それを吸い込んでいるということはーー。

「人工的にできたもの…」

アレクシス様も頷く。

アスレリカは古代より魔術に関する全てのことを禁止した。それらは全て禁忌の「冷魔の森」に閉じ込められ、何千年と封をされてきた。
だけど、あの渦は冷魔の森を通過した。そして壊したことでマナや瘴気が溢れ出し、瘴気を吸い込みあの渦はどんどん大きくなっていく。

瘴気はマナが流れている者しか見えない。

だけど、アレクシス様も私も、はたまた他の人も、皆みえている…。

つまり、ーー。

「アレクシス様。こんな時ですが、皇立の図書館へ行きましょう。危険で貴重な史料として保管されているものを見れば、何か打ち勝つ方法がわかるかもしれません!」

あとは頼みますと大臣たちに言い残し、私たちは急いで図書館へ向かった。

◇◇◇
「レイラ。危ないわ、室内にいなさいね」
「わかっています、お母様…」

パーティーで皇太子殿下の婚約者となったのは、セシリア先生だった。
そして、その正体は、コーネリアの公爵令嬢だった。

きっと今頃自分が引っ張っていこうと頑張っているに違いない。

セシリア様には多大な恩がある。
それは母も父も同じで、私たちはセシリア様を助けたい。

「お母様。このエヴリア子爵家ができることを思いつきました」
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