異世界兵士は大剣振るいて戦場を駆ける

代永 並木

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 防具屋を出ると周りに人が集まってザワザワしている
 恐らく中の声が聞こえていたのだろう

「凄い怒鳴り声聞こえたけどなんだ?」
「あれって勇者様?」
「中で何があったんだ?」
「防具の件で食い違いがあったのかな?」
「さっきすげぇ音したしな」
「何の音だったんだ?」
「勇者様が癇癪でも起こしたか?」

 ……これは面倒になりそう

 面倒事になる前に早足で人混みを抜ける

「馬車……ええっとあれは馬車でいいんだっけ?」
「はい、馬車です」
「あれは何処に?」
「城門近くで待機させています」
「城門かならさっさと行こう」
「分かりました」

 走ると通行人にぶつかるかもしれないので気を付けながら早足で城門へ向かう
 他の防具屋の事は知らないが同じような事をしていたら店を壊しそうなので寄らない
 暫く歩いて馬車のある場所に着く

「相変わらず凄い見た目」

 見るのは2度目だが知っている馬車とは見た目が違い過ぎて違和感を物凄く感じる

 目の前にある馬車は木製の馬車では無い
 だから馬車と呼ぶのに若干違和感があった
 魔力鋼鉄と呼ばれる素材で作られた荷台、頭上や壁、車輪まで魔力鋼鉄製で身を守れるようになっている
 馬車ではある為、馬が引いている
 ただその馬も普通の馬では無い
 対魔物用魔力鋼鉄騎獣、馬のように動いているが生きた馬ではなく馬のように動く兵器

「そういえばこのなんちゃら鋼鉄?」
「魔力鋼鉄ですね」
「鎧には転用できないの?」

 人工的に生み出された鋼鉄、この鋼鉄を使う事で従来の馬車の数倍の耐久性能を手に入れていて商人の被害が激減している
 鎧に使えば強化に繋がるのは容易に考えられる

「無理ですね。これ重いので、下手に鎧に使うと動けなくなると思います」
「そんな重いのか……」

 ……重いから無理か。確かに更に重くなるのはキツイな

 重くなれば軽装の場合、折角の機動力を失い重装備の場合更に動きが遅くなる

「鎧には無理ですが馬車以外にも城壁や防衛兵器、家の一部などに使われています」
「家にも使ってるんだ」
「はい、城下町での戦闘も想定しているので」
「これ硬いけど壊してくる奴いるの?」
「居ますよ。魔王軍幹部クラスの攻撃なら防げる想定ですがドラゴン種とか魔王辺りは多分」
「ドラゴン種?」
「はい、ドラゴン種は強大な力と魔法を行使するしんじゅう種の一種です」

 ……神獣……なんか強そう

 神獣という言葉の響きに強さを感じる
 どんな物か想像がつかないが巨大な生物なのだと何となく思う

「ほへぇ、強そう」
「その強さは魔王と同等ともそれより強いとも言われています」
「ドラゴンに任せれば良くない?」
「神獣種は自分の住処からほぼ出てきませんし魔王に興味が無いのだと思います」
「なるほどねぇ」

 馬車に乗り席に座る
 そしてクレマが騎獣を操る
 普通の馬車と同じで操作出来る人が居ないとならない
 本来なら御者を雇わないと行けないがクレマが操作可能の為、雇う必要が無い
 馬車がゆっくりと動き出し城門から外に出る

「そう言えば目的地は?」

 この辺の地図を知らない私は行く先もクレマに全任せている
 そのため何処に行くか知らない

「この先にある森を超えた先にある山に向かいます」
「山……ほほう」

 外を見る、確かに遠くに山がうっすら見える

「前線側ではありませんが瘴気が多く強い魔物が出てきます」

 前線、現在魔王軍の進行を食い止めている最前線は東側にある2国が担当している
 私が召喚された国はその前線で魔王軍との戦闘を繰り広げている国

「強い魔物?」
「最低でもロアベアクラスの魔物が闊歩しています」

 ……それは楽しみ、にしてもかなり厄介な山っぽいなぁ

 私個人としては強い魔物と戦えるのは有難いが他の人からすると迷惑な話だろう
 山の先にも国がある、山を通れないと考えれば遠回りをしなければならない

「へぇ」
「本来は立ち入り禁止ですが今回は調査と言う名目で向かいます」
「調査?」
「山の瘴気の原因の調査です」
「原因があるんだ」

 ……瘴気が魔物の元だからその瘴気が消えれば魔物は消える。でその瘴気にも元があるのか

「はい、あの山にはかつての魔王軍幹部の1人が封印されています」
「封印……ふむふむ? その魔王軍幹部封印されてるんだよね?」

 魔王軍幹部、魔王軍の中でもトップクラスに強い実力者達
 かつての魔王軍幹部の1人は討伐では無く封印されている

「はい」
「封印で瘴気ってのは防げないの?」
「いえ、瘴気も抑えていました。しかし、10年ほど前から山の瘴気が増えているのを確認し調査した結果封印に亀裂が入っていたそうです」

 ……成程、亀裂から瘴気が溢れたのか

 瘴気は魔物の元、濃くなればその分魔物の数が増えて強い魔物も生まれる

「ふむふむ」
「勿論、亀裂の修復を考えましたが日々瘴気が濃くなっていき修復のメンバーが揃った時には既に現在と同じ程となり山の中に厄介な魔物が生まれた事で山を放棄して放置する事になりました」
「厄介な魔物?」
「今回戦う気はありませんがドラゴンゾンビと呼ばれる魔物です」
「ドラゴンってさっき言ってた神獣種の一種? でそのゾンビってのは?」
「ドラゴンゾンビはドラゴンの死体が瘴気によって変貌した存在です」
「わぁお、それやばくない?」

 さっきクレマの口からドラゴンは強いと言われていた
 そのドラゴンがベースとなった魔物となるとその強さはかなりの物だと予想が出来る

「本来のドラゴンよりは弱くなっている筈ですがそれでもかなりの強さを持つ危険な存在です」
「そりゃ放置するよね」

 ……一度どんな魔物か見てはみたいな

 ドラゴンを見た事がない私は姿だけでも見たいと思う
 神獣と言うのだから凄い見た目をしているかもしれない

 ……人型? 獣型? どんな姿なんだろ

「まぁ山の頂上に居ますから近寄りさえしなければ襲ってきません」
「単独で勝てる相手?」
「ドラゴンゾンビの討伐は世界でも最高位の実力者が十数人で挑んで数人の犠牲を出し勝利したという話がある位の魔物です。単独は厳しいかと」
「……それは無理だなぁ」

 ……近寄らないのが吉、放置安定

 話を聞いて見に行くのを諦める
 強い相手は気になるが勝てない戦いをする趣味は無い
 馬車は山へ真っ直ぐ進んでいく
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