483 / 566
Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)
カガチ⑥ ヌ様起動! Ⅰ
しおりを挟むほわんほわんほわんほわんほわわわわわ~~ん。
今、回想中の回想、つまり貴城乃シューネと夜叛モズの会話中のモズの回想が終わった。そしてここからは、シューネ&猫弐矢コンビと雪乃フルエレ女王の会話中のシューネの回想に戻っている。ややこし過ぎて申し訳無く思っている……
「うわあああああ!? 加耶ちゃん? 一体それで加耶くんはどうなったんだ?? モズ殿、一体どうなったのですか??」
話を聞き終わって、猫弐矢はうっすらと涙を浮かべながらモズに迫った。
「話を聞いておらなんだのですか? 我々は謎の多首巨大生物への対応で手一杯だったのですよ? 加耶殿は行方不明という事で捜索は中断しました」
「自分が無実だと証明された途端に放棄かっ!? 無責任だぞっ!」
遂に普段穏健な猫弐矢はモズの胸倉を掴んだ。
「それはこっちの台詞だっ! 一体貴方達は今まで何をしていたんですか!? こっちが労をねぎらって欲しい物ですが!?」
モズは胸倉を掴まれながらも全く動じる事無く反論した。
「二人とも止めないか……」
二人を止めるシューネの声に勢いが無い。彼は今まで七華にちょっかいを出し、妖しい仮面を付けて女の子の服を破り、わざわざセブンリーフの北部中部新同盟の女王式典会場に乱入して返り討ちに遭い、大切な四旗機の金輪を破壊され、さらに神聖連邦帝国の聖都で足止めを食い掛けてようやく戻って来てのこの状況であった。しかしその時後ろに控えていたフゥーが猫弐矢の腕を強く掴んだ。
「猫弐矢さまお止め下さい!! お話を良く聞いておられましたか? 加耶様はお二人が出発された次の日にはもう行方不明になられていました。つまりお二人の帰還の時期と加耶さまの行方不明に直接的因果関係はありません。だから自己嫌悪なさらないで下さい! それに御一人で警護も付けず出られた以上、モズ様の責任でもありません……」
猫弐矢はゆっくりとフゥーを見て腕を離した。
「フゥーくん……」
明らかに一人で出かけた加耶クリソベリルの自己責任ではあったが、猫弐矢は気持ちの整理が付かなかった。その様子を見て、フゥーは会えずじまいの加耶とはどの様な娘だろうと気になった。
「それに、お話の謎の巨大生物の行動パターンと、加耶様の靴と衣服が残っていたという痕跡とは明らかに違いが見られます。もしかして、その……えっと、加耶さまは本当にエロ竜のマタマタの被害に遭われて、ショックで何処かに隠れておられるだけかも……」
フゥーの最後の言葉を聞いて、猫弐矢はハッとした。
「確かにフゥーくんの言う通りだ。家ごと住民が食べられた多首生物と、靴と衣服が残された加耶くんでは何か違う気が……僕が無事を信じずにどうするんだっ! モズ殿、先程は取り乱して申し訳無い。それに住民を避難させてくれて有難う、お礼を言います」
猫弐矢は素直にネコミミ付きの頭を下げた。
「ほっほっほ、分かって貰えれば良いのですよ、ほほほ」
(やるじゃな~~い? このメイドさんは何者?)
モズは猫弐矢の誠意よりも、突然神聖連邦重臣のシューネとクラウディア国主猫弐矢に対等に話をする、少し浅黒いこの謎のメイド美少女が気になった。
ちなみに雪乃フルエレ女王が最初に夢で見たイチフカヤとその妹イチカヤ、荒涼回廊から砂緒に連れられ海を渡ってやって来てクラウディアで行方不明になった娘加耶クリソベリルと、さらにまおう軍の地で三魔将サッワが出会った謎のクマミミ美少女カヤとは、偶然全て同じカヤという名前であるが特に関連性は無い他人である。
「うむ、では一番重要な話に戻ろう、今その謎の多首巨大生物……いやその生物の首は蛇の様な感じなのだな?」
皆が落ちついた所でシューネが本題に戻した。
「ええ、両目が真っ赤に光り輝く蛇の様な頭がうにゃうにゃと無数に生えています。全体のシルエットは緑色のエノキ茸を巨大化した様な……」
「そうか、それでは先程のフゥーの話を基にエロ竜のマタマタとは完全に区別して、現時点よりその巨大生物を千岐大蛇と呼称する」
「チマタノ……」
「カガチ……」
思わず猫弐矢とモズが復唱した。
(ホッよかった、エロ竜は嫌……)
フゥーは心の中で安心した。
「で、チマタノカガチの現在の状況は?」
「ええ先程お話しましたが、あれ以降シューネ様がご帰還されるまでの間ずっと無人の里や森を荒らし続け田畑を食べ家を食べ木々を食べ、最後に観測した時点で全高三百Nメートル程の巨大さになっております」
一瞬皆言葉に詰まった。
「何っ!? 三百Nメートルだと??」
シューネは両目を見開いて真剣に驚いた。しかしそれはもはや誰の責任でも無い災害になっていた。
「はい、もはや山が動いている状態にてよく桃伝説の絶対服従が掛かるなと……もうこれが掛からねばお手上げですよ。して金輪は?」
「しつこい! 先程も言ったわっ金輪は壊れたと言っただろう」
「ほほほ、あら逆切れですかな?」
「何にい?」
かろうじてシューネの数少ない友人の一人であるモズとも険悪な雰囲気になりかけて、慌てて猫弐矢とフゥーが割って入った。しかし実際金輪が壊れたのは全面的に悪乗りしたシューネの責任であった。
「手詰まりか……このままずっとその魔ローダースキルで押し返すだけなんて続けられないよ」
猫弐矢はテーブルに両手をついてうな垂れた。
「あの、私に私に考えがありますっ! 伝説の超超巨大魔ローダーヌ様を呼び起こして起動させるんです!!」
突然強く言い出したフゥーに一同一瞬ポカーンとなって黙った。
※クラウディアにある内海湖と、東の地の西側中心を貫く巨大な内海とは名称が似てますが別の物です。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる