魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記(工事中2)

佐藤うわ。

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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

カガチ⑦ ヌ様起動! Ⅱ 嘘

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「……そのヌ様とは何ですかな?」

 取り敢えず夜叛やはんモズが聞いた。

「僕から言おう、ヌ様とは全高十Nキロメートルの超超大型魔ローダーであり、かつて此処クラウディアに荒涼回廊やジ・フブキ等から余った土地を引っ張って来たという伝説を持つ神の機体なんだ」

 フゥーに代わり猫弐矢ねこにゃは熱っぽく語った。

「ほほほほほ、全高10Nキロですと?? そんな天を衝く様な巨大な魔ローダーが”本当に”あれば、三百Nメートルの”ちっぽけ”な千岐大蛇チマタノカガチなど指でプチッと出来ますな」

 夜叛モズは嫌味っぽく指を立ててエアクォーツしつつ言った。
 ポカッ
思わず猫弐矢はモズを殴った。

「うるさいわっ! ヌ様は本当に実在するんだいっ!!」
「いたっ何するですか?」

 ヌの事になると正気を失う猫弐矢もハッとしてすぐに謝罪した。

「申し訳ない、貴方が余りにも嫌味ぽかった物で」
「それは謝っている内に入りませんぞ……」
「茶番は良い、フゥーよ本当にヌ様を呼び覚ます事が出来るのかね?」

 それまで黙っていた彼女に貴城乃たかぎのシューネは当然の疑問を投げかけた。フゥーは遠い御先祖がクラウディア人でヌ様を起動出来る巫女の一族だというのは、実はあくまで母親の自称でありフゥー自身には何の記憶も手掛かりも託されたアイテムも無かった。彼女は思わず発してしまった言葉に少し後悔していた。

「は、はい……出来ます!!」

 しかし彼女は再び堂々と嘘を付いてしまった。モズにバカにされる猫弐矢と、事態に困り果てるシューネを助けたかったからだ。

「よし、ではフゥーくん今からヌ様が眠るという北の山に向かおう。夜になりカガチが活動を開始するまでにヌ様を起動させるんだっ!」

 もはや彼女の嘘を本気にした猫弐矢は瞳に輝きを取り戻してぐっと拳を握りながら言った。

「え? あ、は、はい……分かりました」

 フゥーは取り敢えず生返事したが、その瞳は泳いでいた。シューネはそんな様子をしっかり見ていたが、もはや藁にもすがる思いで彼女に全てを託したのだった。

「じゃ、シューネとモズ殿、もしカガチが活動を再開したら仮宮殿に避難した人々を頼む! よし行こうフゥーくん!」
「はい」

 気持ち小さめの声でフゥーは返事すると、仮宮殿の北の小さな山々に向かって行った。

「では我々はヤツが動き出すまで、七並べでもします?」

 モズはトランプを突き出した。

「本気か貴様? よしでは魔戦車を一両分解して魔法通信機を移譲させ司令部施設を強化する! 残った魔戦車と魔ローダー部隊で防衛線の構築だっ! 急げ」
「はい」
「ハハッ」

 シューネは走って行ったフゥーと猫弐矢を眺めながら矢継ぎ早に指令を発した。


 ―クラウディア西の浜の北にある小山地帯……

「さぁ、フゥーくんここだよ。僕がいろいろ伝承を調べた範囲では、この山のふもとにヌ様は眠ると考えているんだっ! フゥーのお母さまから聞いた伝承でもそうなんだろう?」

 ヌ様の事となると目の色を変える猫弐矢がフゥーにかぶりつく勢いで聞いた。

「え、ええ、そうですね、母親から聞いた御伽話と全く同じです!」

 また嘘をついた。

「そうだろう!! 絶対そう思っていたんだっ。さあフゥーくん、早速ヌ様を呼び起こしてくれっ!」

 猫弐矢は両手を拳にし瞳の中に星を輝かせてフゥーに迫った。

「は、はい……」
(どうしよう、どうしよう……ヌ様なんてどうしたら呼び起こせるの?? 皆私に凄い期待してるのに、もう嘘なんて言えない。お母さんどうしよう、どうしたらヌ様を呼び起こせるの!?)

 フゥーはしばし茫然と立ち尽くした。

「……フゥーくん、どうしたんだい? 遠慮せずにヌ様を呼び起こしてくれ。何か要る物があれば言ってくれていいよ。それとも秘伝の家宝か何かがあるのかい??」

 せかす猫弐矢が怖かった。

「は、はい……今集中しています」
「おお、済まないね。じっと見守る事にするよ」

 それから優しい猫弐矢は一時間程本当に粘り強く待った。その間フゥーは心の底からヌ様とやらに祈り続けたが、一向に山は動かない……

「フゥーくん? もうそろそろ夕方に差し掛かるよ。夜になればカガチが動き出すから……急いで」

 優しい猫弐矢もしびれを切らし掛けて来たのを、フゥーは強く感じていた。

「ごめ……ん、なさい……」
「え?」

 突然フゥーが死んだ様に首をうな垂れて振り返って謝った。

「ど、どうしたんだい? 何を謝ってるんだ??」
「ごめんなさい、分かりません」
「何が??」

 猫弐矢はうっすらと事態を悟って顔面蒼白になった。

「本当は本当は私、ヌ様の起動方法なんて知りません!!」

 フゥーはいつしか涙を流しながら叫んだ。しばらく続く沈黙。

「嘘だよね? 本当は家に伝わるアイテムや秘伝があるんだよね??」

 しかし猫弐矢は最後まで疑わなかった。

「……私達の一族はずっとセブンリーフでみじめな生活をして来たから、本当はクラウディアの有名な巫女の一族なんだって……ヌ様を動かす事が出来るんだって……」

 フゥーは嗚咽して号泣していた。

「そんな」
「そんな大きな話を言い伝える事で、生きる糧にして来ただけなんです、きっと。多分、本当にクラウディア人の子孫かどうかも……こんな時に嘘をついてごめんなさい!! シューネさまと猫弐矢さまに喜ばれたかった」

 猫弐矢は幼い頃から憧れていた超超巨大魔ローダー・ヌが見れると武者震いしていたが、今は本当に失望で震えていた。フゥーも敏感にその様子を察知して体を震わせて泣いた。

「はは、キミは悪く無いよ。僕も似た様な物さ」

 怒り出すかと思いきや、どこまでも優しい猫弐矢の自嘲的な笑いがこたえた。

「わーーーーーーーっ」

 遂にフゥーは両手で顔を覆って座り込んで泣き出した。大粒の涙が砂浜の細かい砂の間に吸い込まれていく。
 がががががががが。
その直後、砂緒とセレネが此処に遊びに来た時と同じ様な微妙な振動が始まった。
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